世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) イタリアで日本語を教える

国際交流基金ローマ日本文化会館
高崎三千代

ローマ日本文化会館 日本語講座

 当会館の日本語講座は、15歳から65歳(上限なし)、初心者から中上級者までが学べる、生涯学習の場です。コースは大別して三つ。「基本コース昼間部」、「基本コース夜間部」と「入門コース」、そして「中上級/集中コース」です。
  まず、「基本コース昼間部」は、4年間約640時間で初心者を日本語能力試験2級レベルまで到達させるのを目標にしています。授業が平日の午後なので、これだけの期間通える受講者はやはり主に学生です。
  一方、夜間の「基本コース夜間部」は2年間約220時間で初級と呼ばれるレベルが修了。漢字学習の負担を軽くしています。「入門コース」は、平日の夜または土曜の朝に週1回2時間、3ヶ月で修了します。基本コースのように多くの時間は割けないけれど日本への関心が大きい人たち待望のコースです。
  そして「中上級/集中コース」は全12時間程度の単発コースです。2007年度には「日本語能力試験2級対策」、「海外日本語教師入門コース I」「同 II」が開講されました。

実際のコミュニケーションの場作りー日本人ボランティアの協力

日本人との会話を楽しむ会「しゃべりあーも」の写真
日本人との会話を楽しむ会
「しゃべりあーも」も定着

 日本語講座では、一ヶ月に1回「わいわい・しゃべりあーも」という会を開いています。これは、日本語を学習しているイタリア人と在伊の日本人が4~5人のグループになって、日本語で会話をするものです。「日伊・就職状況」や「日伊の年末年始イベント比較」といったテーマで話しますが、話題が脱線しても教師のお咎めはありません。日ごろ、日本語を話す機会に乏しい会館外のイタリア人が毎月楽しみにしているイベントでもあり、今では毎回30人程度の参加者を得るほどに定着してきました。
  この会を継続させるには、日本人参加者を安定して確保できる見込みがなければなりません。それで2007年「日本語講座ボランティア」という名称で協力者を募集したところ、40名ほどが申し出てくださいました。ほとんどの方の動機の欄に「私で何か役に立てば」と書いてありました。
  ボランティアの方には、授業中の「座談会」「インタビュー」「ディベート」などのアクティビティーや、一対一のスピーチ練習に参加していただきました。教師以外の日本人の参加で、学習者がどんなにモチベーションを上げるか、そして日本人の語り口やしぐさなど、言語運用の重要な要素を観察できるかは言うまでもありません。
  ボランティアの方々のこのような協力に感謝すると同時に、みなさんが帰られるときに笑顔が見えると「ボランティアさん自身にも充足感があったようだ。」と胸をなでおろすこともしばしばです。

日本語教師入門コースに見られた潜在的リソース

『日本語教師入門コース』の教育実習の写真
『日本語教師入門コース』の教育実習。
学生は本物の初心者。

 初めての試みとして、短期集中で「海外日本語教師入門コース」を開講しました。学習者ではなく教師志望者を対象としたこのコース、意外にも二人のイタリア人受講者がいました。聞いてみると外国語としての日本語教授法に関心があったとのこと。
  ヨーロッパ全体の傾向として日本語教師は母語話者が多いのです。数少ない現地教師の中に、「日本語を勉強し続けるのにいちばんいい仕事だから。」と言う人がいます。母語話者、非母語話者を問わず、そこに気づいた人が日本語教師になっていけば、学習者にもいいことだし、教師同士のつながりも強くなるでしょう。
  さて、このコース、最終週には教壇実習を行いました。人間は、分かったその瞬間に本当に眼が輝いたり頭の上で電球が点いたりするものですが、受講者にもそれを見てもらいたくて本当の日本語未習者を募集しました。教育実習だと断った上で無料体験授業の参加者をサイト上で募集したところ、二日のうちに定員15名を超える応募ぶりでした。
  彼らもいわばボランティア。実習は二週にわたりましたが、二週目にも全員出席して意欲的に直接法の授業を体験してくれました。受講者たちは、生徒たちの数十の眼が期待して自分に向けられ、やがてその眼が輝いた瞬間を話してくれました。短期間のコースでしたが、潜在的にあった日本語教育や学習への関心層を掘り起こすのによかったようです。

会館を訪れる新しい人々

 日本を知るには、書物やマスメディア、インターネットなどの媒介を経る方法もあるし、実際に日本人と接して見つける方法もあるでしょう。2007年、日本語講座は日本人・イタリア人ボランティアとの関係が生まれた1年でした。このことで、受講者の日本語練習の機会が増えたことに加え、日本人と直接に接しながら「自分なりの日本」を感じる機会が増えていけばいいのではないかと思っています。ボランティアの方にも同様に、何かしらの発見があって、続けて脚を向けてくださることになればと願っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ローマ日本文化会館は日本文化紹介、文化交流などを幅広く実施しており、日本語講座運営はその重要事業の一つに位置づけられている。専門家は日本語講座のコーディネート、授業担当、非常勤講師の育成、公開の研修会、授業内外での日本人との交流促進を行う。そのほか、欧州日本語教師研修会(フランス・アルザス)、イタリア・ロンバルディア州高校日本語研修会など国外・国内の研修会に出講する。
ロ.派遣先機関名称
Institute of Japanese Culture in Rome
ハ.所在地 Via Antonio Gramsci 74, 00197 Roma, ITALIA
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名

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