世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 西インドの先生方もがんばってます!

ニューデリー日本文化センター(西インド担当)
田邉 知成

セミナーで講師役を務める現地の先生(プネ)の写真
セミナーで講師役を務める現地の先生(プネ)

 2009年度より、ここ西インド・マハラシュトラ州のプネに国際交流基金の西インド担当日本語教育アドバイザーが派遣されることになりました。北インドおよび全国を広く管轄するニューデリーの2名、南インドに派遣された1名に続き、インドでの4人目のアドバイザー派遣となります。

 まず、西インドという地域についてですが、グジャラート州、マディヤ・プラデーシュ州、マハラシュトラ州、チャッティースガル州、ゴア州からなり、主要な都市にインド最大の都市ムンバイ(マハラシュトラ州)があります。そして現在アドバイザーが派遣されているのが同じマハラシュトラ州のプネということになります。

 ではなぜ地域の最大都市ムンバイではなくこのプネに基金のアドバイザーが派遣されることになったのでしょうか。

 プネは、ムンバイから南東に220㎞のデッカン高原上にある町で、「ポンカン」という柑橘類の「ポン」の由来になった町でもあります。標高は400m、酷暑でおなじみのインドのなかでは、年中通して比較的涼しい高原型気候の町で、なかなか住みよいところです。実はこのプネ、インド最大の日本語学習者数を誇る町として知られています。近年は、特にIT産業を中心に日本向けビジネスも盛んなプネですが、この町の日本語学習者数はIT時代のはるか以前から、常にインド最大と言われてきました。昨年2009年度の日本語能力試験受験者数を見ると、人口1600万のムンバイが836名であるのに対し、人口400万のプネは1341名でした。これだけの密度で日本語学習者のいる町はインド内にはほかになく、突出して日本語教育が盛んな町と言えます。大学等高等教育機関の数が多いことでも知られ、東のオックスフォードと呼ぶ人もいるほどです。

 インド最大の日本語学習者を抱え、学術研究都市でもあるプネ、筆者はここプネにあるティラク・マハラシュトラ大学というところにオフィスを構え、大学の日本語コースで教えるかたわら、ニューデリー日本文化センターのいわば出張所として、地域の日本語の先生方を側面から支援する活動をおこなっています。担当地域は「西インド」という、人口10億人を超えるこの国でとてつもなく大きな範囲なのですが、とりあえず足元のマハラシュトラ州にある二大都市、ムンバイ、プネが活動の中心です。

 この二大都市ムンバイとプネには、それぞれTAJTeacher’s Association of Japanese Language, Mumbai)、JALTAP(Japanese Language Teacher’s Association of Pune)という日本語教師会があります。どちらの教師会も活発に活動していて頼もしい組織です。

 筆者はこの二つの教師会と連携をとりながら、概ね月に1度ないし2カ月に1度、プネとムンバイでそれぞれセミナーを開催しています。ここで特に申し上げておきたいことは、各セミナーは専門家である筆者が単独でおこなっているのではなく、いつも現地の先生といっしょに開催しているという点です。

 プネでは筆者の着任前から、日本で研修経験のあるベテラン・中堅の先生が若手の先生方の研修をおこなうという動きがあったのですが、筆者の着任以降、筆者がそれに「混ぜてもらう」という感じでセミナーの実施を重ねてきました。現地の先生方が考えた研修プランを筆者がサポートするというやり方で、講師役となる先生方と筆者で、セミナーの進行順序、提示する会話例、タスクの内容まで、事前に話し合ってリハーサルも重ねました。

教師会セミナー会場の様子(ムンバイ)の写真
教師会セミナー会場の様子(ムンバイ)

 これは講師役の先生方にもとてもいい経験になったと言ってもらえました。受講者のなかには講師役の先生よりもっと経験のある先生もいらっしゃって、レクチャーの際はずいぶん緊張したとのことです。国際交流基金では毎年、海外で日本語を教えている現地の先生方を日本へ招き、さいたま市にある日本語国際センターで教師研修をおこなっていますが、この研修に参加した先生方の経験をどのように現地に還元していけるかという点で、この試みはたいへん効果があると感じています。このことは教師会であるJALTAPも感じていて、毎回別の先生といっしょにやってほしいと要望してくるようになりました。時には、やりにくい課題をリクエストされることもあり、筆者としてはたいへんなことも多いのですが、毎回いろいろな先生と深く接することができ、とても楽しくやっています。

 筆者が常駐しているプネでのセミナーとちがい、ムンバイのセミナーでは、さすがに事前に打ち合わせるということが難しいので、上記のようなスタイルは採っていませんが、それでもいつも現地の先生による講義、または経験発表の後に筆者がコマを受け持つという形で、こちらでもできるだけ現地の先生を巻き込むようにしています。このようなセミナーまたは勉強会が、当たり前のように現地の先生方のあいだに根付いていってくれたらいいなといつも思っています。

 すでに活動も2年目に入り、地盤は固まりつつあります。今後の課題は、活動の幅を二大都市以外の地域にどのように延ばしていけるかです。この地域は特に今後経済発展が見込まれる地域であるだけに、今後のインド経済の動向にも注意していく必要があるでしょう。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ニューデリー日本文化センターより西インド担当アドバイザーとしてマハラシュトラ州プネに派遣され、西インドを対象地域としてアドバイザー業務を行う。具体的な業務は、現在デスクを置いているティラク・マハラシュトラ大学日本語コースへの出講、担当地域の教師会と連携しての日本語教育セミナーの開催など。
所在地 5-A, Ring Road, Lajpat Nagar-IV, New Delhi - 110024, India
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2009年

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