世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 転換期の日本語講座(2004)

ローマ日本文化会館
衣笠 秀子

1.イタリアの日本語学習者

 イタリアの日本語学習者数はおよそ6500人、その半分以上は大学生です。学習動機は「日本への憧れ・興味」が主なものでしょうか。大学生には谷崎、川端、三島など日本文学の愛読者から、アニメ・マンガのファンまでいて、憧れ・興味の対象はさまざまです。
 ここ数年「ジャッポーネ」の人気は高く、日本語を専攻する学生の数も年々増加し、大学では1クラス100人近い学生が大教室で授業を受けるといった状況も続いています。また、最近では高校の課外授業(年間30時間程度)で日本語に触れる高校生の数が増え、学習者の2、3割を占めるまでになっています。このような学習人口の拡大が、これからのイタリアの日本語教育にどんな変化をもたらすのか、先が楽しみです。

2.日本語講座

(1)授業

講座の受講生たちの写真
講座の受講生たち
日本人ビジターにインタビューする受講生の写真
日本人ビジターにインタビューする受講生

 ローマ日本文化会館日本語講座では1986年に日本語教育専門家の派遣が始まり、常設コースが開講されてから今年で18年になります。大学以外の日本語教育機関として、また中級以上のレベルまで体系的に学習できる稀少機関として、イタリア人に広く日本語学習の場を提供し、数多くの修了生を送り出してきました。
 当講座は、4年間で初級から中級を終えるコース<初級I・II、中級I・II(各年間180時間)>と、初級者のみ、及び中級修了者を対象とした1年コース<総合、会話クラス(年間120時間)>を開講しており、今年度は6クラス、およそ100名の受講生が学んでいます。
休み時間にはイタリア人らしく手を広げ、大声でおしゃべりしている学生が、いったん教室に入ると控えめで雰囲気まで日本人のようになるのは、見ていておかしいほどです。「ことばを学ぶことは、まさにその文化を吸収することだ」と感じる瞬間です。
 イタリアでは教室外で日本語を使う場面が非常に限られ、学生はせっかく学んだ日本語を実際に使うチャンスに恵まれません。そのため、授業時にアウトプットを増やす教室活動を多用したり、生きた言語使用を促すため、様々な試みを行ったりしています。今年度は日本人のビジターを招いてインタビューを行うセッションや、教室内での3分間スピーチなど、学生が主体となって能動的に日本語を話す場を設定しました。自分を表現できる機会を得て、学生は水を得た魚のごとく輝いていました。
 一般的に、イタリアの大学における日本語教育は精読、文法理解に重点がおかれ、限られた時間の中で「話す」練習まではむずかしいというケースが多いようです。当日本語講座では、実際に「使える日本語」が身につくよう、会館講座ならではの授業を常に心がけています。

(2)今後の課題

 今年度から講座受講生以外の日本語学習者のために、短期コースも実施する予定です。今後はさらに、上級者向けの新聞購読クラス、中級者・初級者向けのドラマ・アニメ視聴クラスなど、定期的にインテンシブコースを開催できないかと検討しているところです。日本語教育の多様化するニーズに応えつつ、日伊文化交流の一翼を担う役割を果たしていければと望んでいます。

3.専門家の業務

(1)日本語講座の業務

 専門家の業務は講座運営、コースデザイン、授業担当、教材作成、非常勤講師への指導が中心です。今年度は、長く使い続けてきたカリキュラムのアップグレードを最重要課題として、より充実したコース作り、教材整備に力を注いでいます。同時に、報告者の持てるノウハウを非常勤講師に伝え、講座全体の教授力アップを図っています。また、日々の教案指導、授業活動のアイディア提供などとともに、非常勤講師を対象とする定期的な勉強会も始めています。

(2)講座以外の業務

 学習者数の増大にともない、新規に日本語講座を開催する機関、担当者から相談を受けることも出てきました。その際には、コースデザイン、教材、教室活動などに関する助言を行っています。日本語教育専門家の業務は今や、世界的に「学習者支援から教師支援、日本語教育ネットワーク支援」という方向に進んでいます。「どこで何が必要とされているのか、何ができるのか」を把握して、求められている支援を適切に行なうためには、まず当地の教育機関における日本語教育の現状を知ることが必要です。そのため、今後はイタリア国内及び兼轄国の様々な教育機関を訪問して、日本語教育の実態、問題点、課題を調査し、日本に向け情報提供していきたいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
イタリアでは日本語専攻の大学生以外、日本語学習の場が少ない。ローマ日本文化会館の運営する日本語講座は、一般の大学生、高校生、社会人に学びの機会を提供している。また、中級以上の日本語を学習できる数少ない機関の一つでもある。同講座は初級から中級まで4年間連続したコースと、中級修了者向け、および初心者向けの1年コースを設けている。派遣専門家は、日本語講座の運営、コースデザイン、教材作成、教師指導を行う。その他、日本語教育関係者に対するコンサルティング、イタリアの日本語教育機関訪問、非常勤講師のための勉強会なども担当している。
ロ.派遣先機関名称
The Japanese Cultural Institute of Rome
ハ.所在地 Via Antonio Gramsci, 74 000197 Roma, ITALIA
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1964年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1986年
(ロ)コース種別
4年コース(初級・中級)、1年コース(総合・会話)
(ハ)現地教授スタッフ
常勤1名(邦人)、非常勤6名(全員邦人)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   4年コース各学年20名、総合15名、会話25名
(2) 学習の主な動機 日本への興味・憧れ、教養として、日本研究のため、など
(3) 卒業後の主な進路 不明(コース修了のみ、卒業はない)
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験3級合格以上、2級合格未満
(5) 日本への留学人数 なし

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