世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 新しい日本語能力試験のために

ニューデリー日本文化センター(南インド担当)
和田衣世

教材作りに取り組む参加者の写真
教材作りに取り組む参加者

 2010年7月から日本語能力試験(以下JLPT)が大幅に改定されました。新たにN3という旧3級と旧2級の間にあたるレベルが設置され、新しい問題形式なども加わることになりました。インドはたいへんJLPT受験熱が高い国です。昨年12月に行われた試験では、インド全体で約6,600人が受験しました。

 とりわけここ南インドは実利的な動機で日本語を始める学習者が多く、JLPTの合格証が仕事上のキャリアにつながることを信じて勉強しています。ほとんどの学習者がJLPTに合格するために日本語を勉強していると言っても過言ではありません。そんなインドの学習者にとって従来のJLPTが大幅に改定されるというのは大きな衝撃だったようです。当然のことながら、「新しいJLPTについて知りたい」「新しいJLPTのためにどんな勉強をしたらいいかわからない」といった不安やとまどいの声があちこちで聞かれました。

 そんな要望に応えるべく、2010年2月、南インドで唯一の日本語教師会であるバンガロール日本語教師会とJFニューデリー日本文化センター(以下、JFND)が共催で、新JLPTのための日本語教育セミナーをバンガロールで開催しました。1日だけのセミナーでしたが、参加者はバンガロールからだけではなくタミルナードゥ州のチェンナイやマドゥライ、アーンドラプラデーシュ州のハイデラバード、ケーララ州のコーチンなど、南インド各地から約50名が集まりました。

セミナー参加者の写真
セミナー参加者

 セミナー前半のセッションは「新しいJLPTについて」というテーマでJF派遣専門家南インド担当アドバイザーが新JLPT改定の目的、旧試験との相違点、新しい問題形式の紹介などについて説明しました。説明のあとは参加者がグループに分かれ、新しい問題形式に対応するためにはどんな授業をするべきかなどのディスカッションをし、積極的な意見交換が行われました。セッション後は、このセミナーのためにニューデリーから駆けつけたJF運営専門員によるJF訪日プログラムについての説明なども行われました。インドの学習者や教師にとって、JF訪日プログラムは日本へ行って研修を受けることができる数少ないチャンスの一つです。参加者はみんな興味深く話を聞いているようでした。

 昼食後の後半のセッションは、「新しいJLPTのための教材作り」と称して、ふたたびJF南インド担当アドバイザーがワークショップ形式で講義を行いました。まずは新しい問題形式に対応するための教科書や参考書を紹介し、そのあと6~7人のグループに分かれて教材作りを行いました。新しい問題形式の中には「情報検索」という、生教材をアレンジした読解の中から必要な情報を探し出す、という問題があります。ワークショップでは、準備されたいくつかの生教材資料から、読解問題を作りました。あまりこのような作業はしたことがなかったようで、参加者は同じグループの人と意見を交わしながら悪戦苦闘していたようです。しかし、なんとか各グループ1つ~2つの読解問題を作ることができ、完成後は各グループの代表者が、どんな問題を、どのレベルを対象に、どんなことに注意して問題を作ったか、などを発表しました。

 そのほかにもこのセミナーでは、バンガロール大学日本語講座主任による文部科学省留学制度についての説明、また、バンガロール市内の2つの日本語学校の代表者によるEラーニングの実践報告などが行われました。たった1日のセミナーながら、朝から晩まで、実に盛りだくさんの内容のセミナーでした。

 JFNDは、「専門家巡回指導」と称して、広いインドのみならず周辺の南アジア諸国も対象にこのようなセミナーを毎年定期的に行っています。現在インドに派遣されている4名の専門家はこのような機会を利用して、南インドの日本語教育の実情を把握し、それに合った支援をしようと努力しているのです。 

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
派遣先機関の位置付け ニューデリー日本文化センターより南インドに派遣され、インド南部4州とスリランカ、モルディブを対象地域としてアドバイザー業務を行う。具体的な内容は(1)学習機関訪問などによる情報収集、調査、分析(2)前項(1)をデータベースとした各種支援活動の企画、運営(3)日本語教育にかかわるあらゆる情報提供、コンサルティングなど。
所在地 5-A, Ring Road, Lajpat Nagar-IV, New Delhi - 110024, India
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2005年

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