世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アイルランドの日本語教育2011

アイルランド教育省
茅本百合子

 2008年にアイルランドに赴任して2011年で3年目を迎えました。その間、日本語アドバイザーとしてアイルランド国内の日本語教師への支援を続け、日本語学習者へのアドバイスも含め、アイルランドの日本語教育を盛りたてています。毎年、少しずつですが、日本語を新規に選択科目として取り入れる高校が出てくる中、新しい日本語教師が日本語を教え始めています。アドバイザーは高校の現場やセミナーなどで新人教師の支援をしています。日本語学習者の数は他の国に比べると本当に少数ですが、それでも、高校では日本語は選択科目ですから、高校生たちはほかの科目と同じように、真面目に教室で授業を受け、テスト勉強もします。

そのとき日本語を選択している高校生は

東日本大震災の募金活動のための折鶴の写真
東日本大震災の募金活動のための折鶴

 3月11日に未曾有の地震・大津波が東日本を襲い、その出来事はここアイルランドにも大きなショックを与えました。日本語を学習している生徒たちは、誰に言われることもなく、翌日から自分たちでチャリティーイベントを計画し、募金活動をしました。単に選択科目として日本語を学習しているという気持ちでは、このような迅速な行動はできないと思いました。1校だけではありません。あちこちの高校でほとんど同時に次々と募金活動が始まりました。私はこのような高校生に大変感動しました。生徒たちが一番に思いついたのは「折鶴」でした。みな、広島の佐々木貞子さんの話を知っています。折鶴を折ってその祈りがみなに伝わればいい、募金をしてくれた人々に折鶴を渡すため、折鶴をひたすら折り続けました。

日本語アドバイザーの別の仕事

ダブリンシティ大学の応用言語文化学科のある建物の写真
ダブリンシティ大学の応用言語文化学科のある建物

 日本語アドバイザーとして派遣されているのはアイルランド教育省ですが、常駐する部屋はダブリンシティ大学の中 にあります。主に中等教育機関の日本語教師を支援するのがアドバイザーの仕事ですが、教育省とダブリンシティ大学の関係もあり、大学の講義を1つ受け持っています。それは、大学2年生の「日本文化」という講義で、受講する学生の中には3年次に日本に1年間留学する学生も含まれています。日本文化について文化人類学的、社会学的見地から講義をしますが、アイルランドの大学生に日本文化を肌で感じてもらおうと、生の日本文化を体験してもらうことを心がけています。

 日本文化に関してですが、日本と日本語をアイルランド国民に広く知ってもらうため、小中学校の文化イベントやダブリン市民の異文化イベントには積極的に参加しています。学校からの要請で、または時にはこちらから申し出て、日本と中国の違いがわからないような児童生徒に日本の地理や風土を説明したり、日本の折り紙やアニメを紹介したり、簡単な日本語を教えたりします。ダブリン市では今年2回目になるExperience Japanという催し物を開催しました。日本のことをあまり知らない市民も日本のことが大好きな市民も来場して、ダブリン在住の日本人とふれあい、和太鼓、ソーラン節、書道、折り紙などの日本文化を体験しました。これら一連の日本文化紹介は、将来的には日本語学習者の増加につながるものと信じています。今後も日本語学習の普及に努めて行きたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アイルランド教育省 (ポスト・プライマリー・ランゲージ・イニシアティブ)
Department of Education and Skills, Ireland (PPLI: Post-Primary Languages Initiative)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先機関、Post Primary Languages Initiativeは、教育省のもとNational Development Planの予算で2000年に設立された。中等教育機関で外国語として教えられていたフランス語とドイツ語に加え、新たに4つの外国語(日本語、イタリア語、スペイン語、ロシア語)を促進・支援している。国際交流基金派遣専門家は日本語教育アドバイザーとして高校の日本語教育支援を中心に、アイルランドの日本語教育全般のサポートを行っている。
所在地 Adviser's office: School of Applied Languages and Intercultural Studies, Dublin City University, Dublin 9
PPLI office: Marino Institute of Education, Dublin 9
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2005年~2007年、 2008年~

ページトップへ戻る