世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) スリランカの日本語教師会

ケラニア大学
和田衣世

作品の数々の写真
教師会例会の様子

 スリランカには、日本語教師の勉強の場、お互いの情報交換の場として「スリランカ日本語教師会」がある。機関を超えた日本語教師の会としては唯一のものである。現在は約30名のスリランカ人教師および日本人教師がこの会に携わっている。10年ほど前からスリランカの公休日である満月の日(ポーヤデー)に、「ポーヤデーセミナー」として何らか勉強会は開かれていたが、会として正式に発足したのはここ数年のことである。現在は月に一回、基本的にポーヤデーか日曜日に例会が開かれている。スリランカの事実上の首都であるコロンボで行われているが、参加者は遠くキャンディやクルネーガラなどからやってくる教師もいる。

 参加しているスリランカ人教師のほとんどは、中等教育現場に所属する教師である。そのため、内容は中等教育のシラバスで指定されている『日本語初歩』およびこの国独自の日本語読解指定教科書、通称『ブルーブック』のための勉強会が中心となっている。スリランカ人教師が教える際に、実際に抱える疑問や誤解を日本人教師が解消し、アドバイスするというのが例会の基本的な形となっている。スリランカ人教師のほとんどは日本語力が日本語能力試験3級取得程度で、教える側の実力としては正直言ってまだまだと言える。また、中等教育の現場では同僚に日本人教師がいることはほとんどなく、このような機会を利用して月1回でもネイティブの日本語に触れるということも必要であろう。教授法もさることながら、それ以前に彼らの日本語力そのものをあげていくことも今後の課題である。

 また、各教育機関の日本語に関わるイベント情報や、国際交流基金公募プログラムの案内なども例会を通してひろく伝えられている。このような情報は、教師会が発足する以前は本当に限られた機関にしか流されていなかったと聞く。

教師会例会の様子の写真
食文化フェアー

 例会以外では、昨年度は初めて日本語教師会のイベントとして「食文化フェアー」を行った。前述の『ブルーブック』には日本の食べ物について書かれているが、実感としてわからない、という日本語を学ぶ学生たちの声があちこちで聞かれるのをうけ、日本人がふだんどんなものを食べているのか、もっとスリランカの人々に知ってもらおう、という趣旨のもとに開催された。もちろんコロンボにも数軒、日本食レストランがあるが、学生にとっては気軽に食べられるものではないのが現状である。2日間にわたって開催されたフェアーは好評で、2日間で約900名の来場者があった。てんぷらやそばなどの日本食試食コーナーをはじめ、箸を使ったゲームコーナーや日本食材展示が設けられ、学生の日本文化理解の一助になったことと思う。

 本来はスリランカ人教師が主体となって教師会を運営し、日本人教師はそのサポートにまわるというのが理想的な形だが、実際には、スリランカ人教師がリーダーシップを発揮するということはむずかしく、日本人が主体となって運営していかなければなりたたないというのが現状である。入れ替わりが激しく、いつ帰国するかわからない日本人会員にずっと頼っていては、積み重ねていけるものがなく、会として充実したものも得られない。今後は、自分たちで運営していくという意識を持ってもらうことが必要であろう。


派遣先機関の情報
イ. 派遣先機関の位置付け
   及び業務内容
本講座はスリランカの高等教育機関の中でもっとも長い日本語教育の歴史を持ち、また、中級レベルのカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。(スリランカではまだ上級レベルの日本語講座を持つ学校教育機関はない。そのため、教育省からの依頼により、Aレベル試験(高校卒業試験兼大学入学試験)の問題作成・採点、シラバスなどにも講師が参画しており、中等教育レベルの日本語教育についても影響力を持っている。本講座には毎年、高校で初級日本語を学んだ学生が集まる。専門家は大学での授業、教務的な作業、スリランカ人講師への指導、Aレベル試験の問題作成と採点への協力等を行う。
ロ.派遣先機関名称 ケラニア大学
University of Kelaniya
ハ.所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
人文学部現代言語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   一般学位コース1980年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1980年

(ロ)コース種別
主選択、副選択、課外、学外学位

(ハ)現地教授スタッフ
常勤0名、非常勤4名(うち邦人1名)

(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主選択で1年生:24名、2年生:42名、3年生:35名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ、日本文化への興味
(3) 卒業後の主な進路 日本語教師、一般企業、留学
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級を受験可能な程度
(5) 日本への留学人数 2名程度

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