世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ティラク・マハラシュトラ大学日本語コース

国際交流基金ニューデリー日本文化センター(西インド担当)
田邉 知成

 筆者がここ西インド・マハラシュトラ州プネに派遣されて早2年が過ぎました。オフィスを置かせてもらっているティラク・マハラシュトラ大学の日本語専攻課程、B.A.日本語コースも設置3年目を終え、この4月に16名の卒業生を送り出すことができました。そして、今年度からはさらに上位の修士課程、M.A.日本語コースが開設されます。今回は、このティラク・マハラシュトラ大学の日本語コースについて紹介したいと思います。

ティラク大学サダシヴペートキャンパス入口の写真
ティラク大学サダシヴペートキャンパス入口

 ティラク・マハラシュトラ大学は、19世紀末から20世紀初頭にかけての反英抵抗運動の英雄、ガンガダール=ティラク(Lokmanya Bal Gangadhar Tilak 、1856-1920)を記念して1921年に建てられた歴史のある大学です。現在は7つの学部(Faculties)を有し、インド大学認定委員会(University Grants Commission、略称UGC)より学位発行を認められた“Deemed University”です。

 日本語コースは、まず2004年に一般社会人を対象としたオープンコースとして始まりましたが、近年インドでの日本語学習熱の高まりを受けて、2008年から全日3年制の学位認定コース、B.A.日本語コースが開設されました。そして4年目に当たる今年度からは、先述した修士課程、M.A.日本語コースが開設されます。B.A.コース、M.A.コースとも、当地西インドでは唯一の学位課程の日本語コースとして期待されています。

 B.A.日本語コースは12年生を修了した学生(日本の高校卒にあたる)が入学することができ、日本語を基礎から学ぶことができます。日本語を中心に学習しますが、日本文化・社会の学習を通して異文化に適応できる人材の育成も目指しています。ティラク・マハラシュトラ大学は、その歴史的経緯より、元来インド学やサンスクリット学に強く、この日本語コースもサンスクリット学科内に置かれています。そのため、学生たちには日本学だけでなく、自身の文化であるインド学の講座も必修科目となっています。

学生による研究発表の写真
学生による研究発表

 コースは日本語の四技能(聞く・話す・読む・書く)の習得、英語英訳学習、文化・社会の学習という3つの柱からなっています。1年生では、日本語について基礎から学ぶほか、英語とインド学が必修となります。2年生は日本語の初級学習を終え、中級学習へと進んでいく期間となります。英語を継続して学ぶ一方、インド学に代わって日本学の学習が始まります。そして最終学年である3年生では、中級からさらに日本語の上級話者を目指します。日本語を「習う」だけでなく、日本語で「調べる」、「発表する」といった日本語をツールとして利用する活動も体験します。日本学では現在の日本社会のことだけでなく、日本の文学や歴史に関しても学んでいきます。また、これまでの英語学習を発展させて日英の翻訳技能を習得していきます。

 今年度開設されるM.A.コースも4つの大きな柱からなっています。ひとつは言語としての日本語を研究する言語学系統、2つ目はツールとしての日本語である実用日本語系統、3つ目は日本そのものを研究対象とする日本学系統、そしてもうひとつ、次代の日本語教師を養成する日本語教育系統です。このM.A.コースでは「日本語を」ではなく、「日本語で」という側面がさらに強まります。学生たちはこれら4つの系統すべてについて学んでいくことになります。

 ティラク・マハラシュトラ大学日本語コースは昨年度初めての卒業生を出したばかり、今後、多くの学生たちがこのコースから将来の日印関係を担う人材として巣立ってくれることでしょう。コースの設計を依頼された者として、新しく開設されるM.A.コースも順調なスタートがきれるよう、心より願っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
インドおよび周辺の南アジア諸国における日本語教育支援を目的としている。具体的な業務としては(1)インド国内およびバングラデシュ、ネパール、パキスタンなどでの教師セミナー、勉強会、コンサルティングなどを通じて日本語教師や日本語教育機関への協力を南担当、西担当と手分けして実施。(2)日本語弁論大会や学校行事への参加協力。(3)当センターにおける初等・中等学校の教師研修の実施。(4)初等・中等教育用の教材、試験問題の作成など、多岐にわたる。
所在地 5-A, Ring Road, Lajpat Nagar-IV, New Delhi, 110024, India
国際交流基金からの派遣者数 シニア専門家:1名、上級専門家:2名(西インド在駐1・南インド在駐1)、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1999年

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