世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 第1回スリランカ日本語教育セミナーと第20回スピーチコンテスト開催

スリランカ ケラニア大学
青沼国夫

任国スリランカにおいて、派遣先機関であるケラニア大学のシラバス・カリキュラム作成、講師教育のほか、教師会のアドバイザーやスピーチコンテスト、日本語能力試験の運営委員に携わりながら、スリランカ日本語教育の支援を行っています。今回はセミナーとスピーチコンテストの状況をレポートします。

第1回スリランカ日本語教育セミナー

セミナーで(教師会会長の挨拶)の写真
セミナーで(教師会会長の挨拶)

スリランカ日本語教師会は日本大使館の支援を得て、2008年2月13日、日本語教育セミナーを行いました。これまで、文化フェアーや国際交流基金(以下JFとする)の専門家による巡回セミナーなどを実施していましたが、スリランカ人が中心となった研究発表や実践報告は今回が初めてです。会場には約70名を超える参加者が集まり盛大な会となりました。

午前中は安田女子大学准教授、宮岸哲也氏を日本からお招きして基調講演を行って頂きました。テーマは「日本語からみたシンハラ語、シンハラ語からみた日本語」です。氏はかつてJF専門家としてスリランカ日本語教育の発展に貢献された功労者の一人であり、現在もシンハラ語研究を継続されており、第1回を記念するセミナーにふさわしい方でした。
午後は分科会です。「スリランカの日本語教育の概況」「教授法」「誤用分析」「教材分析」などのテーマで研究発表や実践報告、ワークショップが行われました。分科会終了後、再び一堂に会して各分科会の発表者の内容報告と参加者代表の感想が述べられました。これによって、参加できなかった分科会についても問題を共有することができました。最後は、参加者一人ひとりに研修受講証明書が手渡されました。

今回、スリランカ人教師が主導権をとった初めてのセミナーということもあり、セミナーの企画は筆者が立案しましたが、事前準備、会場設定や当日のプログラム運営など、セミナー実行委員は的確に分担して業務を遂行しました。このセミナーの成功は教師会メンバーの自信にもつながっており、今後益々の発展が期待できそうです。

第20回スピーチコンテスト

スピーチコンテストの風景の写真
スピーチコンテストの風景

「スリランカ日本語教育協会」は1974年に設立されたスリランカ最大の日本語教育機関(学校教育を除く)であり、通常の日本語授業の他、毎年、日本語能力試験を実施したり、スピーチコンテストを主催したりしています。1985年から継続して今日まで青年海外協力隊員の支援を受けて、スリランカの日本語教育をリードしてきています。

今年度は20回目のスピーチコンテストということで、特別行事も行われました。当コンテストは三つのカテゴリーに分かれてスピーチを競い合います。カテゴリーAは18歳以下の主に高校生を対象としたもの、カテゴリーBは大学生・社会人で日本滞在経験のないもの、カテゴリーCは年齢無制限で日本滞在経験のあるものです。それぞれのカテゴリーから優勝者を選びます。

1月末から応募を受け付けて、2月末にテープと原稿の審査が行われ、各カテゴリー上位者が選ばれて3月上旬の予備コンテストに出場します。この審査会を通過した各カテゴリー上位者3名(計9名)が、本大会で会場に集まった聴取者の前でスピーチを披露します。今年度の演題はA「わたしの将来の夢」「日本語を学んで思うこと」、B「日本とわたし」、C「日本での経験から学んだこと」でした。どのスピーチも迫力があり、甲乙つけがたいもので審査員を悩ませたようです。審査の結果がでるまで、特別企画として会場から選ばれた20名が壇上に上がり、日本についての○×クイズを行いました。最後まで残った一人に賞品が渡されました。

会場での盛り上がりとは裏腹に、今回のコンテストは、コロンボ市内の治安情勢の影響で例年より応募者が少なかったようです。スリランカ全体の日本語学習者は年々、増加しています。スピーチコンテストは日本語学習の成果を試す良いチャンスでもあります。コンテストの企画運営、広報などの工夫を凝らしながら、更なる発展を目指したいと思います。

充実した内容を展開しているスリランカ日本語教師会

盆踊りを踊った教師会のメンバーの写真
盆踊りを踊った教師会のメンバー

セミナーの成功のおかげか、今年の教師会は活発で内容も充実した例会を運営しています。
5月の例会は「受身の種類と用法」について男性教師が研究を発表し、それを受けて「受身の教え方」について参加者全員がグループに分かれて討議をして結果を発表、最後は「受身」のテーマで女性教師による模擬授業が行われ、みんなで話し合うというものでした。
9時から12時半の予定でしたが、多少時間をオーバー、しかしそれを長いと感じないほど充実したセミナーでした。シンハラ語の表現ではあまり使われない受身文を、だからこそ、各教師が問題意識を持ってそれに取り組み、知識情報を交換し合い、さらに考えを深めるという、すばらしい機会を得ることができました。
JF2006年の日本語教育機関調査ではスリランカの日本語教師は116名で、例会に常時参加する教師は現在30名程度です。このような素晴らしい内容のセミナーを行っている教師会に、さらに一人でも多くの日本語教師が参加できるようにするためにどうするかが今後の課題でもあります。


派遣先機関の情報
イ. 派遣先機関の位置付け
   及び業務内容
ケラニア大学の日本語講座はスリランカの高等教育機関の中で最も長い日本語教育の歴史を持ち、また中級レヴェルのカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。スリランカではまだ上級レヴェルの日本語講座を持つ学校教育機関はない。そのため、教育省からの依頼によりAレヴェル試験(高校卒業兼大学入学試験)の問題作成、採点などにもケラニア大学講師が参画しており中等教育の日本語教育にも影響力を持っている。本講座には毎年高校で初級を教えた学生が集まる。日本語教育専門家は大学での授業を始めとして、コース運営の支援、講師の指導、Aレヴェル試験の問題作成と採点の協力を行う。
ロ.派遣先機関名称 ケラニア大学
University of Kelaniya
ハ.所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
人文学部 現代語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   課外講座:1978年
一般学位:1980年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1980年

(ロ)コース種別
主選択 ・副選択 ・ 課外講座 ・ 学外講座 

(ハ)現地教授スタッフ
常勤1名(邦人0名) 非常勤4名(うち邦人1名)

(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生:38名 2年生:25名 3年生:43名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ・留学・日系企業への就職・日本語教師希望
(3) 卒業後の主な進路 日系企業・日本語教育機関に就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級受験可能な程度
(5) 日本への留学人数 2名程度

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