世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 南インドに乞うご期待!

ニューデリー日本文化センター(バンガロール大学)
畠山理恵

バンガロール、日本語能力試験会場に!

 この2007年12月よりバンガロールで日本語能力試験が実施されることが正式に決定しました。インドでは5番目の会場になります。ここ数年来の、当地の学習者・教師たちの悲願がようやっと実りました。地元カルナータカ州からはもとより、近隣の州を含め1000人規模の受験申し込みが予想されています。運営実施団体となるのは、昨年度本欄で紹介した「バンガロール日本語教師会(以下、「教師会」)です。
 実は、教師会が結成された最大の動機が「何とかバンガロールに日本語能力試験を誘致したい」という教師たちの強い願いでした。それだけに、今回の朗報はバンガロール内外の日本語教育関係者を大いに喜ばせました。しかしながら、本番はこれから。試験はいつのまにかお膳立てされてどこからか降って来てくれるものではなく、関係者全員が一丸となって、ゼロから汗をかきかき準備しないと実施できない、一大行事だからです。会場探しと選定・試験の宣伝・願書の販売と受付・各種問い合わせへの対応・公正な受験環境の実現・当日のスムーズな運営、その他諸々の作業が半年以上にわたって私たちを待っています。今までは「とにかく試験実施が決まればそれでいい」というような雰囲気がなきにしもあらずでした。目下、ここで気持ちも新たに、教師たちが試験実施の準備を自らの課題と捉え、取り組めるように、バンガロール日本語教師会役員とともに、協力の呼びかけ・引出しに当たっているところです。試験日の来る12月2日に「ああ、バンガロールで試験が受けられるようになって、本当によかった。」と受験者も裏方の私たちもだれもが思えるようになるかどうかは、私を含め、バンガロールの教師たちの閧ノかかっています。

地元の教師主導によるセミナー開催

ケララでのセミナー、休み時間の談笑の写真
ケララでのセミナー、休み時間の談笑。貴重な機会に貴重な情報交換?

 インド着任2年目の終盤、2006年3月に、うれしい出張を立て続けに2件行ってきました。担当地域・南インドの拠点都市、ケララ州コチとアーンドラプラデーシュ州ハイデラバードへで、どちらも地元の教師が「いっしょにセミナーをやりましょう。」と持ちかけてくれ、数ヶ月にわたって共に企画を練り実現にこぎつけたのです。教師から直接「セミナーを開きたい。窓口としてもろもろの準備は引き受けるからぜひ協力してほしい。」と依頼を受けたのは、着任以来初でした。たとえば、地域を管轄する日本総領事館が文化行事の一環として開催を決め、中心的機関が依頼を受けて実務をし、そこへ私たちアドバイザーが出講する、というような、「外からのお膳立てセミナー」とはわけがちがいます。
 開催時期からセミナーの内容、時間割、宣伝の仕方や受付に至るまで、窓口を買って出てくださった教師とあれこれ相談し、その甲斐あって、コチでは私単独で3日間、ハイデラバードでは北インド担当の日本語教育専門家とともに3日間の教師セミナーを行うことができました。毎日のようにひざを突き合わせてやりとりする中から、参加してくださった教師ひとりひとりのそれぞれの事情・実践の様子がうかがえ、収穫は大でした。セミナーの前後には、授業見学もさせていただくことができました。開催期間中は、どちらの会場でも「窓口先生」が大忙し。参加者からも講師からもちょっとしたことで「〇〇先生!」と声がかかります。ですが、その都度いやな顔ひとつせず気持ちよく対応してくださり、私たちのために奔走してくださいました。P先生、R先生、この場を借りて改めて御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。セミナーをきっかけとして、今後は、窓口先生を中心とするネットワークが育っていってくれたらいいなと期待しています。
 ニーズに合った支援を提供していくためには、現場を訪ねたり上述のように勉強会を共催したりして、教師と実際に顔を合わせることがとても大切です。インド着任後3年目になった今年度は、より多くの現場へ足を運び研修の機会を作り出すことを課題にしています。このための手段もかねて、「勉強会の出前」を去年から始め、上述したケララ州コチでの実践がその第1号となりました。「窓口となってくださる先生がいて、複数の機関からの教師が参加者となり、勉強会前後に授業見学が許可されるなら、どこにでも勉強会を出前します。」というプロジェクトです。第2号への注文が舞い込むのを心待ちにしています。

<バンガロール、南インドの中心となるか>

 すでに述べたように、バンガロールでは今年から日本語能力試験が行われます。その運営を担う教師会は、ようやっと設立1年を迎えたばかりの若い会ですが、ここで一致団結し、試験準備・実施をなんとかみんなで乗り切れば、計りしれない実績・自信につながります。
 その教師会に南インドの教師たちから熱い期待が寄せられています。これまで南インドには、教師個人を対象とした、このような会がありませんでした。昨年の設立以来、勉強会開催やニュースレター「かわらばん」の発行、日本語能力試験模擬試験の実施、スピーチコンテスト開催などなど、日本語を教え、学ぶ人々のために、各種活動を活発に企画・展開している教師会に、「何かやってくれそうだ」「名前だけの会ではなさそうだ」と、バンガロール以外の他都市からも強い関心が寄せられているのです。
 私の見る限り、機関・教師・学習者のいずれも南インドではバンガロールが数的に群を抜いているようです。日本語教育の歴史はまだ浅く、関係者間のつながりもそれほど強固ではありませんが、だからこそ、ゼロからの開かれた公平なネットワーク作りや実績作りのための土壌が十分にあります。
 日本語能力試験を毎年着実に実施する、教師会が良心的な活動を今後も引き続き活発に展開する、南インド他都市の関係機関・関係者とも良好なつながりを築いていくことによって、まだ若い・新興のバンガロールが少しずつ実力を蓄え、南インドの拠点に育っていってほしい、と願い、当地の先生方と共に、今日も種まきに勤しむ私です。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
 及び業務内容
ニューデリー日本文化センターより南インドの拠点バンガロールに派遣され、インド南部5州とスリランカ、モルディブを対象地域としてアドバイザー業務を行う。具体的な内容は(1)学習機関訪問などによる情報収集、調査、分析(2)前項(1)をデータベースとした各種支援活動の企画、運営(3)日本語教育にかかわるあらゆる情報提供、コンサルティング(4)オフィスを設置したバンガロール大学外国語学科日本語講座体制強化への協力、授業運営参加など。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
ハ.所在地(実際の勤務場所) Japanese Language Advisor for South India, The Japan Foundation, C/O Department of Foreign Languages, Bangalore Uniersity, P.K.Block, Palace Road, Banglaore 560009 INDIA
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名(南インド担当)

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