世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アイルランドの日本語教育2010

アイルランド教育科学省
茅本百合子

 アイルランドに派遣されている日本語専門家は、中等教育機関(中学・高校)で新しい外国語を普及する教育科学省内のPost-Primary Languages Initiativeという部署で、日本語アドバイザーとして働いています。アイルランドの中等教育では、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語などが中学1年生から選択できますが、他にも選択肢を、ということで、日本語やロシア語が導入されました。日本語は中学からではなく、高校から始めます。高校の2年間、あるいは3年間で試験を受けるようになるまでには、生徒も教師も一生懸命日本語に向き合わないといけません。日本語専門家は、日本語学習者と日本語教師が効率よく、そして、楽しく日本語を学習したり教えたりするサポートをしています。

Rathdown Schoolの日本のファッション・プロジェクトの写真
Rathdown School
日本のファッション・プロジェクト

 いくつかの高校では1年生が日本文化の授業で日本を楽しんでいます。この高校1年生のコースは学校によって様々で、1年かけてじっくり学習する学校や、数週間だけ学習する学校などがありますから、内容も様々です。写真の高校生は、日本のファッションを調べてプロジェクトとして発表しました。アイルランドの高校生は日本のファッションや文化にとても興味があります。日本語専門家は、高校を訪問して、そこの日本語教師とともに日本文化を紹介することがあります。日本語を教えていない小学校や施設などから、日本大使館などを通じて要請があると、日本文化紹介のためにそれらの学校や施設を訪問することもあります。日本文化への興味が後の日本語学習につながることを信じて、できるだけ多くの機関に出向くようにしています。

アイルランド日本語弁論大会の写真
アイルランド日本語弁論大会

 アイルランドでは、日本語教師会(Japanese Language Teacher Ireland = JLTI)が主催する日本語弁論大会が毎年開かれていて、2010年は第8回大会が行われました。今年は、小学生1名を含む、高校生、大学生、社会人、総勢30名ほどが日本語のスピーチをしました。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の父親がアイルランド人でハーンもダブリンに住んでいたという縁で、今年は、特別賞の「ハーン賞」が作られました。

 アイルランドでの日本語教育はまだ歴史が浅く、劇的に学習者が増えているというわけでもありません。日本に興味のある学生がいても、教師が足りず、日本語のクラスが成り立たない場合があります。高校でも、日本語が卒業試験の1科目であるという認識がまだ薄いように感じます。アイルランドの大学を出て日本語教師になる人材も限られています。幸いにもアイルランドからJETプログラムで多くの若者が日本に行き、英語を教えています。そのJETから帰った人たちが教職課程を修了して教師になることがあります。その人たちが日本文化や日本語をアイルランドの若い生徒たちに教えると、とても効果があると思います。そのために、日本語専門家は日本に関係のあるアイルランドの人々とコンタクトを絶やさず、日本語教育の支援と新規開拓に力を注いでいます。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ポスト・プライマリー・ランゲージ・イニシアティブ(アイルランド教育科学省)
Post-Primary Languages Initiative (Department of Education and Science)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先機関、Post Primary Languages Initiativeは、教育科学省のもとNational Development Planの予算で2000年に設立された。中等教育機関で外国語として教えられていたフランス語とドイツ語に加え、新たに4つの外国語(日本語、イタリア語、スペイン語、ロシア語)を促進・支援している。国際交流基金派遣専門家は日本語教育アドバイザーとして高校の日本語教育支援を中心に、アイルランドの日本語教育全般のサポートを行っている。
所在地 Adviser's office: School of Applied Languages and Intercultural Studies, Dublin City University, Dublin 9
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2005年~2007年、 2008年~

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