世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) カナダ派遣日本語教育アドバイザーの業務の最新情報

カナダ・アルバータ州教育省
室屋春光

カナダ派遣・日本語アドバイザーの仕事

ナダ・アルバータ州エドモントンのジャスパープレース高校で日本語を教えているエンマ・クロスリー先生の授業風景の写真
カナダ・アルバータ州エドモントンのジャスパープレース高校で日本語を教えているエンマ・クロスリー先生の授業風景

 国際交流基金では2002年からカナダ派遣日本語教育アドバイザーとしてアルバータ州教育省に日本語教育専門家を派遣しています。カナダ派遣日本語教育アドバイザーの仕事は、アルバータ州だけでなくカナダ全体の日本語教育をいろいろな形で支援することで、具体的には、日本語教育の振興、日本語教育に関する情報や教材の提供、各種教材(デジタル教材を含む)の開発協力、学習指導要領や指導の手引きなどのカリキュラム関係文書(参考)の作成協力、教師研修、日本語教師間のネットワーク構築の助成、各種行事の運営協力、など非常に多岐にわたります。これらの業務は、日本語教育への支援という意味ではいずれもとても大切なものなのですが、ここでは現時点で特に重点を置いて進めているプロジェクトをいくつかとりあげ、以下にその内容を紹介していきたいと思います。

参考
アルバータ州の日本語関係カリキュラム文書については、『日本語教育通信』 第57号 「海外日本語教育レポート」所載の「カナダ・アルバータ州の初等・中等教育における日本語教育カリキュラム」を参照してください。
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/tsushin/report/014.html

日本語教育の振興

 カナダの初等中等教育では、言語(lanuages、英語とフランス語以外の言語)は必修科目ではないことや公用語のフランス語がケベック州以外では実質的には第二外国語のように扱われていることもあって、公用語以外の諸言語の教育はそれほど盛んではありません。そんな中でもアルバータ州とブリティッシュコロンビア州は公用語以外の言語教育がわりと盛んですが、それでも例えばドイツ語やスペイン語、中国語などと比較して、日本語を教えている学校数や日本語学習者数は残念ながらあまり多いとはいえません。
 また、同じ英語圏で移民国家でもあるオーストラリア(人口は約二千万人)では初・中等教育レベルでの日本語学習者数が約37万人にのぼるのと比較すると、人口が約三千二百万人のカナダの初等中等教育における日本語学習者数が約1万人でしかないのは寂しい限りです。(国際交流基金2003年海外日本語教育機関調査結果
 このような状況にかんがみ、カナダの初等中等教育における日本語教育の振興を向こう1、2年の日本語教育アドバイザーの活動の最重点課題とすることにしています。具体的な方策としては、「カナダ版日本語教育振興キット(仮称)」の作成、「日本語教育アシスタントプログラム」の実施などがあげられます。

カナダ版日本語教育振興キット(仮称)

 「カナダ版日本語教育振興キット」は、カナダ国内のより多くの小中高校に日本語教育を導入してもらうことと、小中高校に既に存在する日本語プログラムのより一層の成長・発展を支援することを目的とし、そのために必要な各種の情報や参考資料をウエブサイト(サイトは2007年9月上旬に公開の予定)と活字媒体を通じて提供します。国際交流基金トロント日本文化センターとアルバータ州教育省(日本語教育アドバイザー)が共同で制作にあたっており、2007年9月には試用版が公開される予定です。

日本語教育アシスタントプログラム

バンクーバーで行われたBC州日本語教育振興会の研修会の様子の写真
バンクーバーで行われたBC州日本語教育振興会の研修会の様子

 「日本語教育アシスタントプログラム」は、アルバータ州内の小学校への日本語教育の導入を促進するためのプロジェクトです。アルバータ州と姉妹関係にある北海道の大学を卒業した若い人材に、州内の小学校で日本語教育アシスタントとして活動してもらい、その学校における日本語教育プログラムの導入への足がかりとなってもらおうというものです。2008年9月の新学期からのプログラム開始に向けて現在準備中です。このプロジェクトが成功した場合には、他州でもそのノウハウが生かせるだろうと期待しています。

ネットワーク支援 電子メールグループ

 また、日本語教育に関する最新の情報やリソースを提供すること、日本語教師間で意見を交換したり情報・リソースを共有することも、日本語教育の振興・発展にとっては非常に重要な要素です。日本語教育に関わりを持つものすべてがいつでも簡単に情報やリソースを共有できるように、「日本語アルバータ」(アルバータ州内の日本語教育関係者向け)と「日本語カナダ」(カナダ全体の日本語教育関係者向け)という二つの電子メールグループを設立して、日本語教育関係者の緊密なネットワークの構築と維持につとめています。

日本語教育への支援 日本語ウエブページコンテスト

 2007年2月から6月にかけて日本語教育支援の一環として実施した「日本語ウエブページコンテスト」は、日本語アドバイザーとしてはかなりエネルギーを傾注した行事でした。このコンテストは、日本語学習者に実際に日本語を使用して対外的に発信する場を設ける、教師と生徒の両方がコンピューターで日本語を使用することに習熟する機会を供する、ウエブサイト・ウエブページを作成することにより基礎的なICT(Information and Communications Technology)技能を向上させる、コンピューターを使用しながら学習対象言語(日本語)を楽しく身につける、などを目的としています。今回は、2005年のオーストラリア・ビクトリア州での開催に次いで2回目の開催でした。残念ながら参加校の数は少なかったのですが、参加した学校からは肯定的な反応が寄せられているので、来年度のコンテストにはより多くの学校が参加してくれるだろうと期待しています。
 (ちなみに、このコンテストに参加を希望する先生方のためにウエブページ・ウエブサイト作成通信講座も実施しました。講座は英語で実施したのですが、来年度は英語圏のみならず世界のどこからでも参加できるよう日本語と英語の両方で実施しようと考えています。)

日本語教育への支援 日本語メモウエブサイト

 日本語教育支援のもう一つの大きな柱はウエブサイト「日本語メモ」を通じての情報とリソースの提供です。日本語教育アドバイザーとして積極的に日本語教育に関する情報を収集するのは私の仕事の一つですし、また日本語教育アドバイザーという立場上、日本語教育に関するいろいろな情報が私の手元に入ってきます。また、必要や依頼に応じて日本語教育用のリソースも作成します。それらの情報やリソースは「日本語メモ」ウエブサイトにアップロードして、誰でもいつでも簡単に利用できるようにしています。

 以上、カナダ派遣日本語教育アドバイザーとして遂行している業務のうち、現在特に重点を置いている日本語教育の振興と支援という点に絞って紹介しました。

カナダ派遣日本語教育アドバイザー 室屋春光
連絡先 shunko.muroya@gov.ab.ca


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 アルバータ州教育省は州内の初等中等教育(K-12)を管轄する州政府機関で、学習指導要領の策定、指導手引書や到達度評価文書の作成、市販学習教材の認定、各種の教育支援、教員研修、教員ネットワーク支援、教育資格授与、各種の国際協力プロジェクトなどを行う。
 2002年から派遣が開始された日本語アドバイザーはアルバータ州のみならずカナダ全体が守備範囲で、日本語教育の振興、日本語教育に関する教材や情報の提供、教材開発、日本語教師のネットワーク支援、教員研修、各種日本語教育関係行事の運営サポート、カリキュラム関係文書の校閲など、業務内容は多岐にわたる。
ロ.派遣先機関名称 アルバータ州教育省
Alberta Education
ハ.所在地 8th Floor, 44 Capital Boulevard
10044 - 108 Street NW
Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名

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