世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) イマジネーションを教材作りに活かす

ケラニア大学
和田衣世

作品を発表している写真
作品を発表する
作品の数々の写真
作品の数々

 「これは‘さ’です。シンハラ語で‘凧’は‘サルンガラヤ’です。この凧の絵の中に‘さ’の字があります。‘サルンガラヤ’の‘さ’です。」「これは‘ま’です。シンハラ語で‘花’は‘マラ’です。この‘ま’が花に見えるでしょう。マラの‘ま’です。」

 これは日本語教授法の授業の一コマである。現在、わたしが派遣されているスリランカのケラニア大学人文学部現代言語学科では、1年生42人、2年生35人、3年生49人が日本語を主として選択し、勉学に励んでいる。現代言語学科ではこのほかにフランス語、ドイツ語、中国語、ロシア語、韓国語などが学べるが、日本語を選んだ学生がダントツに多い。スリランカでは中等教育で日本語を学ぶ学生が多く、本学科では、入学時点で全員既習者である。日本語科目として、文法、会話、文化、文学、聴解、漢字などが必修科目として開講されているが、日本語教授法もその1つで、現在、週2時間、3年生の必修科目となっている。

 さて、その日本語教授法の授業であるが、この授業では、学生たちが将来、日本語教師になったときに必要な知識や技術を紹介し、それを習得していくことを目標としている。冒頭のことば遊びのようなものは、「かなの教え方」というテーマで講義を行った際、学生が考えたものである。かなの教え方および覚え方の1つに「連想法」という方法がある。文字を視覚的イメージと結びつけ、母語で語呂合わせのようなフレーズを作って覚えていくという方法で、英語版のものはすでに市販の教材もあり、広く利用されている。この授業では、学生たちの母語であるシンハラ語で作らせてみた。一人で考えるのはむずかしいと思い、4~5人のグループに分け、各グループ、かなをとりあえず一つ選んで作ってみるよう指示したが、どのグループもかな一つどころの騒ぎではなかった。各グループ、次から次へと「作品」ができあがっていくのである。授業のおわりに各グループの代表者を前に出させて発表させたが、最終的にはその時間で発表しきれないぐらいの「作品」ができあがった。各グループ一つだけできればいいと考えていたわたしには、彼らのもつ想像力と創造力はうれしい誤算であった。もしゥしたら、彼らが学習者としてかなを学んだ際に、誰に教わることもなく無意識にこの学習ストラテジーを習得していたのかもしれない。

 講義形式の授業ではただおとなしく話を聞き、積極的な発言も少ない学生たちだが、ひとたび参加型の授業になるとこのように生き生きと活動し、自分たちの能力をアピールするというのも、わたしにとってはうれしい発見だった。この中で、いったい何人ぐらいの学生が将来、日本語教師として教壇に立つのだろう。たとえ教壇に立っても、ノン・ネイティブスピーカーの教師が持つ利点を活かし、学習者としての構えを忘れることなく、日本語教育に取り組んでほしいと願っている。

派遣先機関の情報
イ. 派遣先機関の位置付け
   及び業務内容
本講座はスリランカの高等教育機関の中でもっとも長い日本語教育の歴史を持ち、また、中級レベルのカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。(スリランカではまだ上級レベルの日本語講座を持つ学校教育機関はない。そのため、教育省からの依頼により、Aレベル試験(高校卒業試験兼大学入学試験)の問題作成・採点。シラバスなどにも講師が参画しており、中等教育レベルの日本語教育についても影響力を持っている。本講座には毎年、高校で初級日本語を学んだ学生が集まる。専門家は大学での授業、教務的なさ行、スリランカ人講師への指導、Aレベル試験の問題作成と採点への協力等を行う。
ロ.派遣先機関名称 ケラニア大学
University of Kelaniya
ハ.所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
人文学部現代言語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   一般学位コース1980年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1980年

(ロ)コース種別
主選択、副選択、課外、学外学位

(ハ)現地教授スタッフ
常勤0名、非常勤4名(うち邦人1名)

(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主選択で1年生:42名、2年生:35名、3年生:49名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ、日本文化への興味
(3) 卒業後の主な進路 日本語教師、一般企業、留学
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級を受験可能な程度
(5) 日本への留学人数 3名程度

ページトップへ戻る