世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) カナダの日本語教育ネットワーク

カナダ・アルバータ州教育省
室屋春光

1.日本語アドバイザーの仕事とは?

 国際交流基金から世界各地に派遣されている日本語教育専門家の業務の内容は、派遣先によっていろいろと異なります。高等教育機関でカリキュラム編成や教材開発、授業の担当に携わることもありますし、現地の日本語教育をいろいろな形で支援することに仕事の重点があるケースもあります。日本語アドバイザーと呼ばれる肩書きで仕事をしている専門家の多くは後者、すなわち現地の日本語教育に対するさまざまな支援活動が業務の中心となっており、カナダ派遣の日本語アドバイザーの場合もその例外ではありません。

 それでは、現地の日本語教育に対する支援とは具体的にはどういう内容なのかといいますと、カナダに派遣されていた私の場合は以下のようにまとめることができるかと思います。

  • 各種研修の企画・実施・発表・参加
  • 各種行事の企画・実施・参加
  • ネットワーク促進・支援
  • 日本語教育関係リソースの作成・提供
  • 日本語関係情報の提供
  • カリキュラム関係文書作成への参画
  • 日本語教育の普及・振興・広報
  • 日本語関係機関との連絡・調整
  • 学校訪問・コンサルティング
  • 報告書・調査書などの作成

 今回はこのような各種の業務の中からネットワークの促進・支援という点に絞って、カナダの日本語教育界の様子を紹介します。

2.カナダの日本語教育における各種のネットワーク

2-1 高等教育機関

CAJLEウエブサイトホームページの画像
CAJLEウエブサイトホームページ

 まず大学などの高等教育機関ですが、カナダ国内では45の大学に日本語プログラムが設置されており、主要都市をはじめ東部、中西部、西部の各州に分布しています。大学の日本語教師間のネットワークとしては、全国組織であるCAJLE(Canadian Association for Japanese Language Education カナダ日本語教育振興会)があり、年次総会開催、研修会・講演会の開催、学会誌の発行、地域部会の開催、ニュースレターの発行などを通じて活発に活動しています。私自身も2008年からCAJLEの理事の一人として広報やコミュニケーション関係の仕事を担当しています。CAJLEの活動の詳細は以下のウエブサイトをご参照ください。
http://www.cajle.info/

2-2 初等中等教育機関

NihngoBCウエブサイトホームページの画像
NihngoBCウエブサイトホームページ

 初等中等教育機関とはいうものの、小学校で第二外国語としての日本語教育を行っている学校はほんの数えるほどで、そのほとんどは高校です。高校における日本語教育もカナダ西部のブリティッシュコロンビア州(約80校)とアルバータ州(約20校)に片寄っていて、それ以外の地域では残念ながら数が非常に限られています。東部4州(ケベック州等)で日本語を教えているK-12レベル(小中高)の学校はありません。日本語教師間のネットワークとしては、ブリティッシュコロンビア州とアルバータ州に日本語教師会があります。

 ブリティッシュコロンビア州の教師会は「NihongoBC (British Columbia Teachers of Japanese)」があり、研修会の開催、ウエブサイトを利用した教材の共有、電子メールグループやネットワークミーティングを通じての情報交換などの活動を盛んに行っています。同会のウエブサイトとメールグループは、それぞれ以下のURLを参照してください。
http://sites.google.com/site/nihongobc/Home
http://groups.google.com/group/nihongo-bc

 アルバータ州の教師会としては「AJTA (Alberta Japanese Teachers’ Association)」があります。会員の数は少ないですが、Skypeやビデオ会議を利用した月例ネットワークミーティングと電子メールグループを通じての情報交換や教材の共有を行っています。近い将来にウエブサイトを立ち上げる計画もあるようです。同会のメールグループは、以下のURLを参照してください。
http://groups.yahoo.com/group/AJTA

2-3 そのほかの日本語教育機関

BCJALTAウエブサイトホームページの画像
BCJALTAウエブサイトホームページ

 バンクーバー、トロント、カルガリーなど歴史的に日系カナダ人口の多い都市には早くから継承語としての日本語教育を行ってきた日本語学校がありました。
 これらの日本語学校では近年、学校教育(K-12および大学)の枠外の一般カナダ人の日本語学習需要と、カナダ人と日本人を親に持つ子弟の日本語学習需要とに対応するための第二言語教育としての日本語教育が主流になってきているようです。学習者数もカナダ全体の日本語学習者数の半数近くを占めています(参照: http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2007-2008/canada.html

 バンクーバー地域には継承語系日本語学校の教師会として「BCJALTA(BC州日本語教育振興会 British Columbia Japanese Language Teachers Association)」があり、定期的に研修会、勉強会、学習者の発表会などを実施して活発に活動しています。BCJALTAウエブサイトは以下のURLを参照してください。
http://www.bcjalta.com/

 アルバータ州南部(カルガリー、レスブリッジ地域)には主に継承語系日本語学校の教師と大学教師を会員とする「南アルバータ日本語教師会」があり、定期的に研修会を実施しています。

3.カナダの日本語教師ネットワークの最近の動向

 CAJLEでは昨年来、大学の日本語教師だけでなく高校や継承語系学校の日本語教師にも積極的に声をかけて会員になってもらい、カナダ全体の日本語教師のネットワークの構築をめざそうという声が高まっています。全国ネットワークが順調に展開されていくことを期待したいと思います。

 ブリティッシュコロンビア州とアルバータ州の高校教師会では、2009年6月にSkypeを利用した合同ネットワークミーティングが催され、これまではほとんど相互交流のなかった二つの教師会が、インターネット上とはいえ初めてひとつの場を共有して話し合う機会を持ちました。今後、さらに二つの教師会での情報の交換や教材の共有が進むといいと思います。

 私自身は、2006年に着任後すぐにアドバイザー業務の一環として、カナダ全体の日本語教師間のコミュニケーションを促進するための「Nihongo-Canada」という電子メールグループを設置しました。大学・K-12・継承語系という教育機関の形態によって教師の関心やニーズが異なる、ということもあって、当初の目的である「カナダ全体の日本語教師間のコミュニケーションの促進」を達成するのは容易ではありませんが、おいおいと会員が増え会員間の通信が増えていくことを願っています。「Nihongo-Canada」への入会は、以下のメールアドレスに所属機関を明記して入会希望のメールを送ってください。
Nihongo-Canada-subscribe@yahoogroups.com



派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 アルバータ州教育省は州内の初等中等教育(K-12)を管轄する州政府機関で、学習指導要領の策定、指導手引書や到達度評価文書の作成、市販学習教材の認定、各種の教育支援、教員研修、教員ネットワーク支援、教育資格授与、各種の国際協力プロジェクトなどを行う。
 2002年から派遣が開始された日本語アドバイザーはアルバータ州のみならずカナダ全体が守備範囲で、日本語教育の振興、日本語教育に関する教材や情報の提供、教材開発、日本語教師のネットワーク支援、教員研修、各種日本語教育関係行事の運営サポート、カリキュラム関係文書の校閲など、業務内容は多岐にわたる。
ロ.派遣先機関名称 アルバータ州教育省
Alberta Education
ハ.所在地 8th Floor, 44 Capital Boulevard
10044 - 108 Street NW
Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名

ページトップへ戻る