世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ただいま開店準備中

国際交流基金ニューデリー日本文化センター
畠山理恵

バンガロールはどんなところ?

 

インド南部・カルナータカ州の州都バンガロール。「インドのシリコンバレー」と呼ばれるこの都市は、ここ数年ITのメッカとして急激に変化・膨張しつづけています。インド各地はもちろん、世界各国からも主に仕事の関係で移り住む人が後を絶ちません。日系企業も多く進出しています。人口は約600万人。5年後には800万人に達すると言われています。また、ここは内陸部の高地に位置し、夏季の現在でも最高気温30度程度とインドで数少ない過ごしやすい気候の町でもあります。定年を迎えたインドの人たちが老後をおだやかに過ごすために選ぶ土地だと聞きましたが、若い世代が続々と入ってきている現状は、かつての一般論を変えつつあります。

なぜバンガロールに?

 今年度より国際交流基金はこのバンガロールに日本語教育アドバイザーを派遣しました。南インド日本語教育の拠点を築くためです。国立バンガロール大学が拠点としてのオフィスを外国語学科内に提供し専門家を受け入れることに同意してくれました。上述の事情を反映して、インド南部では仕事関連の理由で日本語を学ぶ人々が圧倒的に多く、なおかつ続々と増えつづけています。どんどんふくらんでいく需要に追いつこうと、企業が独自に社内にコースを設置する、既存の日本語教育機関が企業に委託されて日本語コースを運営する、新たに日本語教育機関が設立されるなど供給側ではさまざまな対応をしています。しかしながら、個々あるいは全体の実態があまり明らかではありません。さらに、どの機関も目の前の需要に応えるのに精一杯なためか、他機関とのつながりがあまりなく、お互いを知りません。そこで、南インドを見渡して、最も爆発的に学習の需要が高まっているバンガロールが日本語教育支援の拠点として選ばれました。私はそこでの仕事人第一号としてこの5月19日に着任しました。まだ到着後一ヶ月と少しの「ほやほや」です。

何をする?

 新設なった当オフィスの当面の課題は、大きく言って2点です。ひとつめは、バンガロール大学を南インド日本語教育界の拠点とし安定して質の高い人材を輩出していける体制にするための道をさぐり、実際に歩みはじめること。ふたつめは、日本語教育の現場で何がどう動いているかを目・耳・口・足をフルに使ってとらえ、先生方や学習者のみなさんを支援していくための各種メニューをとりそろえて提供していくことです。
 オフィスのあるバンガロール大学外国語学科では12年前から一般公開講座の形で日本語講座が展開されていますが、学士・修士のとれる正規の講座まで引き上げ、南インドをリードしていくレベルにまで高める必要があります。そして、大学専属の教師ではない南インドアドバイザーの立場から、地元バンガロールはもちろん、担当地域のインド全5州(マハラシュトラ、カルナータカ、アンドラプラデーシュ、タミルナド、ケララ)ふたつの近隣諸国(スリランカ、モルディヴ)に常にアンテナを張り、的確な判断に基づいて必要な支援を提供できる体制を保つ必要があります。

どんなオフィス?

オフィスの写真
これがオフィスです。

 先述したように、オフィスはバンガロール大学外国語学科内に「間借り」しています。同学科にはフランス語、ドイツ語、イタリア語と日本語のコースがあり、朝早くから夜遅くまでさまざまな背景を持つ学生たちが集まり、それぞれの言語を学習しているそうです。(到着して以降現在も学期末休み中で8月の学期開始まで実態がわかりません。)オフィスの裏はグラウンドで、クリケットをしている人たちや木陰で昼寝をしている人たちが見えます。反対側の窓の外は林で、リスがすばしこく木を渡っていきます。オフィス内には大きな事務机とコンピューター、開かずの本棚があるのみで、まだ「がらん」としています。

今していることは?

オフィス入り口での写真
オフィス入り口にて

 とにかく前例のない第一号であるため、やることは山積しています。その中で、地元バンガロールでしっかり足元を固めることが、ここしばらくの任務となりそうです。まずはこちらを知っていただかなくてはなりません。市内各地の学校や機関を訪ねてお話をうかがい、ご挨拶をする日々が続いています。「日本語能力試験をぜひバンガロールでも受験できるようにしてほしい」「日本語の教科書をインドで買えるようにしてほしい」「ビデオやDVDなどが自由に見たい」「ほかの学校の先生たちと会いたい。いっしょにテーマを決めて勉強したい。」「学習者の立場に身をおいてみたい。外国語体験教室を教師仲間でしてはどうか。」などなど先生方から初対面のお話の中ですでにたくさんのご要望をいただいています。同じ日本語教師として共感し実現したくなるアイデアが続々出され、ありがたく感じています。また、お会いして以降も継続してお話ができればと考え、メールを活用した発信「おたより」を始めたところです。

今後は?

 8月に入って大学の講座が始まったら、教師陣のひとりとなって運営に参加し、併行してアドバイザー業務を行っていくことになります。何よりもまず、バンガロールでの足固めが肝要。教師、学習者の方々と信頼関係を築き、オフィス内の各種設備を充実させて、知りたいこと・触りたいこと・見たいこと・聞きたいことがそろっている「サロン」を築きたいと思います。新装開店し「いらっしゃいませ」とお迎えするためにはまだまだ準備が必要。しばらくお待ちください。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
 及び業務内容
ニューデリー日本文化センターより南インドの拠点バンガロールに派遣され、インド南部5州とスリランカ、モルディブを対象地域としてアドバイザー業務を行う。具体的な内容は(1)学習機関訪問などによる情報収集、調査、分析(2)前項(1)をデータベースとした各種支援活動の企画、運営(3)日本語教育にかかわるあらゆる情報提供、コンサルティング(4)オフィスを設置したバンガロール大学外国語学科日本語講座体制強化への協力、授業運営参加など。
ロ.派遣先機関名称 国際交流基金ニューデリー日本文化センター(南インド担当)
The Japan Foundation New Delhi Office
ハ.所在地 c/o Department of Foreign Languages, Bangalore University, P.K.Block, Palace Road,Bangalore, 560009 INDIA
ニ.国際交流基金派遣者数 1名

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