世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アルバータ州の言語教育とその政策

アルバータ州学習省
宇田川洋子

 アルバータ州政府は、各国が派遣する言語の専門家を受け入れています。ドイツ語は20年近い歴史があり、日本語アドバイザーは4年目、中国語は2004年2月から、スペインからも9月に加わる予定です。カナダの他州では見られないことです。
これは、アルバータ州の積極的な言語教育政策を反映しており、2006年から導入される第二言語の必修化に向けて、アドバイザーに期待される役割も多いからです。

 第二言語とは、学校教育を行う基本言語に次ぐ言語という意味です。多民族国家カナダですから、生徒にとっては三つあるいは四つ目の言語である可能性もあります。
 今回、第二言語が必修になるのは小学校4年から中学3年までで、週150分、年95時間の授業が義務付けられます。言語は、各学区の教育委員会がその地域の事情に応じて選びます。

カリキュラムの写真
カリキュラム

 第二言語の必修は、カナダで特に新しいわけではありません。東部のオンタリオ州などでは、英語系の学校ではフランス語が、フランス語系の学校では英語が、初等教育段階から必修となっています。一方、西のブリティッシュコロンビア州では、5年生から8年生まで、International Language(国際語)を一つ選んで勉強することになっています。
 アルバータ州でも、以前から第二言語教育は行われていました。中学や高校では選択科目として、日本語を含めいろいろな言語が教えられています。また、フレンチイマージョン校や、ドイツ語や中国語のバイリンガル校などもあります。日本語学校での継承言語としての教育の歴史もあります。
 しかし小学校からの必修となると、新たな準備が必要になります。2003年度から、州政府では、小学校4年から高校3年までのカリキュラム作成などの各種プロジェクトが編成されました。
 そこで、まず、6言語についてプロジェクトが始まりました。先住民族のクリー語、ドイツ、スペイン、ウクライナ、中国語と日本語です。先の5つはアルバータ州の民族的背景とその人口的割合を反映しています。日本の場合は、アメリカに次ぐ貿易のパートナーという理由が考慮されたのかもしれません。
 こうして、2004年3月に6言語のカリキュラムのドラフトができ、指導要綱作成もかなり進んでいます。また、教材や資料を世界中から集め、カリキュラムや学校教育政策に適しているかどうかを認定する作業も進められています。
 しかし、一部の教育関係者には「ほんとうに第二言語教育が必要なのか」「教員や教材はどうするのか」という戸惑いもあります。そこで州政府は、第二言語教育推進活動を各地で展開しています。
 また、教員数も生徒数も小さな地方の小学校で、どのように第二言語教育を行うかも課題です。幸い、カナダは、広大な土地に点在する人のための、ITを活用した教育システムが発達しています。さらに、コンピュータ相互コミュニケーションやビデオコンフェレンスを利用した授業なども検討されています。
 教員養成や研修も重要です。この面では大学との連携が進み、従来の言語教師養成コースに加え、現役教師あるいは日本語教師対象のワークショップなども各地で開かれ始めています。

ワークショップの写真
ワークショップ

 これらのプロジェクト全部に、それぞれの言語の専門家として、またその言語の関して本国や世界の最新の情報提供者として、アドバイザーは深く関わっています。また、州内外や世界の日本語関係機関とのネットワーク作りも期待されています。

 でも、アドバイザーの仕事はこれだけではありません。現在最も日本語の生徒数が多いのは高校です。アルバータ州では、高校レベルの新カリキュラムの試験的実施と教師用指導要綱の改訂が9月から予定されています。

 アルバータ州以外でも、日本語教育は発展、活動しています。
 マニトバやサスカチュワン州でも州の高校カリキュラム作成が計画されています。また、日本語教育機関が最も多いブリティッシュコロンビア州を含め、各州で日本語関係のコンフェレンス、セミナーが開催されています。また、弁論大会も毎年、各州予選、全国大会が開かれています。
 日本語のアドバイザーは、カナダのアドバイザーも兼任していますから、これらには、講師あるいは審査員として、時間と予算が許す限り参加しています。

 カナダは広く、各州各地の歴史も個性があります。一口にカナダの日本語教育といっても、課題やニーズは多様です。ただ、その中にも、共有できるものは少なくないかもしれません。個々の需要に柔軟に対応しつつ、全国の事情を理解する日本語アドバイザーとして、「カナダの日本語教育」という大きなネットワークにも貢献できればと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
連邦レベルでの教育省が存在しないカナダにおいては、各州の教育担当省が州内の教育内容と水準の管理に責任を持つ。アルバータ州学習省は就学前から成人教育に至るまで、生涯教育の充実を旨に州民の学習を支援する政府機関である。専門家の所属する国際言語科では、公用語(英・仏)とアボリジナル語を除く言語コース科目(基礎教育レベル)の教育事情調査、カリキュラム開発、教員研修機会の提供、教員ネットワーク作りのサポート等を行っている。尚、アルバータ州の中等教育レベル日本語学習者人口はブリティッシュ・コロンビア州についで国内第二位である。
ロ.派遣先機関名称 アルバータ州学習省
Alberta Learning (Provincial Ministry of Learning)
ハ.所在地 8th Floor, 44 Capital Boulevard, 10044 108St. N.W.
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

ページトップへ戻る