世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 国際言語としての日本語

アルバータ州学習省
矢沢理子

 英仏両公用語制、多文化主義政策のカナダの公教育では、言語は公用語、先住民の言語、国際言語の三つに区分されます。日本語は国際言語の一つになりますが、その教育事情は州によってさまざまです。今回は、地方 (アルバータ州)と全国の日本語教育関連の行事例と、専門家の業務の現状についてご紹介します。

日本語関連行事

パワーポイントを使った発表の一こまの写真
プロジェクトワーク:
パワーポイントを使った発表の一こま

1)アルバータ州の高校日本語祭
 エドモントンでは毎年高校生の日本語祭が開かれます。市内、近郊、近隣からの参加者で500名ほどの規模になります。写真は今年二月に開かれた第9回日本語祭の様子です。

2)全カナダ日本語弁論大会
 カナダでは各地方大会を勝ち抜いた州ごとの代表者を迎えて、全国レベルの日本語弁論大会が開かれており、今年で14回を数えました。地方予選でも50名を越える州がいくつかありますから、参加規模の大きな大会です。他の言語にはこうした全国レベルの弁論大会の例はなく、日本語教育のプレゼンスとその成果を全国的に示すいい機会になっています。

専門家としての業務

 

私の派遣先はアルバータ州学習省ですが、国際交流基金からカナダへの日本語教育専門家の長期派遣は初めてなので、現在は1)アルバータ州学習省所属の日本語コンサルタントと、2)カナダ地域アドヴァイザーを兼任する形になっています。そのため業務も州内と州外の二つに分けられます。

1)アルバータ州内の業務と今後の課題
 情報収集と提供、対教師サービスなどさまざまありますが、主たる業務はカリキュラム開発です。2002年秋に組織されたカリキュラム開発委員会の一員として、高校3年間用と中高6年間用のカリキュラム開発に関わってきました。この3月に提出されたドラフトが州のカリキュラムとして正式認可されるまではあと1-2年かかる見込みです。その間、パイロットスタディ、リソースリストの執筆、指導要領の執筆が、順次あるいは並行して進められる予定です。
 2000年に学習省のイニシアティヴで始まった第二言語学習強化プロジェクトは現在、2006/07年度からの4年生-12年生対象の第二言語必修化政策として結実し、新局面を迎えています。国際語教育に対する公的支援に後退傾向が見られる現在のカナダでは例外的な積極姿勢と言えますが、日本語教育にとってもこれが追い風となるよう、省内で、あるいは省のコンサルタントとして外部に働きかけることも、重要な任務の一つです。

代表チームの得点に沸きたつ応援席の写真
ジャパンカップ:
代表チームの得点に沸きたつ応援席

2)州外の業務と今後の課題
 これまで訪問した先は、東はモントリオールから西はヴィクトリアまで、5州6都市になります。教育関係者からの取材を通じて知り得た州ごとの事情の違いと共通する問題の双方が、州内の業務にも役立っています。
 ここでは共通する問題から二点だけ、ご紹介するにとどめたいと思います。
公教育外の、継承語としての日本語教育は転換期を迎えています。国際結婚家庭の児童が増え、家庭内での日本語の優位性が期待できなくなっているため、第二言語教育の手法を取り入れた新たな方法論の模索が迫られています。  一方で公教育内の国際言語としての日本語教育に対する支援には翳りが見られます。学習は日本の文化、特にポップカルチャーに対する関心に強く支えられていますが、受け皿となるクラス提供の予算が得られないためコース縮小に追い込まれるケースも多いのです。日本経済の沈滞が管理側のコース提供の意思決定にマイナスに作用していることも否定できません。

 日本語プロモーションの仕事もまた、専門家の業務として今後ますます重要性を増していくと思われます。先にご紹介した日本語関連行事も、プロモーションの一環として、つまり、関係者の内輪のお祭としてではなく、「日本語」に対する社会の関心と理解を深めていくためのきっかけとして意識されるようになってきています。多文化社会カナダにおける日本語教育の意義を保証するために周囲を巻き込んでいく工夫が一層求められるようになるでしょう。


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
連邦レベルでの教育省が存在しないカナダにおいては、各州の教育担当省が州内の教育内容と水準の管理に責任を持つ。アルバータ州学習省は就学前から成人教育に至るまで、生涯教育の充実を旨に州民の学習を支援する政府機関である。専門家の所属する国際言語科では、公用語(英・仏)とアボリジナル語を除く言語コース科目(基礎教育レベル)の教育事情調査、カリキュラム開発、教員研修機会の提供、教員ネットワーク作りのサポート等を行っている。尚、アルバータ州の中等教育レベル日本語学習者人口はブリティッシュ・コロンビア州についで国内第二位である。
ロ.派遣先機関名称 アルバータ州学習省
Alberta Learning (Provincial Ministry of Learning)
ハ.所在地 8th Floor, 44 Capital Boulevard, 10044 108St. N.W.
Edmonton, Alberta, CANADA T5J 5E6
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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