世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 発展し続けるスペインの日本語教育への支援-多様なアドバイザー業務

マドリード日本文化センター
近藤 裕美子

スペイン日本語教育クイズ

次の質問に○か×で答えてください。

質問1:スペインの日本語教育の歴史は新しい。

質問2:スペインでは初等中等教育で日本語を学ぶ学習者が多い。

質問3:スペインの日本語教育機関や教師・学習者は、首都マドリードに集中している。

答え1:○
スペインの日本語教育は比較的新しく、日本語教師会設立、マドリード日本文化センター(JFMD)開所は、ともに2010年です。

答え2:×
スペインでは、高等教育機関(大学、語学センター)のほか、公立語学学校、民間語学学校、個人教授のなど形で日本語を学んでいる学習者が多いです。ただし、初等中等教育では日本語教育は実施されていません。

答え3:×
マドリードやバルセロナが多いですが、ほぼスペイン全土に広がっています。日本語能力試験も2016年7月現在、4都市5箇所で実施されています。

いかがでしたか。スペインの日本語教育のイメージがつかめたでしょうか。マドリード日本文化センター(以下JFMD)の日本語事業は、このような特徴を持つスペインの日本語教育の発展・向上を支援することを目的としていますが、その一つに日本語教育アドバイザー(以下アドバイザー)業務があります。アドバイザー業務は多岐に渡りますが、ここでは、一番中核となる「教師支援」に焦点を当ててお話ししたいと思います。

1. スペイン日本語教師会(以下APJE

「世界の日本語教育現場から」のスペインのアドバイザー(上級専門家)のレポートにもありますが、JFMDAPJEは様々な活動を一緒に行ってきました。シンポジウム、総会&研修会、教材開発、勉強会、日本語劇コンクールなど、1年を通じてAPJEの活動に参加・協力しています。詳しくは過去の専門家のレポートをご覧ください。

2. 日本語教育巡回セミナー

APJEは様々な活動を行っていますが、マドリードでの実施が多く、地方の日本語教師にとっては、参加が難しいということがあります。また、同じ地域に住んでいても、日本語教育について話し合う場、相談しあう機会が限られ、孤軍奮闘している教師の方も多くいらしゃいます。

そこで、地域の日本語教育のネットワークの活性化、日本語教師の方々への学びの機会の提供、地方における日本語教育の状況把握等を目的として、各地域で年に1−2回、巡回セミナーを実施しています。テーマは「聴解問題作成ワークショップ」「書く活動の指導」「ICT活用(入門)」「教科書分析」など要望に応じて、対応するようにしています。(過去の研修会の報告はAPJEのサイトに掲載:http://www.apje.es/index.php/es/blog/seminarios

また、マドリード日本文センターはスペインだけでなく、ポルトガルも支援対象なので、年2回研修を実施しています。

スペイン日本語教育地図の画像
スペイン日本語教育地図

アリカンテ大学の日本語教育巡回セミナーの様子の画像
日本語教育巡回セミナー@アリカンテ

3. 機関内研修・機関支援

「機関全体のコースを整備したい」「評価方法を変えたい」「来年度から『まるごと 日本のことばと文化』シリーズを取り入れたい」など、特定機関に関するご相談を受けることもあります。そのような場合は、機関の状況に合わせて、数回連続の研修やプロジェクトを組んで、サポートする活動も行っています。2015-2016年度は、サラマンカ大学、バレンシア大学、アリカンテ大学、バルセロナ自治大学などを対象に行いました。

機関ごとにニーズは異なりますが、すぐに現場につながるサポートができることは醍醐味の一つです。

4.対象者別ネットワーク支援

スペインの日本語教師の方々は、高等教育(専攻)、大学の語学センター、スペイン全土に広がるEOIescuela oficial de idiomas:公立語学学校)、民間語学学校、個人教授など、さまざまな場所・形で日本語教育に従事しています。したがって、広く一般に日本語教師に関心を持ってもらえるテーマもありますが、カリキュラムや学習者の特性が特定のタイプの機関に共通するものもあります。たとえばEOIでは高校生から入学できますが、そのような学習者を対象とした効果的な教え方などは、EOIの教師の方々に共通する課題です。

そこで、「EOIネットワーク会議」や「大学語学センターネットワーク会議」など、機関種別のネットワークを開催し、関係者間で共通の課題について話し合う機会を企画しています。またこのような機会は、スペインの日本語教育の現場の状況を把握するのにも役立っています。

以上のように、日本語教育アドバイザーの仕事は、様々な業務・企画を同時並行で進めていく必要があるため、マルチタスクの遂行能力が求められます。大変な部分もありますが、イベリア半島の日本語教育を包括的にとらえ、数年先の日本語教育状況をイメージしながら進めていく仕事なので、とてもやりがいがあります。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Madrid
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
2010年4月の開所以降、文化芸術交流、日本語教育、日本研究・知的交流の3本柱で各種事業を行っている。2010年から日本語上級専門家が、2011年から日本語講座担当専門家も派遣されている。スペインの日本語教育支援の拠点として、教師支援(教師会支援、地方巡回セミナーを含む各種研修会の開催)、日本語学習奨励(ポップカルチャーイベント等への日本語ブース出展)、アドバイザー業務(ネットワーク会議や日本語教育相談、情報収集)、日本語講座(JFS講座、目的別講座、文化講座、会話クラブ等のコースデザインや実施運営)を行っている。
所在地 Palacio de cañete, Calle Mayor, 69, Planta 2, 28013, Madrid
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2010年

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