世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 大きく発展しようとしているインドの日本語教育

国際交流基金ニューデリー日本文化センター
山口 明

1. 日本語学習者の増加

インドの日本語能力試験受験者数

 00年2月~3月に日本の外務省が行なった「インドにおける対日世論調査」によると、米・日・英・仏・独・加・露の中で、日本がアメリカを押さえて一番好きな国になっています。(「インドにおける対日世論調査要点」
 右のグラフのように、能力試験の受験者数は02年は01年の一挙に1.5倍になっています。98年の調査では約4000人と、その国土と人口に比して少なかった日本語学習者数も現在急激に増加しつつあると考えられます。今年度は世界の日本語教育機関調査の年に当るので、その結果が出るでしょう。
 広大なインド全体の日本語教育の状況を把握して、データベースを作るのもニューデリー日本文化センター勤務の日本語教育アドバイザーの仕事です

2. インドにおける英語

 インドの公用語はヒンディー語で、他に憲法でインドの言語として認められた言語が17あります。英語は補助言語となっていますが、共通語は英語になることが多いようです。(Languages of India
 全インド日本語教師会のワークショップではインドの各地から先生方が集まりますが、やはり英語でのコミュニケーションとなります。英語を話す人口は全体のわずか3%とも言われていますが、デリーの私立学校ではほとんどが英語で授業が行なわれ、町の本屋にある本のほとんどが英語です。この英語力はインドのIT産業の成功要因の一つであり、米国企業の電話応対をインドで行なうコールセンターと呼ばれるサービスも急成長しています。
 事務所の現地スタッフ、学校や大学の関係者とも英語でのやり取りになります。  

3. 日本語を学ぶIT技術者

 能力試験受験者数の増大は、ソフトウェア技術者やITを学ぶ学生の中で日本語能力を身に着けて日本での仕事を目指す人が増えたことによるところが大きいようです。ソフトの対日輸出は全体のわずか4%を占めているにすぎませんが、アメリカの不況もあって、日本市場が注目されています。(「インドIT情報局」
 政府もインドをIT立国にすることを目的として取り組んでいて、日本語学習に対して補助金を出すことしました。その申請の条件に日本語能力試験合格が入っているので、受験者数が増加したと考えられます。そして、新たに能力試験対策講座を開設する機関も増えています。
 IT省関係の機関から依頼で、IT技術者養成機関のための日本語教材の作成を現地教師と共に始めました。

4. 中等教育への普及の可能性

 前任者の時代から、既に中等教育への日本語導入を目指して取り組んできていますが、最近になって、デリーだけでも4校が新たに日本語コースを始めたいと問い合わせてきました。教育省からは進級試験の対象となる正式科目としてまだ認められていませんが、いずれも私立校が第3言語(第1、第2はヒンディー語と英語)として日本語クラスを開設しようとしています。先日、その1校から、教師候補の面接を手伝うように頼まれました。「今デリーで子供たちが日本語を学んでどんなメリットがあるのか」と質問しましたが、全員が「将来就職に役立つだろう」という答えでした。異文化理解の視点も期待したのですが、それはありませんでした。
 隔週でミーティングを開き、デリー大学のインド人講師と共にこのデリーの中等教育の教師達をサポートしていきます。

5. インドで教えてみませんか

 IT技術者の日本での活躍が続き、また、教育省が認可し、各地の学校で日本語コースが始まるとなると、教師の確保が一番の問題になります。日本語教育アドバイザーが教師養成を行なうことになりますが、全国規模となった場合は手が回らないでしょう。中等教育の教師の資格について、通常は教授科目の修士号が必要となりますが、専門科目に日本語がある大学が少ないこともあって、これは現実的ではありません。仮に能力試験の3級合格を条件にするとしても、インド人の教師を確保することは難しいでしょう。青年海外協力隊や経験のあるネイティブ教師がインド人教師の研修も含めて各地で活動する必要があります。ビザの問題はありますが、インド側の協力も期待できます。
 大きく発展しようとしているインドの日本語教育に参加しませんか。


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
 及び業務内容
インド全体を視野に入れた日本語教師支援を行うため、1999年から専門家1名が派遣されている。当該専門家はニューデリー日本文化センター付日本語教育アドバイザーとして、機関訪問等による各種調査、教師会や学会への出席を通じた現状把握、教師研修会・セミナー・勉強会の実施ないし実施協力、カリキュラム・教材・教授法等に関するコンサルティング、教師会主催シンポジウムへの協力を通じた教師間ネットワークの形成促進などを行なっている。重点課題として、デリー地区中等教育日本語導入支援、ITエンジニア向け教材の開発、オリジナル辞書、ネパール中等教育用テキストの作成がある。
ロ.派遣先機関名称 国際交流基金ニューデリー日本文化センター
The Japan Foundation New Delhi Office
ハ.所在地 10, Jor Bagh, New Delhi 110003, India
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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