世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)カナダの高校で教育実習-海外日本語教育インターン派遣プログラム

アルバータ州教育省
齊藤真美

広い広いカナダ

 カナダといえば何をまず思い浮かべるでしょうか。こちらに赴任する前に私自身がもっていたカナダのイメージといえば、ロッキー山脈、ナイアガラの滝、など大自然に関するものでした。実際に赴任先であるアルバータ州はその南西部、ブリティッシュ・コロンビア州との州境にロッキー山脈が南北に長く延びています。そのアルバータ州自体はカナダ西部に位置し、面積は日本国土の1.75倍ですが、カナダ全土については世界第2位の国土面積を持ち、なんと日本の面積の約26倍ものにもなります。このように広い国土を持つカナダに、国際交流基金から派遣されている専門家は1人ですが、所属機関であるアルバータ州教育省内での仕事のみならず、カナダ東部オンタリオ州にある国際交流基金の海外拠点のひとつ、トロント日本文化センターとの協働でカナダ全域の日本語教育の支援も行っています。何より、カナダの日本語教育を支えているのは現地の日本語教師の方々です。

アルバータ州内においては、州政府の教育省、国際教育サービス部に所属し主に中等教育機関(中学や高校)での言語教育に関してサポートを行っています。教師研修や学校訪問、日本関連イベントの支援などと同時に、現場では実際にどのような支援が求められているかなど、現地の先生方とたくさんお会いし、話をしています。アルバータ州内においても、飛行機やバス、車などの長距離の移動を伴いますが、先生方にお会いできる機会はとても貴重で、実際の教育現場に行くことで多くの交流機会、情報なども得ることができます。

アルバータ州への日本語教育インターン派遣

国際交流基金の数ある事業の中の1つに海外での日本語教育支援がありますが、ご存知の通り専門家派遣事業はその1つです。また、それ以外にもたくさんあるのですが、今回は「海外日本語教育インターン派遣」についてカナダでの事例をご紹介したいと思います。この事業は日本国内の大学等で日本語教育を学んでいる学生を海外の日本語教育機関に日本語教育実習生(インターン)として派遣し、海外で日本語を学んでいる学生などの日本語学習を支援すると同時に、派遣するインターンに対して海外日本語教育の現場を経験する機会を提供するプログラムです。カナダ全土でもいくつかの現地の大学と日本の大学とで連携し、このプログラムを利用して日本の大学等からインターン生が日本語教育現場での経験の場を得ています。通常は大学同士の連携により実施されているプログラムなのですが、ここアルバータ州では日本の大学とアルバータ州教育省とが連携し、高校教育の現場にインターン生を派遣しています。

アルバータ州への日本語教育インターン派遣は2013年9月から新しくスタートしました。現在はアルバータ州レッドディア市、エドモントン市の2つの都市の教育委員会に受け入れられ、日本から来たインターン生は高校でのインターン活動に励んでいます。活動期間はカナダのスクールイヤーに合わせて9月から翌年6月の10か月ほどです。活動内容としては、現地の先生のサポート、文化紹介や日本文化クラブなどの支援、学生のチュートリアル、そしてカナダの現地日本語教員の指導の下で、実際の授業もいくつか担当させてもらえます。カリキュラムやシラバスの確認、教案の作成などもします。日本の大学で学んだ日本語教育に関する理論や、模擬授業も、実際の教育現場、ことに海外の教育現場では異なることも多く、インターン生にとっては新しく吸収することばかりではじめは戸惑うことも多いようですが、何より、日本語を楽しそうに学んでいる学生たちの熱意や笑顔に一番心を打たれるといいます。本人自身もインターン活動によって成長する中、現地の学生と交流をしながら、その興味や成長を目の前で見ることができます。それはまさに日本語教育の現場体験であり、日本語教師としての醍醐味といえるかと思います。

10か月もの長期間、海外でのインターン生活を送ることは、なかなか大変だろうと想像します。それでも、いままでアルバータ州でインターンシップ活動をしてくれた大学生の方々はみな最後には「とてもすばらしい経験でした!」「カナダにまた戻ってきます!」という元気いっぱいの声を聴かせてくれます。海外での日本語教育現場を体験し、大きく成長し、新たな希望をもって帰国するその姿は、とてもまぶしく見えます。

2015-2016年インターン生二人と先生の画像
2015-2016年インターン生二人と先生

Harry Ainlay高校のインターン生の授業の様子の画像
Harry Ainlay高校のインターン生の授業の様子

カナダの日本語教育を支えているもの

近頃では大学生等の若い世代が長期間海外に出ることを躊躇するというニュースも耳にします。大学の休学や、近い将来の就職活動、もちろん金銭的な面なども考えると、在学中の海外での長期インターン活動はとても大きな決心が必要となると思います。しかし、現地の学校教育現場に入り、先生方と協力しながら「教師」を経験することは、将来日本語教育の道を考える若い人たちにとっては何ものにも代えがたいとても貴重な経験となることは間違いありません。このような新しい世代の日本語教師の方々を応援することも、海外派遣専門家の重要な任務のひとつだと思っています。また、このようなプログラムが海外での日本語教育を活性化し、現地の先生方にとっても刺激となり、学生にとっても年齢の近い日本人学生との交流からよりリアルな日本について学ぶ貴重な機会となります。現地の先生方だけでなく、日本からのインターン生やそれにかかわる多くの方々によってカナダ、そして海外の日本語教育は支えられています。これからも多くの方々の協力を得て、カナダでの日本語教育の発展に力を尽くしたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Alberta Education
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
州内の初等中等教育を管轄する政府機関。国際教育サービス課に所属し、交流プログラムや日本語教育への支援(学習指導要領、指導手引書、到達度評価文書等の開発、教材情報の提供、日本文化及び日本語教育振興行事の企画運営)を行う。カナダ全域のアドバイザーを兼任し、国際交流基金トロント日本文化センターとの連携のもとに、全国レベルでの日本語教育振興、教師研修、ネットワーク形成支援等を担当する。
所在地 Main Floor, 10044-108 Street NW, Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
国際交流基金からの派遣者数 日本語上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2001年

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