世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アイルランドの日本語教育

アイルランド教育科学省
茅本百合子

高校で

 アイルランドの高校で日本語が教えられるようになって9年経ちました。2004年からは、高校卒業時に受ける資格試験(Leaving Certificate)で日本語が選択できるようになり、日本語は、少しずつですが高校の科目として認められつつあります。国際交流基金から派遣された日本語教育専門家は日本語アドバイザーとして、高校で日本語を教えている教師の支援をするため、学校訪問をしたり、適切な教材を考えたり、教師対象のセミナーを開催したりしています。

学生の書道作の写真
学生の書道作品

 アイルランドの中等教育は中高一貫教育ですが、中学3年終了時にJunior Certificateというテストを受けて一区切りがつきます。そして、高校1年生では将来を見極めるべくいろいろな分野の科目を選択します。いくつかの学校では、日本語を科目のひとつとして採用し、生徒はそこで日本語や日本文化を学びます。そして、その中で興味を持った生徒は高校2年生でも日本語を選択し、高校3年生で上述のLeaving Certificateというテストを受けます。高校1年生の日本語クラスでは、書道をしたり抹茶を味わったりすることができるので、生徒にとっては未知の体験となり、毎年たいへん人気があります。教育科学省ポスト・プライマリー・ランゲージ・イニシアティブの予算等の関係で、限られた学校でしか日本語が開講できないのが残念です。

 高校で日本語を教えている教師はアイルランド中でたった十数名しかいません。一人が何校も掛け持ちをしていますが、アイルランド全土でも40校ほどしか教えることができません。日本語教師は日本人もアイルランド人もいますが、熱心な教師が多く、アイルランド日本語教師会の主催する年3回の研修会に参加し、日本語能力の向上を目指したり、日本語の教え方を学んだりしています。また、フランスのアルザスで行われるヨーロッパ在住日本語教師のための研修や国際交流基金日本語国際センターで行われる研修にもアイルランドから毎年参加しています。

大学で

 アイルランドには7つの大学がありますが、そのうち、Dublin City University, University College Dublin, University of Limerick の3校に日本語のクラスがあります。その中でもDublin City Universityは新しい大学ではありますが、日本語に関しては1986年に日本語講座を開設した最古参で、日本語を主専攻にできる唯一の大学です。日本語アドバイザーのオフィスもこの大学内にあります。一方、University College Corkでは2009年度に新たにアジア研究の修士課程が開設されます。そこで日本コースを選ぶ学生は日本語を学習することになります。これらの大学の日本語コースにも日本語アドバイザーは支援・協力をします。

語学学校でも、地域でも

日本語教師セミナーの写真
日本語教師セミナー

 ダブリンを中心に民間の語学学校でも日本語を教えているところがあります。地域のコミュニティースクールで夜間に日本語コースを取っている人々もいます。家庭教師をつけて日本語を学習している高校生や成人もいます。人数は少ないですが、このようにさまざまな場所で日本語を勉強している人、教えている人がアイルランドにはいます。日本語アドバイザーはすべての日本語教師と学習者を支援しています。小学校や老人ホームで日本紹介や折り紙イベントをしたいという依頼が来れば、ボランティアの日本人を紹介したり、着物を着てイベントを手伝ったりもします。

日本語能力試験

 2009年にはダブリンで日本語能力試験が初めて実施されます。今までアイルランドでは実施されていなかったので、受験者はロンドンまで行って受験していました。しかし、2009年からダブリンで受験できることになり、アイルランドの日本語教育関係者はみな喜んでいます。

 少しずつですが、日本語はアイルランドで広がっています。日本語アドバイザーは、日本を知り、日本語を学習するアイルランドの人々がさらに増えることを期待して、日々活動しています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
派遣先機関、Post Primary Languages Initiativeは、アイルランド教育科学省のもとNational Development Planの予算で2000年に設立された。中等教育機関で外国語として教えられていたフランス語とドイツ語に加え、新たに4つの外国語(日本語、イタリア語、スペイン語、ロシア語)を促進・支援している。国際交流基金日本語教育専門家は日本語教育アドバイザーとして高校の日本語教育支援を中心に、アイルランドの日本語教育全般のサポートを行っている。
ロ.派遣先機関名称 ポスト・プライマリー・ランゲージ・イニシアティブ(アイルランド教育科学省)
Post-Primary Languages Initiative (Department of Education and Science)
ハ.所在地 Adviser's office: SALIS Dublin City University Dublin 9
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家 1名
ホ.日本語教育専門家派遣開始年 2005年~2007年、 2008年~

ページトップへ戻る