世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ITと日本語教育支援活動

カナダ・アルバータ州教育省
室屋春光

 私は国際交流基金の日本語教育専門家長期派遣プログラムによりカナダ・アルバータ州教育省に派遣され、日本語教育アドバイザーとしてアルバータ州のみでなくカナダ全体の日本語教育をいろいろな形で支援する仕事をしています。業務の内容は、日本語教育の振興、日本語教育に関する情報や教材の提供、各種教材(デジタル教材を含む)の開発協力、学習指導要領や指導の手引きなどのカリキュラム関係文書の作成協力、教師研修、日本語教師間のネットワーク構築の助成、各種行事の運営協力、など多岐にわたります。このような各種業務の主なものは2007年度版のページで紹介してありますのでそちらに譲り、今回は私がおこなっている業務のなかでも特にITと日本語教育支援活動という点に絞って紹介したいと思います。

なぜ「ITと日本語教育」?

 いまさらこのような問いかけをするのは時代遅れかもしれません。確かに日本語を教えている先生方の中にもIT関係の知識が豊富でいろいろな形でITを利用している先生方ももちろんいらっしゃいます。けれども、コンピューターに対して苦手意識を持っている先生方がけっこう多くいらっしゃるというのも事実です。私が業務の一環として日本語の先生方にITを日本語教育に利用することを勧めているのは、コンピューターに対する苦手意識をなくすお手伝いをしたいと考えるからです。私自身もITの専門家であるわけではありませんが、「苦手意識」という障壁を越えるとそのあとはずっと楽になるということは経験で知っています。そして、ひとたび「苦手意識」をなくすと、コンピューターを日本語教育に利用するいろいろな道が開けてきます。

ウエブサイトの利用

「バーナビーマウンテン高校の日本語プログラム」ウエブサイトの写真
「バーナビーマウンテン高校の日本語プログラム」ウエブサイト

 自身の日本語プログラムのウエブサイトを持つと、例えば、生徒への宿題や課題の指示、ワークシートなどのダウンロード、音声ファイル・画像ファイルのアップロード、それを利用した生徒の自宅学習の促進、生徒の電子ポートフォリオ(e-portfolio)や生徒の成果物の展示、自身の日本語プログラムの振興・広報など、いろいろな形で日本語教育に利用することができます。その実例を一つ。カナダの西海岸の大都市バンクーバー近郊で日本語を教えていらっしゃる祥子リノビッチ先生は「バーナビーマウンテン高校の日本語プログラム」というウエブサイトをお持ちで、このサイトには「Courses」、「Projects」、「Photos」、「Links」、「Resources」といったページがあり、いろいろな形で同校の日本語プログラムのために活用されています。ぜひご覧になってみてください。(http://www.mountain.sd41.bc.ca/depts/languages/japanese/index.html

ウエブページ/ウエブサイト作成講座

 ウエブサイトを持てばいろいろと活用できることがわかっていても、ウエブサイトの作り方がわからなければ何もできません。そこで、日本語の先生方を対象として07年の春と08年の春にそれぞれ「ウエブページ・ウエブサイト作成法」という5週間の無料通信講座を実施しました。この講座ではマイクロソフトワードを使用してウエブページを作成し、ヤフーが提供する無料のウエブスペースをサーバーとしてサイトをアップする方法をわかりやすく説明しました。各週のプロセスは、教材を電子メールで講座参加者に送り、参加者は教材に沿ってウエブページを作成しそれをサーバーにアップ、インストラクターの私がインターネット上でそのサイトを点検確認し、問題がなければOKの電子メールを、問題があれば改善法を電子メールで送信、という形をとります。08年は世界各地から約190名の日本語の先生方が講座に参加し、最終的には65名の先生方が講座を修了しました(落伍者が多い点は反省しています)。ちなみに、この講座はウエブサイトの作成に関するスキルだけでなく、ワードを使用して各種の教材をつくるときにも役に立つような内容になっています。本講座の教材をご覧になりたい方は「日本語メモ」ウエブサイトの「Resources」のページの「Web Creating Instructions」の項からダウンロードすることができます。(http://www.nihongomemo.com/resources.htm)

