世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)モンゴル日本人材開発センター日本語課・「日本語」と「日本文化」を体験する場として広がる

モンゴル日本人材開発センター
齊藤智子

モンゴル日本人材開発センター(以下、センター)の日本語課では、春期と秋期に総合コース『まるごと』JF講座を6コース開講している。総合1コース(『まるごと 入門』20回のコース)の40時間しか学習していないクラスの受講生が、テキストで学んだことを中心に自分で言えること、表現できることを模造紙にまとめるグループ活動をした。この日のグループ活動のテーマは、『まるごと』の中で取り扱われている「わたしのかぞく」。1グループ5,6人で構成され、発表では各グループのメンバーがそれぞれが家族の一員の役割を演じた。「楽しかった」、「大変だったけれど、おもしろかった」という意見が多く、満足した笑顔だった。受講生は10代から40代と年齢もばらばらだが、学生と社会人が一緒に活動し学びあう楽しい雰囲気がセンターの講座の特徴ともいえる。

ポスター作製をしている写真
ポスター作製のグループ活動の様子

作製した「わたしのかぞく」ポスターの写真
ポスター作製「わたしのかぞく」

また、従来、漢字学習のオリエンテーションは各クラスで行っていたが、昨年から始業時間の30分前にロビーに集まり、一斉に行うことにした。漢字の成り立ちから、部首に至るまで、漢字について知っておいてほしい知識をわかりやすく紹介している。これにより、コースの垣根を越えて一体感が生まれるという効果もある。

センターロビーに集まった写真
漢字オリエンテーション―センターロビーにて

漢字オリエンテーションのスライドの画像
漢字オリエンテーションのスライド

星の漢字の成り立ちスライドの画像
漢字オリエンテーションのスライド

新聞ウグローニ紙に紹介される記事の写真
新聞ウグローニ紙に紹介される

4月4日、「若者の夢の懸け橋」というタイトルで、ウグローニ新聞(ウグローニはモンゴル語で“朝の”という意味)に記事が載った。写真は文化体験授業の一コマである。浴衣を着て盆踊りを踊るのは大好評である。女子は帯を結んでもらい「見返り美人」スタイルで写真を撮りあっている。下の写真は日本料理体験で「鍋料理」に挑戦しているところである。ウランバートル市で広く読まれている新聞に載り、学習者は、ますます日本語学習への意欲が高まったようである。

次は、4月12日中央県ゾーンモド市フムーン総合学校への巡回指導の際の写真である。日本語に興味のある生徒に国際交流基金のWEBを使った学習について説明した。「エリンと挑戦」、「e-みなと」を自律学習に役立ててもらい、日本語学習を楽しんでもらうことがねらいである。生徒たちはほとんどがスマートフォンを持っているので、アプリを活用できる環境にある。これからも、モンゴルの中心ウランバートルだけでなく、地方の学習者がWEB、アプリで日本語学習ができることを広めていきたい。

巡回指導の写真
巡回指導 JFのWEB紹介 アプリをダウンロード!!

以上紹介したこと以外にも、センター図書情報交流課主催の文化イベントには四季折々の行事体験ができるものや日本映画上映、「日本語クラブ」がある。日本語課だけでなく、センター全体が日本文化を発信し、モンゴルとの交流を深めようという意欲が高い。今年2018年はモンゴル日本語教師会設立20周年ということもあり、今後さらに日本が身近になるようなイベントが数多く催される予定である。

日本語の授業に関しては、次のような感想が5月に発行されたセンターの年報に載った。「アニメを見るのが好きな学生は少なくないと思います。私もその一人です。日本の礼儀、文化がすきです。だから日本語を勉強し始めました。初めて日本語を勉強しようと思い立った時に、モンゴル日本センターの日本語コースについて知れたのはとても幸運でした。受講を始めてから、授業のテーマ、内容などすべてがきちんと計画通りに行われていると感じ、日本語の基礎知識をかなり効果的に学習することができたと思っています。」総合5コース受講生の作文の一部である。教師は受講生のこのような声に励まされ、がんばれるのだと思う。コースを計画通りに運営するために、コースごとに「教案検討会」を開き、情報共有し、クラスの問題点について話し合ったり、日誌に問題点を記し引継ぎを丁寧に行ったりするなど、日々の努力がなされている。その努力が受講生に通じたのだと考える。

筆者がモンゴルに赴任してから、受講生の次のコースへの継続率を上げるというのが課題の一つであった。脱落者を減らし、クラスの一体感を作るにはどうすればいいかをスタッフと共に考え、実践してきた。欠席者への電話連絡、クラス・コースのfacebookグループページを通しての交流、クラスの受講生の中から配布物係、宿題を集める係を作り、受講生同士の触れ合いの機会を増やす。受講生の顔写真付きの名簿を作り、ティームティーチングをする教師間で受講生の情報を共有しやすくするなど様々な取り組みを通し、徐々に継続率が上がってきている。教師にとってもこの課題を意識することは、クラス運営について考えるよいきっかけになったと思う。

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