世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 様々な形の日本語教育支援 ―パリ日本文化会館日本語事業―

国際交流基金パリ日本文化会館
近藤裕美子

はじめに

 日本でも、メディアの映像などで目にする機会の多い、パリのエッフェル塔。そのすぐ近くにある、ガラス張りの立派な建物。それがパリ日本文化会館(以下、MCJP)です。1997年に設立されてから、コンサート、公演、映画、展示、各種文化教室など、様々な催しが一年を通じて行われ、日本関係者、日本好きの人たちの集まる空間となっています。そのような日仏文化交流の一役を担っているパリ日本文化会館内での日本語事業は、本格的に3年前からスタートしました。

多様な日本語学習者

 フランスの日本語教育の歴史は19世紀半ばまでさかのぼりますが、大部分が高等教育機関で行われてきました。しかし、その後日本語教育はどんどん拡大し、現在のフランス国内の日本語学習者15000人以上(2006年度調査)と西欧一位となっています。その中には、もちろん大学で研究のために勉強する人、仕事で日本語必要としている人も多数いますが、それ以外にも、マンガ・アニメが大好きな子供たち、武道や日本文化に興味があり、趣味として日本語を勉強する人、日本旅行のために少し日本語を習いたい人など様々な目的に日本語を学んでいる人がいます。また、継承語として日本語教育の重要性も拡大しつつありますし、中等教育レベルでの日本語教育の普及も今後の大きな課題の一つになっています。この多様性がフランスの日本語教育の強みでもあり、面白さでもあります。

多様な日本語教育支援

 学習者が多様であれば、日本語教育に従事する人も多様であり、様々な日本語教育支援が必要とされます。それは、ここでの日本語教育にたずさわる醍醐味であると同時に難しさにもつながります。実際、MCJPの日本語教育専門家としてのアドバイザー業務も多岐にわたり、ここで必要とされる日本語教育支援とは何か、自分に何ができるのか、自問自答しながら、日々、次々と目の前に来る業務を日本語班のスタッフとともにこなしています。以下、現在行っている主な業務内容です。

エキスポ・ラングにて(日本語学習情報を求める来場者)の写真
エキスポ・ラングにて
(日本語学習情報を求める来場者)

教師支援

 MCJPで行っている日本語教師研修会実習講座(3ヶ月間10回コース)ほか、教師相談への対応、フランス日本語教師会の勉強会やシンポジウムでのワークショップ、など

学習者支援

 全仏スピーチコンテストの開催、日本語能力試験の実施(フランス国立東洋言語文化研究所(INALCO)の生涯学習センターと共催)

日本語普及活動

 日本語入門デモンストレーション「日本語で遊ぼう」(月1回)、「日本語中級講座」(全8回、教師研修会における実習授業)、「日本語上級講座」(全2回)等の会MCJP内での各種イベント。エキスポ・ラング(言語博覧会)への出展、欧州言語の日での日本語入門講座の実施

情報収集

 日本語教育機関訪問、訪問者との面談など。

広域支援

日本語中級講座の受講生と実習生の写真
日本語中級講座の受講生と実習生

 欧州各国からの日本語教師を対象とした欧州日本語教師研修会の実施(7月上旬、1週間×2回、2007年は、14カ国から38名が参加)
  隣国の教師会からの要請に応じて、セミナーへの出講などの支援。

 このように、MCJPの日本語事業、アドバイザー業務の幅は広く、そして一つ一つが非常に大切であり、またこれ以外にもの日本語教育のためにすべきことは山積みです。着任して半年、まだまだ自分の立ち居地や目指す方向が明確になっていない状況ですが、前任者が開拓してきたMCJPの日本語事業をうまく引き継ぎ、他のスタッフと一緒にさらに発展させていくことが、私の任務であると認識しています。

おわりに

 フランス国内の日本語教育の歴史は長いですが、国際交流基金がフランスの日本語教育に直接、積極的に関わるようになったのは、つい最近のことです。歴史の重みを感じながら、新しい流れに対応していくため、今後も様々な支援が必要とされるでしょう。一人ひとりの先生のお手伝いをすることがその後ろにいる多くの日本語学習者の支援につながり、一つ一つのイベントを実行することが、日本語の普及につながる。それにたずさわることも日本語教育の一つの形であると実感しながら、一歩でも近づけるよう試行錯誤しています。奮闘はまだまだ続きます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
MCJPでは設立以来幅広く文化事業を行っているが、日本語事業は、2005年に本格的にスタートした。現在は、研修会や教師相談などの教師支援、スピーチコンテストなどの学習者支援、日本語入門講座などの日本語普及事業、日本語教育に関する情報提供、情報収集などを行っている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Cultural Institute in Paris
ハ.所在地 101 bis, quai Branly,75740 Paris Cedex 15 France
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家1名、日本語教育指導助手1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 2005年

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