日本語ウエブページコンテスト

 日本語の先生方や日本語を学習している生徒たちが日本語を使ってウエブページを作る作業を楽しむ機会を提供したり、先生と生徒にコンピューターでの日本語の使い方を学ぶ機会を提供することなどを目的として日本語ウエブページコンテストというオンラインコンテストを主催しています。コンテストには高校3年、2年、1年、中学校、小学校の部門があり、各部門にはそれぞれトピックが設定されています。コンテストへの参加は、部門ごとに学校単位で作成したウエブサイトによる参加となります。コンテストのウエブサイトにはコンテストギャラリーがあり、ギャラリーでコンテストの参加校のウエブサイトへのリンクを提供することによりコンテストを運営します。05年にオーストラリアのビクトリア州で同州内の学校を対象に第1回のコンテストを開催し、07年と08年のコンテストでは世界のどの国からの参加も認めて開催しました。このコンテストに参加した学校のほとんどは上述のウエブ作成講座に参加された先生方の学校で、ウエブ作成について何も知識がなかった先生方が数ヶ月のうちに立派にウエブサイトを作成することができるようになった墲ッですから、その努力の成果は多としたいと思います。コンテストのサイトの「2008 Contest galleries」をクリックすると、参加校の作品を見ることができますので、ぜひ参加各校のサイトを訪れてみてください。(http://www.japanesewebpagecontest.com/

Skypeの利用

 カナダのように国土の大きい国では先生方が一箇所に集まって研修会をしたりミーティングを開いたりするのは容易ではありません。そのような不利な条件を克服するために、この一、二年Skype を使っての各種ミーティングを試みています。その一つは「Sawakai(茶話会)」で、日本語が母語ではない日本語の先生方を対象に07年の秋と08年の春にそれぞれ10週間、週に1~2回のオンラインのお茶会(雑談する会)を実施しました。それぞれの会にはあらかじめトピックを選んで開催日時とともに参加希望者に電子メールで連絡し、Skype の会議機能を利用して参加者みんなでトピックについて話をします。また、アルバータ州ではアルバータ日本語教師会(AJTA)のネットワークミーティングにも Skype を導入して、先生方が学校や自宅にいながらにしてミーティングに参加できるようにしています。

日本語メモ PC Tips for Teachers and Students of Japanese Language

コンピューターで日本語を使う際には(特に日本国外では)知っておかないと不便なことがいろいろとあります。それについて日本語の先生方や日本語を学習しているみなさんがあれこれと探し回らなくても簡単に一箇所でそのような知識が得られる場所を提供するために私のウエブサイト「日本語メモ」の中に「PC Tips for Teachers and Students of Japanese Language」というセクションを設けてあります。このセクションには以下のような情報がまとめてありますので、興味のある方はどうぞ。
(http://www.nihongomemo.com/pctips.htm)

日本語メモ「PCTips」のページの写真
日本語メモ 「PC Tips」のページ

- Installing Global IME
- Lost the Global IME Language bar?
- Using Global IME
- Learning how to type Japanese
- Useful short-cut keys
- Furigana (rubi)
- Tategaki - vertical text
- Instructions for free Kyokasho-tai font download
- Other free font download
- Solving "Mojibake" problems


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 アルバータ州教育省は州内の初等中等教育(K-12)を管轄する州政府機関で、学習指導要領の策定、指導手引書や到達度評価文書の作成、市販学習教材の認定、各種の教育支援、教員研修、教員ネットワーク支援、教育資格授与、各種の国際協力プロジェクトなどを行う。
2002年から派遣が開始された日本語アドバイザーはアルバータ州のみならずカナダ全体が守備範囲で、日本語教育の振興、日本語教育に関する教材や情報の提供、教材開発、日本語教師のネットワーク支援、教員研修、各種日本語教育関係行事の運営サポート、カリキュラム関係文書の校閲など、業務内容は多岐にわたる。
ロ.派遣先機関名称 アルバータ州教育省
Alberta Education
ハ.所在地 8th Floor, 44 Capital Boulevard
10044 - 108 Street NW
Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名

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