世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「日本語の日」

ケラニア大学
青沼国夫

 スリランカには高校が315校あります。そのうち日本語教育を行っている学校が45校です。その大部分はコロンボ市に集中していますが、キャンディー、クルネーガラ、ゴールといった地方都市でも、近年、日本語コースを開設する学校が増加してきました。そして、毎年、必ず、どこかの学校で行われているのが「日本語の日」です。「日本語の日」とは日本の文化発表会のような催しのことです。

 筆者は赴任以来、毎年、それらの開催校に招待されスピーチを行っています。今回はその中の一つ、コロンボから南へ車で1時間ほど行ったところにある、パナドゥラ・ロイヤル・カレッジ(男子校)の「日本語の日」を紹介します。

 学校に到着すると生徒たちに迎えられ(写真1)、伝統衣装のダンサーと古典楽器の演奏に先導されて会場へ向かいました(写真2)。プログラムは次のようになっていました。

プログラム

歓迎の旗を振ってくれる生徒たちの写真
歓迎の旗を振ってくれる生徒たち
会場入り口で:日本語の先生と日本語クラブの代表者の写真
会場入り口で:日本語の先生と日本語クラブの代表者

  1. 1.開会のあいさつ(日本語クラブ代表者)
  2. 2.オイルランプ点灯式
  3. 3.スリランカ国歌、日本国歌斉唱
  4. 4.パナドゥラ・ロイヤルカレッジ校歌斉唱
  5. 5.歓迎の踊り、(プロのダンサーの踊り)
  6. 6.日本の踊り、(中学生日本語学習者)
  7. 7.日本の歌「あおいあおいそら」
  8. 8.来賓代表挨拶(日本大使館文化担当官)
  9. 9.表彰式(第1部)
  10. 10. おりがみ
  11. 11. シンハラ古典舞踏と日本の歌
  12. 12. 主賓のスピーチ(JF専門家)
  13. 13. 表彰式(第2部)
  14. 14. ドラマ(スリランカの昔話)
  15. 15. 歌舞伎の紹介
  16. 16. 校長のスピーチ
  17. 17. 日本の踊り
  18. 18. 日本の歌「ありがとう、さようなら」

 これらのプログラムの進行は日本語クラブの学生によって英語と日本語で行われました。「日本語の日」の企画運営は学校ごとに異なり、1.日本語の先生が先導するもの、2.日本語クラブが中心になるもの、3.両者の連合でおこなうもの、とあります。この学校では3番目の方法でした。もちろん、日本語の先生は全面的に力を尽くしています。そして踊りは学校の科目にも入っているスリランカの伝統の踊りを指導している先生が学生に扇や傘を持たせて「日本的な踊り」として指導しているようです。

 「日本語の日」では各学校間の交流も行われており、近隣の女子高から日本語の先生と一緒に女子高生も招待されていました。スリランカは祝祭を大切にする国であり、そのような文化的な伝統が「日本語の日」の開催にも反映されているようです。

活動報告

1.ケラニア大学「言語学」の講義

 派遣先機関であるケラニア大学では今年度から一部システムの改訂がありました。日本語コースの所属する現代語学科では共通科目として「言語学」が必修になっています。これまで、この科目は言語学科が請負い、授業を行ってきました。今年度から各言語のコースが受け持つことになりました。日本語コースでは専任講師が学位取得留学中ということもあり、国際交流基金日本語専門家(以下「JF専門家」)が担当しています。従って、日本語基礎科目の中の「読解・作文」を含め、その他に「文学」や「教授法」と、バラエティーに富んだ科目を教えていますが、学生諸君もこれまでになかった日本語の「言語学」に新鮮な興味を示しています。

2.高校日本語教科書の開発

 さくらネットワーク中核事業としても承認された、ケラニア大学とスリランカ国立教育研究所(NIE)が協力して「高校日本語教科書Aレベルプロジェクト」が立ちあげられて1年が過ぎました。現在、教科書の執筆はほとんど終了して出版されるのを待っています。高校の日本語教育がこの十数年間、野放しにされ、NIEには外国語セクションがなくなっていました。それが昨年から動き始めシラバスの改訂を行うこととなりました。それに伴い、新しい日本語教科書の作成作業を行ってきました。この教科書開発スタッフにはケラニア大学の講師、シリマオ―高校教師、そしてJF専門家が加わっています。スリランカ人高校生が興味を持って学べ、活動が多く取り入れられた教科書です。この教科書を使用することで高校の日本語教育がさらに発展されることを期待しています。

3.教師会支援:第2回日本語教育セミナー、第2回高校教育巡回セミナー

 スリランカ日本語教師会は毎月1回、例会を開いて実践報告や研究発表を行っています。昨年度は参加者が40名前後だったのが、今年度は50名前後に増加しました。教室が手狭になり、新しい会場を探しているところです。そして、今年も教師会メンバーが実行委員となり、2大イベントを行いました。2009年8月16日、17日の両日はインドの国際交流基金ニューデリーJF日本文化センターから所長とJF専門家を迎えて「言語習得に基づいた教授法」の勉強を行いました。100名を超える参加者の来場があり盛大な会になりました。また、2010年3月19日にはコロンボから北へ2時間半行ったところのクルネーガラという街で高校生対象の日本語セミナーを行いました。地元だけでなく、近隣の町から約300名が集まり、朝から晩まで日本語学習に集中しました。教師のセミナー、学習者のセミナーとも、どちらも好評でスリランカの日本語教育は順調な伸びを見せています。


派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ケラニア大学
University of Kelaniya
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケラニア大学の日本語講座はスリランカの高等教育機関の中で最も長い日本語教育の歴史を持ち、また中級レベルのカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。スリランカではまだ上級レベルの日本語講座を持つ学校教育機関はない。そのため、教育省からの依頼によりAレベル試験(高校卒業兼大学入学試験)の問題作成、採点などにもケラニア大学講師が参画しており中等教育の日本語教育にも影響力を持っている。本講座には毎年高校で初級を終えた学生が集まる。日本語教育専門家は大学での授業を始めとして、コース運営の支援、講師の指導、Aレベル試験の問題作成と採点の協力を行う。
所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
人文学部 現代語学科
日本語講座の概要
沿革
 
講座(業務)開始年   課外講座:1978年
一般学位:1980年
国際交流基金からの派遣開始年 1980年

コース種別
  一般学位コース、選択コース、課外コース

現地教授スタッフ
  常勤2名(邦人0名) 非常勤6名(うち邦人2名)

学生の履修状況
 
  履修者の内訳   1年生:48名 2年生:51名 3年生:25名
  学習の主な動機 日本への憧れ・留学・日系企業への就職・日本語教師希望
  卒業後の主な進路 日系企業・日本語教育機関に就職
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級受験可能な程度
  日本への留学人数 2名程度

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