世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 少しずつ芽が出てきました。

国際交流基金ニューデリー日本文化センター
(南インド担当、バンガロール大学)
畠山理恵

 国際交流基金が南インドに拠点を設けて早一年。前例がない初代仕事人として相変わらず手探り・開拓者の毎日を送っています。ここまでは地元カルナータカ州バンガロールでの足場作りを最優先にやってきました。おかげさまで、少しずつ「バンガロール畑」に芽が出ようとしています。まわりの方々に多大なご協力を得ながら、ともに達成したこと、達成しつつあることの一部をご紹介します。

1 初めてのスピーチコンテスト開催

熱弁をふるう出場者の写真
熱弁をふるう出場者

 2006年2月5日、バンガロールで「第1回日本語スピーチコンテスト、バンガロール地区大会」が開催されました。きっかけは、ある教師の「南インド大会への出場依頼を毎年受けるが、開催地チェンナイに出向く時間的経済的負担が大きいため、バンガロールのどの学校も出場を見送ってきた。予選を行い代表者を送ってはどうか。賞品として南インド大会出場への旅費を補助すれば、負担は軽減できる。」との発案でした。数人の教師が早速「準備チーム」を組み、スポンサー探しや出場の呼びかけ、ルール設定、審査員探しなどに奔走。努力の甲斐あって、初めてのスピーチコンテストが盛大に開かれました。当日は多数の教師・学生ボランティアが司会、受け付け、写真撮影、など運営にあたり、準備段階からまさに「手作り」の温かい大会となりました。

 大会では出場者全13人がそれぞれの思いを日本語をチャンネルに熱く語り、聴衆を魅了しました。見事バンガロール代表に選ばれたジュニアレベルの上位4人は、南インド大会でなんと上位3位までを独占。続くインド全国大会でも1、3位を獲得し、旋風を巻き起こして帰ってきました。この「うれしいおまけ」は、バンガロールの教師・学習者を大いに勇気づけ、刺激しました。全般的に当地では「日本語能力試験が唯一の実力発揮の場」という傾向がありましたが、このコンテストが教師や学習者にとって新たな目標になり、やがて定着していってほしいと願います。「うれしいおまけ」は来年度以降のコンテストに大いに弾みをつけてくれるでしょう。

2 バンガロール日本語教師会が誕生

バンガロール日本語教師会のロゴの写真
バンガロール日本語教師会のロゴ

 昨年8月から始まった月例勉強会や、9月にバンガロール大学外国語学科で開催された“Japan Habba”(当地の言語カンナダ語で「日本祭り」)、先述のスピーチコンテストなどを通じて、教師たちのあいだにつながりができ、この6月ついに教師会が設立されました。有志の教師数名が準備委員会を結成して、会の名称やロゴの公募、規約案作成など数ヶ月に及ぶ献身的な下地作りを経て設立総会を開催し、そこで選出された役員にバトンタッチ。正式に教師会が始動しました。つい数日前から会員募集の呼びかけが始まったばかりの、生まれたてほやほやの会です。幹部は若手のインド人教師が中心で、この国の日本語教育界では新興の当地を象徴するような、フレッシュな顔ぶれとなりました。バンガロールはもとより、南インド全体を視野に入れてさまざまな活動を展開していきたいと意欲に燃えています。

3 「図書コーナー」オープン

 大学内の一室・当オフィスを、「来て・見て・触れる」ことができる日本語サロンのようにしたいとかねてから考えてきましたが、こちらの思いと大学の判断のスピードには時差(?)があり、なかなか「いらっしゃい」とお迎えするための体制が整いません。それでも、ようやっと支給された書棚いっぱいに関連の書籍類を並べ、「図書コーナー」開設までこぎつけました。総数500点弱とあまり多くはありませんが、教師たちが自己研鑚や日々の授業の参考にと「来て・見て・触れて」そして「持っていって」います。(貸し出しもしています。)貸し出しを始めたことによるうれしい副産物は、教師たちとオフィスで会える頻度がぐんとあがったことです。返却や貸し出しの際に授業その他の雑談をしたり、いっしょに本を探したり、時にはたくさんの資料を広げて月例勉強会のプランを練ったりと、顔を合わせて話し合う中で、アドバイザー活動へのヒントがありがたくも得られるようになりました。

 まわりの方々のお力を得てようやっと出た芽は大切に育てなければなりません。水をやりすぎてもいけません。放っておいてもいけません。蒔いてはみたけれどなかなか芽が出てこない種の様子を見ることも必要です。これから蒔くものもあります。「バンガロール畑」の実りの時期はまだ先のようです。さらに、そのまわりには広大な未開墾の土地が待っています。開拓者の日々はまだまだ続きます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
 及び業務内容
ニューデリー日本文化センターより南インドの拠点バンガロールに派遣され、インド南部5州とスリランカ、モルディブを対象地域としてアドバイザー業務を行う。具体的な内容は(1)学習機関訪問などによる情報収集、調査、分析(2)前項(1)をデータベースとした各種支援活動の企画、運営(3)日本語教育にかかわるあらゆる情報提供、コンサルティング(4)オフィスを設置したバンガロール大学外国語学科日本語講座体制強化への協力、授業運営参加など。
ロ.派遣先機関名称
Japanese Langauge Advisor for South India, The Japan Foundation, New Delhi
ハ.所在地 c/o Department of Foreign Languages, Bangalore University, P.K.Block, Palace Road,Bangalore, 560009 INDIA
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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