世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) スリランカでの日本語教育支援

ケラニア大学
黒田朋斎

 スリランカは北海道より少し小さい、人口約2000万人の国です。しかし、古くから中等教育機関、そして高等教育機関で日本語教育が取り入れられており、日本語学習が盛んです。現在は1万人を超える人が日本語を学習しています(国際交流基金2009年海外日本語教育機関調査速報値)。

ケラニア大学の日本語講師たちの写真
ケラニア大学の日本語講師たち

 その中でも私が赴任しているケラニア大学は、スリランカ日本語教育の中心となっている機関です。ケラニア大学の講師は、本学での教育に留まらず、Aレベル(中等教育12年生・13年生、17歳・18歳)試験(※1)作成と採点、シラバス・教科書の制作、高校教師研修など、中等教育機関の日本語教育にも強く関わっています。それに合わせ、私の業務も大学だけでなく、スリランカの日本語教育全体が対象となっています。

 私はまだ着任して約1カ月で、本格的な業務はこれから始まりますが、これから私の業務の中心となる3つの柱をご紹介します。

1. ケラニア大学における支援

 まずは所属機関であるケラニア大学での授業担当やシラバス整備、講師への助言などが第一の業務です。その中で私が重点的に進めていきたいのが、前任上級専門家が中心となって開発した中級読解教材『読χ話』を大学の読解教材として定着させることです。この教材は「コミュニケーション能力の育成」を目標におき、言語習得理論に基づいて作成されました。しかしながらまだ完成したばかりなので、現在は試行錯誤しながら使用している状況です。今後授業で使用したことのある教師が中心となって、使用法を検討して効果的な授業方法を確立し、この『読χ話』を大学の読解教材として定着させたいと考えています。

2. 中等教育機関における日本語教育支援

 次に重要な業務は中等教育機関における日本語教育コースの整備です。スリランカ中等教育機関の日本語教育は2009年から大きな変革期に入っています。

『スリランカ高校日本語Aレベル教科書―サチニさんといっしょ―』の写真
『スリランカ高校日本語Aレベル教科書
―サチニさんといっしょ―』

 まずAレベルでは、2009年にシラバス改訂があり、それに伴う新しい教科書も2010年に完成しました(右写真)。また、新シラバスに準拠したAレベル試験も2011年から実施されます。しかし、このような大きな改変に現場の多くの高校教師は対応しきれていません。それを解決するために国立教育研究所(以下、NIE)による高校教師研修が計画されています。直近では新教科書での指導法と新Aレベル試験に関する短期研修を2011年6月か7月に実施する予定です。この短期研修では、ケラニア大学講師が研修講師を務めることになっており、私もアドバイザーとして研修内容の助言を行っています。 また2012年の実施を目指して高校教師長期研修も計画しています。これはNIEと在スリランカ日本国大使館、国際協力機構(JICA)、そして国際交流基金(以下、JF)が協力して進めており、そのうちJFはシラバスおよびカリキュラムの立案を担当しています。前任上級専門家がすでにシラバスを作成したので、今後私がそれに基づいたカリキュラムを作成していきます。 さらにOレベル(中等教育10年生・11年生、15歳・16歳)でもシラバスが改訂されました。それに沿ったTeacher’s Instructional Manualの作成もNIEから要請されています。これも私の重要な業務の1つとなります。

3. スリランカ日本語教師会支援

 3つ目の業務の柱にスリランカ日本語教師会(以下、教師会)運営支援があります。

 教師会は毎月定例会を開催していますが、その定例会では毎回3名が実践報告などの発表をしています。また毎年8月には日本語教育セミナーを実施しています。教師会ではこれから日本語教育セミナーに向けて本格的な準備に入ります。このセミナーでは外部から講師を招へいして基調講演をしていただいているほか、午後には3グループに分かれて分科会を開き、9名の発表者が1時間程度それぞれのテーマで発表しています。

 定例会や日本語教育セミナーなどの運営の中心となるのは会長以下、教師会コミッティーメンバーです。JF専門家もコミッティーのメンバーとなっています。現在、教師会は現地教師によってほぼ自立的に運営されていますが、これらの教師会活動がスムーズに運営されるように助言や支援を行うことが3つ目の重要な業務です。

今後の活動に向けて

 私はまだ着任したばかりで業績は何も残していませんが、ここに記した業務を確実に遂行していきたいと考えています。それがスリランカの日本語学習者の学習環境改善につながっていくと思います。

 来年度はここに書いた業務の成果をぜひご報告したいと思っています。

※1 Aレベル試験:高校卒業兼大学入学試験


派遣先機関の情報
派遣先機関名称
University of Kelaniya
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケラニア大学の日本語講座はスリランカの高等教育機関の中で最も長い日本語教育の歴史を持ち、また中級レベルのカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。スリランカではまだ上級レベルの日本語講座を持つ学校教育機関はない。そのため、教育省からの依頼によりAレベル試験(高校卒業兼大学入学試験)の問題作成、採点などにもケラニア大学講師が参画しており中等教育の日本語教育にも影響力を持っている。本講座には毎年高校で初級を終えた学生が集まる。専門家は大学での授業、コース運営の支援、講師の指導のほか、中等教育の日本語教育の支援も行う。
所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
人文学部 現代語学科
日本語講座の概要
沿革
 
講座(業務)開始年   課外講座:1978年
一般学位:1980年
国際交流基金からの派遣開始年 1980年

コース種別
  一般学位コース、選択コース、課外コース

現地教授スタッフ
  常勤2名(邦人0名) 非常勤6名(うち邦人1名)

学生の履修状況
 
  履修者の内訳   1年生:50名 2年生:48名 3年生:49名
  学習の主な動機 日本への憧れ・留学・日系企業への就職・日本語教師希望
  卒業後の主な進路 日系企業・日本語教育機関に就職
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級受験可能な程度
  日本への留学人数 2名程度

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