世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語への熱い思い

ニューデリー日本文化センター
長谷川理恵、柴原智代

求む日本語人材!……インド日本語教育事情

 インドに進出している日本企業はこの2~3年で1.5倍に増え、今も増え続けています。インド企業の日本との取引も相当増えているようです。おかげで日本語が上手な人の求人は引く手あまた。ほとんど同じような職種でも「日本語」ができるだけで給料は1.5倍以上ときには10倍になるのです。つまり、それだけ日本語ができる人材が少ないということでもあります。
  日本語教育の内容も、ただの「日本語」にとどまらず、ビジネスですぐに使える会話力の養成やビジネスマナーの教育も求められるようになってきています。しかし、研究が中心だった大学などでは現実の社会の要求になかなかこたえられていません。また日本語学習機関も大都市に集中しており、地方都市では初級講座すらないところがほとんどです。
  このような環境の中で、ニューデリー日本文化センターでは近隣諸国の大使館、各地の総領事館、日本語教師会などと協力し、短期間の巡回セミナーを実施しています。2007年度は、プネ、ムンバイ、コルカタ、バンガロール、デリーなどインドの都市のほか、ネパールやバングラデシュでも実施しました。内容も、日本語教授法から、ビジネス日本語、初級文法、情報交換、日本文化までさまざまです。できるだけ現地の先生方の要望にこたえる努力をしています。

求む日本語教師!……日本語教師支援

 2006年の日本語教育機関調査によると、インドの日本語学習者は2003年から2006年にかけて5446人から11011人に増えました。なんと2倍以上になったのです。ところが、日本語教師は256人から369人に44パーセント増加しただけです。教師一人当たりの学習者数は21.3人から29.8人へと大幅に増加しています。また、この3年で日本語教師になった人たちのほとんどが若く経験の浅い日本語教師です。大半はいつか給料の高い日本企業へ入ろうと日本語の学習を続けている学習者でもあり、おかげでいい先生からどんどん企業に転職して、慢性的に日本語教師不足の状態が続いています。大学でも、中学高校でも、民間語学教室でも、教師が突然やめてコースが中断するというのは日常茶飯事です。
  そんな中、ニューデリー日本文化センターで主催している現職の学校の他教科の教師を対象にした新規日本語教師養成研修もなんとか2年目に入りました。すでに4名の先生がそれぞれの学校で日本語も教え始めました。

いま学校で……初等中等学校の日本語教育への支援

 2006年からCBSEボード(中央中等教育委員会)に属する学校では6年生(日本の小学校6年生に相当)以上の学年で日本語が第三外国語として正式に認可されるようになりました。まだ課外の選択授業が大半ですが、この2006年の調査で約1000人だった学習者が今年はもう約1500人に増えています。
  ところが、インドには日本語の教科書がほとんどありません。とくに小中学生が日本語を学習する教材は皆無だったのです。そこで、ニューデリー日本文化センターでは、2005年から、インド側政府機関のCBSEとデリーの大学の先生方の協力を得て、6年生~8年生の日本語教科書の作成をしています。現在は7年生用の教科書までほぼ完成し、8年生用の教科書作成に取り組んでいるところです。かわいいイラスト満載の6年生用と7年生用のテキストは、インドの出版社から市販されており、誰でも買うことができます。なんとインド人のビジネスマンが日本に出張に行く前の日本語学習用にも利用されているそうです。

ちりも積もれば……日本・日本語・日本文化の発信源として

JENESYS訪日プログラムで日本へ出発!の写真
JENESYS訪日プログラムで日本へ出発!
書き方コンテスト入賞者の作品の写真
書き方コンテスト入賞者の作品

 インドでも少しずつ日本のアニメなどがテレビで放映されるようになってきています。が、まだまだ東南アジアのように日本のPOPカルチャーが街にあふれるには時間がかかりそうです。一般の人にとっては日本も、中国も、韓国もいっしょ。日本人は普段は髪の毛にお箸をさしていて、食事の時にはそれを使うと信じている人もいます。
  ですから、何かの機会に学校に呼ばれると、折り紙を教えたり、浴衣の着付けをしてみせたり、お箸の使い方を教えてみたり……。そのほか、学校などで主催される日本祭りにも協力しています。インドでは、「本物の日本人がここにいる」ということが学校の生徒たちにとって貴重な体験となっている場合がまだまだ少なくないのです。
  その他、日本語学習の刺激となるように、教師会などと協力し、スピーチコンテスト、エッセイコンテスト、書き方コンテストなども実施しています。2007年からJENESYS(21世紀東アジア青少年大交流計画)の訪日プログラムでいろいろなコンテストの入賞者の一部が日本に行くことができるようになりました。この6月には日本語学習者や教師120人が日本へと旅立ちました。わずか10日の滞日ですが、ほとんどが初めて日本へ行く人たちです。どんな土産話を持って帰ってくるのかとても楽しみです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
 及び業務内容
インドおよび周辺の南アジア諸国における日本語教育支援を目的としている。業務は(1)日本語教育機関、環境についての情報収集・調査。(2)教師セミナーやコンサルティングなどを通じた日本語教師や日本語教育機関の支援。(3)教師会などが主催する日本語弁論大会などの各種行事への協力。(4)当センターにおける教師研修の実施。(5)中等教育用日本語教材の作成など。多岐にわたる。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
ハ.所在地 5-A, Ring Road, Lajpat Nagar-IV, New Delhi - 110024, India
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家 2名
ホ.アドバイザー派遣開始年 1999年

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