世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 土曜日も日本語を!

国際交流基金ケルン日本文化会館
磯村一弘 三矢真由美

入門体験コースの写真
入門体験コース
日本語講座のチラシ画像
日本語講座のチラシ

 2011年度から、ケルン日本文化会館(以下、会館)は大きく変わりました。いわゆる「知日派」と呼ばれるごく一部の日本びいきや日本学研究家だけではなく、アニメやJ-POPなどを通じて日本に漠然とした興味を持っている人たちや、現地で日本語教育に携わっている人たちなど、より多くの一般の人に会館を広く利用してもらうことが大切と考え、こうした人たちをどうしたらもっと会館に呼べるのか、試行錯誤しています。その一環としての最も大きな改革は、これまで閉館日だった土曜日を、4月から開館するようになったことです。

 第一に、まず土曜日にも日本語講座を開講するようになりました。会館の日本語講座は基本的に平日の夜に開催されていて、「本コース」では全部で150名以上の受講生が日本語を学んでいます。土曜日の講座はこれとは別に、本コースの受講生も、外部の一般の人も、気軽に日本語が学べる機会を提供することを目指しています。土曜日の午前は、これまで日本語を勉強したことがない人が日本語学習を体験するための「入門体験コース」です。このコースはこれまでにも実施していましたが、年に二回のみ、しかも二週間のまとまった単位で登録する必要がありました。しかし、今回の土曜開館に合わせて、「挨拶」「文字」「数字・買い物」など5種類のテーマをそれぞれ独立した授業として提供し、自分の都合のいい日程や興味のある内容によって、単独で自由に選択受講できるようにしました。「ちょっと日本語をやってみよう」と思ったら、土曜の午前ならいつでも会館に立ち寄って、事前準備や宿題などの心配なく、日本語学習を始めることができるシステムです。午後は、文法など特定のトピックを集中的に扱う「テーマ別コース」や、日本語母語話者ボランティアの方々と自由会話ができる「日本語しゃべりーれん」などを開催しています。今後は、旅行会話や若者言葉、アニメ、マンガ、映画などのより幅広いテーマを扱ったり、また日本語だけでなく、日本の年中行事や伝統文化を体験できるような「文化体験講座」なども実施していく予定です。

教師研修の写真
教師研修

 第二に、土曜日の新たなイベントとして、「ケルン日本文化会館日本語教師研修会」がスタートしました。これまで、ドイツにおける日本語教育の支援としては、アドバイザーが各地方の教師会の研修会に招かれ、出張して講義やワークショップを行うという形が主でした。今年度からはこれだけでなく、会館を会場として、現地で日本語教育に携わる方々を対象とした研修会を定期的に開催していく予定です。この研修会では、日本語教育の有益な情報をケルンから積極的に発信していくと同時に、日本語教育に携わる多くの方々に、ケルン日本文化会館まで足を運んでいただく機会を作り、会館の存在意義をもっとアピールするというのが狙いです。第一回目の研修会は、5月14日に「音声・文法・語彙」というテーマで行われ、ケルン近郊だけでなく、遠くはフランクフルトや北ドイツから電車で何時間もかけて来てくださった先生も含め、約30名の日本語教師の方々に集まっていただき、成功裏に終えることができました。

新着図書の写真
新着図書

 第三に、会館の図書館も土曜日開館を始めました。一部の日本研究者だけではなく、より多くの日本語学習者や日本語の先生たちが足を運んでくれるように、さまざまなジャンルの本をたくさん置くことにしました。まず、ポップカルチャー系の雑誌です。「少年ジャンプ」「少年マガジン」「non-no」「Number」「アニメージュ」「日経エンタテインメント」などを通じて、日本の最新事情に触れることができます。次に、日本語教育関連の図書です。特に日本で最近発行されたものを中心に揃えました。日本語教師の方は、ここで最新の日本語教材や日本語教育参考書などを手にとって見ることができます。そして最後に、マンガの単行本です。「NARUTO」「ONE PIECE」「BLEACH」といった、海外の日本語学習者にとって定番の作品から、「風の谷のナウシカ」「ドラゴンボール」「クレヨンしんちゃん」のような古典的名作まで、幅広く収集して提供しています。「日本のマンガのオリジナルを日本語で読みたい」というモチベーションを持つ学習者だけでなく、「学生の話題についていけないので、マンガに関する基本的な知識を仕入れておきたい」のように感じている日本語教師の方々にも役に立つことと思います。

 以上のように、できるだけ幅広い層の方々に、できるだけ多く足を運んでいただけるよう、会館は新しく動き出しています。「ドイツで日本語や日本文化に興味を持ったら、まずはケルンに行こう」と言ってもらえるよう、これからもいろいろ考えていきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Cultural Institute in Cologne (The Japan Foundation)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケルン日本文化会館はドイツ語圏における日本語普及事業の拠点として、日本、日本語、日本文化の理解促進を目的に多様な活動を行っている。1985年から一般社会人対象の日本語講座を開講しており、現在ゼロ初級から上級まで約180名が日本語を学んでいる。通常の日本語コースだけでなく、日本文化体験コース、テーマ別コースなども開講し、様々なニーズに対応している。日本語講座運営の他に、研修会の企画・開催を通した教師支援、日本語能力試験などによる日本語学習者の支援、日本語教育に関する情報の収集と提供などを行っている。近年では地元機関と協力して行う各種催し物を通して新規学習者の発掘や広報にも力を入れている。
所在地 Universitaetsstr 98, 50674 Cologne, Germany
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年 1985年

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