世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 新たな変化の時期を迎えて

ローマ日本文化会館
大谷英樹

 日本政府による海外初の日本文化会館として長年に渡り日本・イタリア両国の交流の懸け橋となってきたローマ日本文化会館ですが、今年度は2つの大きな変化を迎えています。まずは夏から秋にかけて会館の大規模な改修工事が行われる予定で、秋以降の新たな出発に向け現在準備が進められています。また、JF日本語講座においても2010年の「JF日本語教育スタンダード(JFS)」の発表以来、JFSに準拠したカリキュラムが段階的に導入されてきましたが、いよいよ2016年秋から初級から中上級まで一貫してJFS準拠の教材「まるごと」を使用したコースに順次移行することになりました。従って派遣専門家としては、今後新たなコースへの移行がスムーズにできるよう準備を進めていくことはもちろん、JF講座を中心に国内・国外の管轄地域における日本語教育に対しても教師研修やワークショップなどを通じて必要な支援をおこなっていくことが求められています。

中等教育での日本語教育支援

漢字パズルに挑戦する生徒の写真
漢字パズルに挑戦
(ルクレツィオ・カーロ高校の生徒)

 イタリアの日本語教育は高等教育が中心ですが、国内全体の日本語教育の裾野を広げるという意味でも中等教育での日本語教育支援は重要な目標の一つとなっています。現在、中等教育では正規科目として日本語が開講されているのはわずかで、ほとんどは課外科目です。しかし、毎年大規模なマンガ・アニメフェスティバルがローマや他の都市で開催され、そこに大勢の若者が集まっているという現実を見れば、「自分の身近にある日本」への興味がやがては言葉の学習へのきっかけとなる可能性は十分にあり、日本語学習の潜在的な需要は少なからず存在すると考えられます。そのため、中等教育における日本語教育の環境作りは地道ながらも継続的に進めていく必要があります。

日本語・日本文化に触れる機会を

文化日本語講座 「漢字と書道」の写真
文化日本語講座 「漢字と書道」

 会館では日本語講座はもちろんのこと、それ以外にも一般対象に様々なイベントや展示会、文化日本語講座を開催し、少しでも多くの方に日本語・日本文化に触れられる機会を提供できるよう努めています。現在までに、「書道」「和食」「旅行」「アニメ」などのテーマで定期的に文化日本語講座をおこないましたが、お陰様でいずれも好評を頂いていますので今後もより広範囲なテーマで興味深い講座を提供できるようさらに工夫を重ねていきたいと思います。また、前期・後期の日本語講座の開講前には「お試し日本語講座(8時間)」を開講し、日本語のクラスを少しだけ実体験することで日本語学習へのきっかけとなるような機会を持てるようにしています。

 新たな変化の時期を迎え、今後ますます多様化するであろう日本語学習の需要に応えながら、少しでも多くの人に日本に興味・関心をもってもらえるよう様々な試みをしていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Cultural Institute in Rome (The Japan Foundation)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ローマ日本文化会館は1962年、政府による海外初の日本文化会館として開館、日本語講座は1964年に開講された。以来、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究・知的交流を3つの柱として様々な事業を実施。イタリアの日本語教育機関は高等教育がほとんどである中で、ローマ日本文化会館の日本語講座は、高校生や一般社会人にも日本語学習の機会を提供し、年間延べ500名程度が日本語を勉強している。日本語講座の運営の他に、イタリア国内外での研修会を通した教師支援、ネットワーク形成支援、日本語能力試験などによる学習者支援、日本語教育事情の情報収集、地元団体が主催する催し物への出展・協力などにも力を入れている。
所在地 Via Antonio Gramsci, 74, Roma, 00197, Italy
国際交流基金からの派遣者数 専門家1名、指導助手1名
国際交流基金からの派遣開始年 1986年

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