世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) カナダ東西5500km日本語教育事情

アルバータ州学習省
宇田川洋子

弁論大会カナダ決勝の入賞者たちとの写真
弁論大会カナダ決勝の入賞者たちと

 早いもので、着任して2年近くが過ぎようとしています。今回は、私の出張経験などをもとにカナダの日本語教育について東西事情を中心にご紹介したいと思います。
 私の業務は二つあります。アルバータ教育省の日本語アドバイザーとしてカリキュラム作成に関わったり教師研修をしたりすることと、国際交流基金の日本語教育専門家としてカナダの日本語教育機関をサポートすることです。
 広大なカナダですから一年間に行ける数には限りがありますが、できるだけ多くの機関を訪問し、お役に立てればと思っています。初年度は、まず、日本語学習者数の多いバンクーバーやトロントなどの都市、それから外国語教育に関してアルバータ州と協力関係にあるマニトバ、サスカチュワン州などに行き、研修やコンフェレンス、弁論大会などに参加すると同時に、先生方のお話しをうかがいました。2005年には、例えば、ブリティッシュコロンビア州のロッキー沿いの地域や、東部のニューブランズウィック州とノバスコシア州など、前任者も含め日本語のアドバイザーとして始めてお邪魔するというところにも行くことができました。
 さて、こうして、各地の日本語事情を見てきますと、東西だけではなく、いろいろな切り口の比較ができることがわかります。
 まず、違いのほうから気がついたことを挙げてみましょう。
 初等中等教育レベルの第二言語教育政策では、東西の違いがはっきりしています。ケベックを除いて、オンタリオから東の州の英語系の学校では、ある一定の年数、フランス語が必修になります。一方、西のブリティッシュコロンビアでは、第二言語が小学校5年生から必修ですが、フランス語だけでなく、さまざまな言語が教えられています。アルバータ、マニトバ、サスカチュワン各州も、BC州同様マルチリンガル教育を目指しています。
 このことが、日本語教育機関調査の数にも表れています。ブリティッシュコロンビア州やアルバータ州など西部では、初等中等教育段階での日本語学習者数が大きな割合を占めるのに対し、カナダ東部の各州では、大学や継承言語としての日本語学校などの学習者数の割合が大きくなります。
 学生についてみると、大学でも、高校でも、漢字のバックグラウンドがあるアジア系の学生が多数を占めるところと、非漢字系の言語を第一言語とする学生がほとんどというところに大きく分かれるような気がします。前者は、マルチカルチャー度の高い大都市でよく見られる傾向です。
 カナダ全体に見られる共通点もいくつかあります。
 大学でも高校でも、日本語学習の動機を聞いてみると、ほとんどの学生が、日本のアニメかコンピュータゲームの大ファンであることをあげています。教育機関側でも、アニメフェスティバルを開催するなど、この人気を積極的に利用して日本語教育の振興に役立ようという動きもでてきています。
 継承言語教育でも、共通して見られる傾向があります。日本からの移民の歴史が長いカナダは、継承言語としての日本語教育も盛んで、バンクーバーやトロントなど各地に学校があります。最近、このような学校の多くで、家庭で日本語を使わない生徒の急増が見られます。つまり、このような教育機関でも、第二言語としての日本語教育の占める位置が大きくなっているということです。

カナダ日本研究ネットワーク設立準備会儀のメンバーの写真
カナダ日本研究ネットワーク設立準備会儀のメンバー

 もう一つの傾向は、言語教育へのテクノロジー導入度が高まっていることです。カナダは今までにも、世界的に使われている教育ソフトを送り出してきました。WebCTHot Potatoがその例です。これらを活用した日本語プログラムはカナダの各地で定着しつつあります。また、音声や映像を含む教材や試験作成なども進められています。ビデオコンフェレンスを使った授業も増えており、大学だけでなく、例えばアルバータでは、高校の日本語コースを実験的に行っています。
 カナダの国土は世界第二位の約998万平方キロメートル。日本の27倍です。国内で最大8時間の時差があります。例えばエドモントンからトロントに行くのにも飛行機で4時間半かかります。このように広大なカナダの人口は約3,100万人、単純に計算しても人口密度は日本の110分の1です。
 日本語の先生方と直接会って話し合う機会は重要です。とはいえ、この広い国でワークショップやイベントを行おうとすると、場所や回数に限りがありました。しかし、先に述べたようなITの発達が、新たな可能性を広げてくれます。例えば、インターネットとビデオコンフェレンスを使った会議や教材交換を中心とする日本語教育機関ネットワークの設立が、アルバータ大学などを中心に進められています。このようなシステムが確立すれば、太平洋岸から大西洋側まで5500キロの距離を超えて、日本語教育の更なる充実が進められていくでしょう。日本語アドバイザーとしても、積極的に協力していきたいと思います。


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
アルバータ州の小中高校の学校教育政策決定、カリキュラム・教材作成認定、州試験作成実施、各レベル卒業資格授与、教員免許発行、教員養成、国際協力各種プロジェクト、通信教育など。
各言語のアドバイザーは、カリキュラム、教師用ガイド、デジタル教材などの作成プロジェクトや、教材の認定、教員養成および研修などを行う。
日本語アドバイザーは、カナダのアドバイザーも兼任することになっているので、情報収集や提供、州レベルと全国レベルでのネットワーク強化、研修、コンフェレンスへの参加、弁論大会への協力などを通してカナダ全国の日本語教育機関を支援している。
ロ.派遣先機関名称 アルバータ州学習省
Alberta Education (2004年12月からAlberta Learning改め)
ハ.所在地 8th Floor, 44 Capital Boulevard
10044 - 108 Street NW
Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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