世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 熱い!スペイン日本語教師会

マドリード日本文化センター
隈井 正三

スペインの日本語の先生たち

2013年9月に、2代目の日本語上級専門家(以下、専門家)として国際交流基金マドリード日本文化センター(以下、JFMD)に赴任しました。私が最初にスペインの日本語教師の皆さんに会ったのは、ちょうど赴任の頃にマドリードで開催されたヨーロッパ日本語教師会シンポジウムの時でした。参加者は200名を超え、発表も充実したものが多く、大盛況で大成功。これを裏で支えていたのが、スペイン日本語教師会(以下、教師会)の皆さんのチームワークと熱意でした。この出会いのせいか、スペインの日本語教育界の第一印象は、明るく楽しく、そして熱い!というものでした。この印象は赴任から半年以上経った今も続いています。日本語教育についても 「情熱の国スペイン」というキャッチフレーズは実に正しいと思います。

教師会は間口が広く開放的です。若い先生、ベテランの先生、大学で大人数のクラスも担当する先生、個人教授の先生、補習校で継承語としての日本語を教えている先生、日本語教師を目指している学生会員も歓迎されます。そして、研修の企画と運営、プロジェクト実施の時などは、活発で機動的かつ互いにとても気を配り助け合う。そんな教師会なので、新参者の私も温かく迎え入れてもらえました。この組織が生まれたのがわずか4年前というのは驚きです。立ち上げ前から現在までの道のりは決して平坦ではなかったようですが、道のでこぼこなど感じさせない先生方の熱心さとバイタリティと明るさには自然と敬意を抱きます。

週に1度の勉強会

授業の様子
火曜日の勉強会

その熱心さの表れの1つが、毎週火曜日に1時間行われる教師会の勉強会です。JFMDのオフィスで1つのテーブルを囲み、マドリード以外の先生はskypeで参加します。活動内容は文献購読。私は途中からの参加なのですが、先生方はこれまでに『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠』と『JF日本語教育スタンダード 試行版』を読破。今後は国際交流基金日本語教授法シリーズから参加メンバーの関心の高いものを選んで読んでいくことになりました。

文献購読というと固い感じですが、読み進めながら、自分の現場の状況や実践の経験を話したり、意見交換をしたりします。とてもざっくばらんに。先生方はこれを「脱線」と呼んでいますが、この勉強会でいちばん学びを実感できるのは、この脱線の時だと私は思っています。脱線中は本当によく笑いますが、これほど学びの多いおしゃべりは他に例を見ません。授業を抱えて忙しい中、週に1回というのは、実は相当な頻度で、なかなか継続できないものです。それでも、この勉強会が続いているのは、先生たちの熱意があるからにほかなりません。

イベリア半島各地へ

スペインの日本語教育の中心は教師会で、全国の教師間ネットワークの基盤ができています。年に4回実施される教師会の研修会は、地理的な条件からマドリードを会場にしていますが、地方の先生方がマドリードまで出向く負担は小さくないため、JFMDは各地で巡回セミナーを実施して、勉強・研修の機会を設けています。私は、赴任して半年の間に、グラナダ、バレンシア、サンティアゴ・デ・コンポステーラ、サラマンカ、バルセロナでセミナーを行いました。どこへ行く時も、教師会メンバーの先生が連絡の窓口になってくれます。セミナーもアットホームな雰囲気で、終日あるいは半日、共に学ぶ時間を持つことができ、マドリードから出かけていっても「アウェー感」はありません。それから、巡回先にはポルトガルも含まれていて、2013年はポルトへ行きました。ポルトガルではまだ教師会は組織されていませんが、その前身となる日本語教師連絡協議会が設置されています。

新体制で

教師会は2014年2月に会長以下役員が交代し、新体制がスタートしました。今期の会長はガリシア在住、副会長はバルセロナ在住の先生です。これまでもそうでしたが、スペイン各地の先生が参加し、貢献する教師会の活動がスムーズに進み、充実したものになるようサポートするのがJFMDの専門家の大きな仕事です。

スペインは広い国土にさまざまなニーズを持った学習者がいて、先生がいます。できるだけ多くの先生の支援ができるよう、汗をかきたいと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Madrid
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
2010年4月の開所以降、文化芸術交流、日本語教育、日本研究・知的交流の3本柱で各種事業を行っている。2010年から日本語上級専門家が、2011年から日本語講座担当専門家も派遣されている。スペインの日本語教育支援の拠点として、教師支援(教師会支援、地方巡回セミナーを含む各種研修会の開催)、日本語学習奨励(ポップカルチャーイベント等への日本語ブース出展)、アドバイザー業務(リソースセンター整備や日本語教育相談、情報収集)、日本語講座(JFS講座、JLPT講座、目的別講座、文化講座、会話サロン等のコースデザインや実施運営)を行っている。
所在地 Almagro street 5, 4th floor, 28010 Madrid, Spain
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2010年

ページトップへ戻る