世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)高校生日本語コンテスト -アルバータ日本語教師会の試み-

アルバータ州教育省
平田 好

世界の各地で日本語コンテストが開催されています。例えば、全カナダ日本語弁論大会は1989年に始まり2014年3月に第25回を迎えました。四半世紀にわたって全国大会が続いていることは各地域の先生方のご尽力の賜であり、カナダの日本語教育関係者が大いに誇るべきものでしょう。日本語コンテストにはいろいろな意義・側面があります。出場者は、学習成果を披露し、自らの主張を多くのひとに伝えることができます。日本語教師は、ひとつの学習目標として設定したり、学習者のモチベーションを高める機会として活用しています。そして日本語教育について多くの方が理解する貴重な機会にもなっています。日本語教育アドバイザーは毎年、全カナダ日本語弁論大会及び地区大会(出場者は主に大学生)の審査や講評も担当しますが、ここでは2013年3月より始まったアルバータ州の高校生を対象とした日本語コンテストへの支援を紹介します。

日本語コンテストをアニメフェスティバルと同時に

アルバータ州では日系コミュニティ団体とアルバータ日本語教師会(以下、AJTA)の協働による日本語・日本文化振興プログラム“Explore Japan”が2010年より毎年開催されています。日本語学習開始まもない高校1年生約300名が集まる同イベントの第3回目が終わった2012年11月、AJTAのある教師が「高校2,3年生も対象として学習成果を積極的に伝える行事を行いたい」と提案しました。 その先生の勤務校では、毎年3月に生徒主導によるアニメフェスティバルが行われています。他校の生徒はもちろん誰でも参加できるものです。同日午前に日本語コンテストを行って、多くの生徒に日本語学習への興味を喚起しようという狙いもありました。

提案した先生はAJTAメーリングリストを通じて意見を求めたのですが、当初は他の先生方からの反応は活発とは言えませんでした。2013年1月になりましたが、提案者は開催準備を迷っているようでした。このようなときこそ、黒子としてのアドバイザーの出番です。2か月あれば準備はできます。開催までの工程について話し合い、二人でできること、他の教師と分担できることについて整理しました。まずは、スピーチ以外にどのような部門を設定できるか検討しました。当日会場に来ることができなくても参加できるビデオ部門、グループで参加できるスキット部門と、できるだけ多くの生徒が出場できる仕掛けを考えたわけです。

そして、各部門の応募・審査基準を作成するとともに、賞品を用意しなければなりませんでした。国際交流基金トロント日本文化センター(以下、JFT)の助成プログラムへの申請を促がし、教育省にも支援要請を行いました。審査員候補として、当地大学の日本語教師、日系コミュニティ団体の代表に加えて、総領事館文化担当官の名前をあげました。すると「遠くから来てもらって大丈夫か。何人出場するかもわからないのに」という不安が先生方から表されました。ちなみに、当地エドモントンに在外公館はなく、総領事館があるカルガリーは車で4時間弱の距離にあります。不安はもっともなことですが、このようなときこそ日本語教師の背中を押しつつ、企画調整をするのもアドバイザーの役割です。

スキット部門の発表の写真
スキット部門の発表

ビデオを観る参加者の写真
ビデオを観る参加者

初めての高校生日本語コンテスト

2013年3月9日、第1回アルバータ州高校生日本語コンテストには、ビデオ、スキット、スピーチの3部門に5校31名が出場。日本語学習の成果は観客や審査員を通じて広く知られ、良い方向に回れば偶然にもラッキーなことが飛び込んできます。日本で毎年開催されている「海外高校生による日本語スピーチコンテスト」実行委員会がカナダ代表の出場可否をJFTに問い合わせてきたのです。AJTAは、日本往復航空券の協賛についても準備を進め、スピーチ部門の優勝者をカナダ代表として7月に日本へ送り出すことができました。

第2回、第3回・・・そして第25回へ向けて

第1回優勝者が日本に行ったことは学習者にとって大きなモチベーションになりました。第2回には、スピーチ部門で競って日本に行こう、という生徒たちが現れてきました。さらに在カルガリー日本国総領事館とAJTAとの共催が実現しました。またビデオ中継によるスピーチ参加を可としたこと、初級部門を新設したことから、8校41名が出場、第1回以上の観客が集まり成功をおさめました。現在、第3回(2015年3月開催予定)に向けて、各部門の審査基準を高校生の日本語学習により合致したものにする検討が始まっています。また、AJTAにおける実行委員会の体制、業務分担もより明確になってきました。

日本語教育アドバイザーは「日本語教育」の専門家であるとともに、「日本語教育支援」の専門家です。教師研修の提供のみならず、日本語教育導入推進活動(アドボカシー活動)、組織化支援も業務の一部です。第1回アルバータ州高校生日本語コンテストのお手伝いができたことは私の誇りであり、そして大学生対象の日本語弁論大会と同様に25回以上続くことを心より願っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Alberta Education
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
州内の初等中等教育を管轄する政府機関。国際教育サービス課に所属し、交流プログラムや日本語教育への支援(学習指導要領、指導手引書、到達度評価文書等の開発、教材情報の提供、日本文化及び日本語教育振興行事の企画運営)を行う。カナダ全域のアドバイザーを兼任し、国際交流基金トロント日本文化センターとの連携のもとに、全国レベルでの日本語教育振興、教師研修、ネットワーク形成支援等を担当する。
所在地 Main Floor, 10044-108 Street NW, Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
国際交流基金からの派遣者数 日本語上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2001年

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