世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ローマ日本文化会館の日本語講座

国際交流基金ローマ日本文化会館
室屋 春光

ローマ日本文化会館の日本語講座

 ローマ日本文化会館(以下、会館と略)の日本語講座は1964年に開講されて以来、まもなく50年を迎えようとする歴史をもち、現在、基本コース(初級1・2、中級1・2)、夜間コース(1・2)、入門コース(1・2・3・4)の合計で約210名(延べ人数486名)の学習者を有しています。国際交流基金が海外拠点で運営している日本語講座としては規模の点でも歴史の点でも屈指の日本語教育機関であるといえるでしょう。

 会館の日本語講座の受講生は、身分や職種が高校生や大学生、仕事を持っている社会人、引退生活者などとさまざまで、日本語学習の動機も多岐にわたります。講座のコースが基本コース、夜間コース、入門コースの三つに分かれているのも、そうした多様な学習者のニーズにこたえるためです。

 基本コースは4年間(週2日、各3時間、合計授業時間数660時間)で日本語能力試験 (現行) 2級程度の日本語力をつけるための本格的なコースで、受講生も高校生、大学生から30代前半ぐらいまでの人が中心となっています。仕事を持ったり大学に通ったりしているわけではなく、この基本コースでの勉強を生活の中心においている人もいます。夜間コースは2年間(週2日、各2時間、合計授業時間数220時間)で修了し、特に聞く力と話す力に重点を置いているコースです。受講修了者の中にはさらに中級レベルでの日本語学習を継続する人もいます。入門コースは、日本語の勉強に興味はあるが学習にあまり時間をかけることができない人のためのコースで、木曜日の夜と土曜日の午前に授業があります(週1日、2時間、合計授業時間数110時間)。このほかに短期間(通常は週1回、2時間で12時間)の上級コースも不定期ですが開講しています。

 講師陣はベテランの先生方やエネルギッシュな若手の先生方など多彩な顔ぶれで、みなさん情熱を持って日本語教育に携わっておられ、授業のあるときには廊下を隔てた講師室にまで先生や学生の活気のある声が聞こえてきます。

学生による「さるかに合戦」のスキットの写真
学生による「さるかに合戦」のスキット

 学年末が近づく3月から5月にかけては、授業の一環としていろいろな特別活動もおこなわれます。例えば、基本コースの中級クラスでは、日本人ボランティアの方々の協力を得て座談会や討論会といったプロジェクトワークを実施したり、クラス内スピーチコンテストがあったりしますし、夜間コースでも「さるかに合戦」のミニスキットを演じたりして、授業に彩りを添えています。

 会館の日本語講座の最近の新しい動きとしては、授業でのマルチメディアの利用が進みつつあることがあげられるでしょう。2010年4月以降各教室へのコンピュータとプロジェクタの設置が着々と進んでおり、それにともなって先生方もパワーポイントや動画などコンピュータを利用した授業の実施に取り組んでいます。これまでの絵教材やフラッシュカードの利用に比べて、あざやかな画像による新出語の提示やアニメーション効果による動きのある文型の導入などは学習者へのインパクトも強く、授業の質がよりいっそう向上していくことと思います。

「しゃべりあーも」カラオケスペシャルの写真
「しゃべりあーも」カラオケスペシャル

 会館では、日本語を勉強しているイタリア人のみなさんと日本語話者のみなさんに日本語でおしゃべりをする場を提供するために、「わいわいしゃべりあーも」という定期イベントも実施しています。月に2回、平日の夕方と土曜日の午前にそれぞれ2時間開催され、参加者のみなさんはリラックスした雰囲気の中で日本語でのおしゃべりを楽しんでいます。

 会館派遣の日本語専門家は、業務として実際の授業も担当しますが、同時に、講座のコーディネイター役として授業や試験、イベントなどが円滑に運営されるように努めたり、授業の質をよりいっそう向上させるためのワークショップを実施したりすることも求められています。

ローマ日本文化会館の日本語支援事業

 イタリアにおける日本語教育の支援もローマ日本文化会館の業務の柱の一つです。その一環として、イタリアで日本語を教えている先生がた相互のネットワーキングを支援するために、昨年(2009年)10月に日本語教育に関する情報や意見を交換したり教材やアイデアを共有したりするための「日本語-イタリア(Nihongo-Italia)」電子メールグループを開設しました。2010年5月末の時点でこのグループの会員数は86名ですが、まだまだ、イタリアで日本語を教えている先生方のすべてに会員になっていただくまでには至っていません。日本語専門家としては、できるだけ多くの先生方にこのメールグループの会員になっていただけるよう働きかけ、このメールグループが活発に利用されてイタリアの日本語教育のよりいっそうの発展につながるようになればいいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Institute of Japanese Culture in Rome
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ローマ日本文化会館は日本文化紹介、文化交流などを幅広く実施しており、日本語講座運営はその重要事業の一つに位置づけられている。イタリアの日本語教育機関は高等教育がほとんどである中で、ローマ日本文化会館の運営する日本語講座は、日本語専攻ではない大学生や、高校生、一般社会人にも日本語学習の機会を提供している。専門家は日本語講座のコーディネート、授業担当、講師の育成、研修会、授業内外での日本人との交流促進を行う。そのほかに、専門家の業務としては、イタリア国内の日本語教育関係者のネットワーク形成支援、国外・国内の研修会への出講などもある。
所在地 Via Antonio Gramsci 74, 00197 Roma, ITALIA
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1986年

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