世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語のプロモーション

アルバータ州教育省
宇田川洋子

アルバータ州教育省副大臣と外国語アドバイザーたちの写真
アルバータ州教育省副大臣と外国語アドバイザーたち

 2004年にはアルバータ州のカリキュラムや教師用ガイド作成、日本語教員研修などについて紹介しました。昨年は、カナダの日本語教育事情の東西比較とITによるネットワーク形成を取り上げました。今回は、日本語教育のプロモーションについてご紹介したいと思います。

 アルバータ教育省では、第二言語教育のプロモーションのためのプロジェクトをいろいろ行なっています。各地での教育者対象の講演会に加え、教育委員会や学校関係者などへのパンフレットや、新しい先生のための手引きも作成中です。
また、教育省には外国語のアドバイザーが4人いますが、チームとしてプロモーションを企画することもあります。例えば教育副大臣や副大臣補佐を交えた会議、教育省関係者を集めた外国語イベントの企画などです。省内部にも第二言語教育についてあまり関心のない人も多く、特に上層部の理解を得ることはプロジェクトの採用、予算獲得などにも影響があります。また、IT教育部などとの共同プロジェクトも、教材作成という本来の目的に加え、作業を通して日本語や日本文化に関する理解を深めてもらえるいい機会になっていると思います。

 アルバータには言語教育コンソーシアムという活動があります。コンソーシアムは、組合、連合などと訳されています。州にはウクライナ系の人が多く、コミュニティー活動も活発なのですが、彼らが中心になって、8年ほど前に、ウクライナ語教育の活性化と支援を目的としたコンソーシアムを作りました。この会議がウクライナバイリンガル校の設立にもつながったといわれています。合意書を交わし、法律に則った組織ですから、意見や要望は政治的にも反映させることができるのです。その後、スペイン語、中国語のコンソーシアムもでき、ドイツ語も続こうとしています。

 そこで、日本語でもコンソーシアムを作り、日本語教育の支援ネットワークを強化したいと考えました。アルバータの日系人コミュニティーは大きくありません。しかし、日本はアルバータにとって主要な貿易相手国であり、アルバータと北海道の友好関係も活発です。姉妹都市の数もカナダの中で群を抜いています。また、Japan Exchange and Teachingプログラム(以下JETとする)でも、毎年アルバータから40~50人が英語教育のために日本に行っており、同窓会的なJET Alumni Association(以下JETAAとする)という組織もできています。

 そこで、日本語教育関係機関に加え、日本-アルバータビジネス振興会や、アルバータ-日本姉妹都市協会、JETAAなどの機関の協力を求めたところ、多くの賛同が得られました。そして、2005年12月、2006年5月の二回、コンソーシアム設立に向けた準備会議を開くことができ、2006-7年度中には正式なコンソーシアム設立の予定です。

西カナダ日本語教育支援ネットワーク会議のワークショップ風景の写真
西カナダ日本語教育支援ネットワーク会議のワークショップ風景

 一方、全国的な日本語教育プロモーションはさらに難しい課題です。そこで、まず、日本語教育振興の課題と対策について話し合う場を設けたいと考え、アルバータ教育省と相談し、西カナダ日本語教育支援ネットワーク会議を企画しました。開催にはアルバータ大学高円宮日本研究センターと国際交流基金の協力も得ることができました。参加者は、初等中等教育レベルの代表として西カナダ4州の教育省の第二言語教育責任者、高等教育では日本語教育のプログラムが確立している各大学の日本語教育責任者(ビクトリア大学、ブリティッシュ・コロンビア大学、北ブリティッシュ・コロンビア大学、トンプソンリバーズ大学、アルバータ大学、カルガリー大学、レスブリッジ大学、レジャイナ大学)さらに在カルガリー日本総領事館の増子絵美・文化担当副領事、そして国際交流基金トロント日本文化センターの齋木宣隆 ・所長という、日本語教育に関わる主な機関の代表に出席していただくことができました。会議では、それぞれの州の日本語教育事情が紹介され、午後のワークショップでは、課題と対策について話し合いました。同じ州内でも教育省と大学は普段あまり接する機会がないのですが、共同作業でいろいろな発見があったようです。今後もこのネットワークを継続し、ストラテジーやプロジェクトについて話し合っていこうということで意見が一致し、会議を終えました。第二回会議もトンプソンリバーズ大学がホストを検討しており、今後の成果が期待できそうです。

 こうしてみると、ここまでのところ、日本語プロモーションというより、やっとプロモーションのネットワークと体制作りを始めたところという気がします。残念ながらもうすぐ任期は終わりですが、これらのプロジェクトが継続され、カナダの日本語教育がさらに発展していくことを願っています。


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
アルバータ州の小中高校の学校教育政策決定、カリキュラム・教材作成認定、州試験作成実施、各レベル卒業・教育資格授与、教員免許発行、教員養成、国際協力各種プロジェクト、通信教育など。
各言語のアドバイザーは、カリキュラム、教師用ガイド、デジタル教材などの作成プロジェクトや、教材の認定、教員養成および研修などを行う。
日本語アドバイザーは、カナダのアドバイザーも兼任することになっているので、情報収集や提供、州レベルと全国レベルでのネットワーク強化、研修、コンフェレンスへの参加、弁論大会への協力などを通してカナダ全国の日本語教育機関を支援している。
ロ.派遣先機関名称 アルバータ州教育省
Alberta Education
ハ.所在地 8th Floor, 44 Capital Boulevard
10044 - 108 Street NW
Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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