世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) イタリアの日本語教育事情

ローマ日本文化会館
衣笠 秀子

イタリアの日本語学習者

 イタリアで日本語教育が始まったのは19世紀後半。百年余りを経た現在、その学習者数は6500人を超えています。ここ数年、大学の日本語学科、日本語選択科目の新設が相次ぎました。高校でも、課外授業の日本語コースが新たに数十校で開始されるなど、若い世代の学習者が急増しています。日本語能力試験受験者数を見ても2004年度は362人と、ここ十年で倍増しています。

日々の仕事

 イタリアに派遣されている日本語教育専門家は一名です。したがって、その仕事は派遣先ローマ日本文化会館の日本語講座の運営、授業担当から教師支援、日本語教育機関訪問、隣国へのセミナー出講まで多岐にわたります。以下に日々携わっている仕事を紹介します。

1)日本語講座

 日本語講座は週2回(各3時間)の4年制コースと週2回(各2時間)の初級会話1年コースがあり、100人ほどが在籍しています。構成は社会人と学生が半々です。やはり「マンガ・アニメ世代」の若者が目立ちます。とにかく日本に興味があって、日本語が大好き。しかし、陽気な彼らの学習姿勢は驚くほどストイックです。ラテン語学習の基盤があるからでしょうか、日本語を学ぶことを自己の内面の充実をはかり、思考回路を鍛える手段と捉えているかのようです。そのひたむきさ、純粋さに、教師として心動かされることもしばしばです。
 今年度から中上級レベルを対象とした特別講座を新規開講しましたが、その企画・運営と授業の一部も担当しています。2005年上半期(1~6月)は「通訳法」「新聞講読」「映画鑑賞」などの4つのプログラムを実施しました(週1回2時間×5回程度)。次年度も中上級レベル学習者の期待に応えるべく、新しいコースの提供を計画しています。

陽気な学生たちの写真
陽気な学生たち

授業風景の写真
授業風景

2)教師支援

大学、語学学校、その他

 当館のホームページを見たイタリア在住の日本人から「日本語を教えることになったが、どのように教えたらよいか」という相談がよく寄せられます。専門学校、高校など教える場に合わせて、コースデザインや教室活動のアイディアなどアドバイスしています。
初心者だけでなく、語学学校や大学で教える現役教師からも相談も受けます。教室活動など実践的なことに関して情報交換をする場が限られるため、試行錯誤しながら孤軍奮闘している教師がまだまだ多いのです。面談や電話、メールを通じて、できる限り相談に答えています。

中等教育

中等教育では、日本語が正規授業として認められている高校はまだ2校と少ないのが現状ですが、北イタリアにある州では、2年前から広域的な課外授業日本語コースが始まりました。今年度は42校で34人の講師が700人余りを対象に初級日本語を教えています。同州から「教師向け研修会」を依頼され、その開催準備を進めています。今後、高校の日本語コースは数が増えると予想され、日本語が正規科目として認められるかどうかも含めて、その動向が注目されます。

勉強会

 日本語講座の講師向け勉強会を立ち上げて、2年目を迎えました。最近は大学講師も参加しての会に発展しつつあります。講師が文法や教授法についてお互いに意見を述べ合い、話し合う機会は本当に貴重です。その体験を通して、教師が大きく意識を変化させていく現場に立ち会うのはうれしい瞬間です。

国を越えて

 教師支援はイタリア国内だけに留まりません。要請があれば、近隣国に出向くこともあります。6月には「ギリシャ日本語教師会セミナー」に出講し、アテネで日本語を教える先生方と話し合う機会に恵まれます。また、マルタ共和国というイタリアの隣国とも縁があり、当地で日本語を教えている講師と定期的に連絡を取り合い、教育相談を行っています。

3)教育機関訪問

 イタリアでは現在19の大学機関で22の日本語コースが開かれています。その実態を把握しようと大学などの高等教育機関を訪問し、教育状況を尋ねる調査を進めています。講座の授業を担当しながらの聞き取りであり、距離的に遠い所も多いため、そのペースは遅遅としたものです。しかし、各機関の日本語教員と実際に面談し、現場の生の声を聞くことはイタリアにおける日本語教育を知り、今後専門家が何をできるかを知る上で重要であり、今後も地道に続けなければと考える仕事です。

これから

以上のように、ローマ日本文化会館派遣専門家の仕事は多種多様です。勉強熱心な学生と、教育に熱意を持った教師に囲まれて、本当にやりがいがあります。学習者を教える業務も大切にしながら、さらに様々な面からイタリアの日本語教育に関わり、アドバイスを必要としている教育関係者と出会って、ともに解決の方法を見つける活動をしていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際交流基金ローマ日本文化会館は日本文化紹介や文化交流事業などを幅広く実施しており、日本語講座運営はその重要な柱の一つに位置づけられている。同講座は初級から中級、上級レベルのコースまで開講しているイタリアでは数少ない教育機関の一つであり、一般社会人、高校生、日本語専攻以外の大学生に広く日本語学習の場を提供している、。専門家は日本語講座運営、授業担当、コースデザイン、教材作成、教師指導のほか、教育機関訪問、教師支援(コンサルティング、教師研修、勉強会)を行う。
ロ.派遣先機関名称
The Japanese Cultural Institute in Rome
ハ.所在地 Via Gramsci, 74 000197 Roma, Italia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1964年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1986年
(ロ)コース種別
4年コース(初級I・II、中級I・II) 会話1年コース
(ハ)現地教授スタッフ
非常勤講師6名(全員邦人)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   4年コース(20名×4クラス)
1年コース(24名)
(2) 学習の主な動機 日本・日本文化への興味、趣味、教養として、研究のため
(3) 卒業後の主な進路 コース修了のみ、卒業はない
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級合格程度
(5) 日本への留学人数 ほとんどなし

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