世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 第1回プネ日本語ソングコンペティション(JASCOP)開催

国際交流基金ニューデリー日本文化センター(西インド担当)
田邉 知成

 さる2月の12日、マハラシュトラ州プネの日本語学習機関の垣根を越えた活動として、第1回プネ日本語ソングコンペティション(Japanese Song Competition, Pune、以下JASCOP) が開催されました。

 インドの中でも日本語教育機関が多いことで知られるプネですが、実はこれまで市内の各学校で勉強している学習者がその学校の枠を超えて楽しめるようなイベントが、年に一度のスピーチコンテストの地方予選を除いてはひとつも存在しませんでした。同じマハラシュトラ州でも州都のムンバイでは、日本国総領事館やムンバイ日本人会も巻き込んでの大々的な日本語文化祭を毎年おこなっています。いつかはプネでもそのような日本語イベントが開けたらいいなと筆者は以前から思っていました。

第1回優勝チーム「猿耳」の写真
第1回優勝チーム「猿耳」

 昨年の11月に地域の中核大学であるプネ大学を訪問させていただいたときに、プネ大学の先生から偶然にも筆者と同じ思いを聞かされ、それではまずプネ大学と筆者がオフィスを構えるティラク大学が共同で何か始めましょうということで企画されたのがこのJASCOPでした。幸いにもティラク大学の日本語科からも協力を得られることとなり、話はとんとん拍子で進みました。

 今回は第1回ということで、参加呼びかけはプネ大学、ティラク大学、そしてプネにあるもうひとつの大手日本語教育機関であるプネ印日協会の学生にとどめ、プネ大学とティラク大学の日本語科で資金を出し合い、両校からJASCOP実行委員会を組織してイベントを主催することとなりました。

 コンペへの参加は5人以上のグループに限ることとし、日本語曲であればジャンルは問いません。最終的に歌とパフォーマンス、そしてチームワークの3つの項目の合計で優勝を争います。結局、当日は上記3校から10グループ93名の学生が参加してくれ、観客も含めて会場は大いに盛り上がりました。また、日本語の授業をおこなっている市内のスクール(小学1年生から10年生までの一貫校)の校長先生から、ぜひとも子どもたちをこの大会に参加させたいとの要望を受け、特別にコンペ参加者としてではなくゲストパフォーマーとして子どもたちのグループに歌を披露してもらいました。一般の参加者とはまた違った可愛いパフォーマンスに、会場からは大きな拍手が送られました。

盛り上がった会場のようすの写真
盛り上がった会場のようす

 各グループ、一生懸命に練習を積んできた歌はもちろん、衣装やパフォーマンスにも工夫を凝らして、観客を飽きさせない楽しいイベントとなりました。審査の結果上位に選ばれた3つのグループに賞状と賞品が贈られましたが、優勝したグループが歌ったのは今風のラップ調の曲で、とても早口の日本語をすべて暗記して歌いきりました。今回は応援に駆けつけた学生たちも、この大会を見て来年はぜひ参加してみたいと思ったのではないでしょうか。

 JASCOP実行委員会では、ぜひともこの大会を毎年恒例のプネの日本語行事として、市内で学ぶすべての日本語学習者がともに楽しめるイベントとして定着させたいと考えています。そのためには会場の確保の問題、イベント広報の問題、それらに要する資金の問題など、いろいろな課題を克服しなければなりませんが、実行委員会を構成する各校が協力して、よりよいイベントにしていきたいと思っています。次におこなわれる大会、プネで学習しているみなさんは楽しみにしていてください。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ニューデリー日本文化センターより西インド担当アドバイザーとしてマハラシュトラ州プネに派遣され、西インドを対象地域としてアドバイザー業務を行う。具体的な業務は、現在事務所を置かせてもらっているティラク・マハラシュトラ大学日本語コースへの出講、担当地域の教師会と連携しての日本語教育セミナーの開催など。
所在地 5-A, Ring Road, Lajpat Nagar-IV, New Delhi - 110024, India
国際交流基金からの派遣者数 専門家1名、指導助手1名
国際交流基金からの派遣開始年 2009年
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