世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) RSNReady Steady NihonGo!)プロジェクト

ロンドン日本語センター
中込達哉

 ロンドン日本語センターは、日本語教師への支援機関として活動している。支援の中心となる中等教育に関しては、「ノンネイティブ教師の日本語運用力向上」「日本語の教え方などのセミナー開催」「日本語教育(特に資格試験やリソースに関する)情報提供」を三つの柱としており、ノンネイティブ教師のための日本語コース、教授法セミナーおよびワークショップ、電話やメールでの問い合わせ対応などの形で支援活動を行なっている。こうした教師への支援をより効率的に行なうためには、英国の教育事情とその動きを把握することが前提となる。そのため、新聞や教育関係機関ホームページなどから、教育改革や言語政策の動きを情報収集することも日課の一つである。

1.初等教育での外国語教育奨励

  2002年12月18日、教育技能省(DfES: Department for Education and Skills)が、'Languages for All: Languages for Life'(「皆の言語:生涯の言語」)と題した言語政策文書をイングランド向けに発表した。「外国語は生涯の技能」と謳い、国際化が進む21世紀に取り残されぬよう、初等から中等、高等、生涯に渡っての外国語教育に力を入れ、外国語能力および異文化理解能力を向上させていくことを宣言している。特に初等教育段階での外国語教育を最重視し、「2010年までにキーステージ2(7歳から11歳)のすべての小学生に外国語を学ぶ機会を与える」と目標を掲げている。
 イングランドでは、すでに約25%の小学校でフランス語、スペイン語、ドイツ語などのヨーロッパ言語が教えられているが、そのほとんどは不定期であり、カリキュラム外のクラブ活動の形で実施されていることが多い。これから、初等段階での外国語教育をどうカリキュラム化していくのか、外国語教師の確保はどうするのかなど、課題は多い。日本語教育も少しずつではあるが始まっている。中等教育機関の日本語教師が地域の小学校で出張授業を行なうアウトリーチと呼ばれる形で実施されることが多いが、中には、JETプログラムなどで日本滞在歴のある小学校教員自身が日本語や文化を教える例も見られるようになっている。

ダービーシャーのリントン小学校での写真1 ダービーシャーのリントン小学校での写真2
Linton Primary School, Derbyshire

2.RSNReady Steady NihonGo!)プロジェクト概要

 ロンドン日本語センターは、2003年3月より、初等日本語教育調査「RSNReady Steady NihonGo!)プロジェクト」を開始した。教育技能省の方針に乗り遅れないよう、まず初等日本語教育の現状調査を行い、その未来像を英国の教師と共に考察していくための基礎資料づくりを目指している。調査と平行して、メーリングリスト(PJPPrimary Japanese Pioneers)も立ち上げ、初等日本語教育関係者のネットワーク構築も図っている。今回の調査は、表-1にまとめたように、3団体による合同調査である。日本語教育に携わる各機関がそれぞれのネットワークを活かして、異なる分野で調査を実施している。夏以降、調査結果をまとめ、11月には報告会を開催予定である。その後、PJPメンバーを中心として、初等教育普及支援に向けてセミナーやワークショップを企画化していきたい。

表-1 RSNプロジェクト調査概要
機関名 調査内容
The Japan Society
  • 同機関は、英国の初中等教育機関に対して在英日本人ボランティア派遣による日本文化紹介を積極的に行なっている。「小学校における日本文化教育の現状」等に関して調査する。
    http://www.japansociety.org.uk/
School of Education University of Nottingham
  • 小学校での外国語教育のカリキュラー・モデル(外国語教育実施形態モデル)を調査する。
  • 同大学PGCEPostgraduate Certificate in Education)コース修了生による初等日本語教育実態調査を行なう。
    http://www.nottingham.ac.uk/education/
国際交流基金
ロンドン日本語センター
  • 授業見学による「初等教育段階での日本語教育」調査、特に1)スキームオブワーク(=シラバス及び授業計画案)、2)効果的なアクティビティー、3)中等教育との連携の三点を調査する。
    http://www.jpf.org.uk/language/

3.小学校での日本語

 ロンドン日本語センターではRSNチームを組み、小学校での授業見学とインタビューを中心に実態調査を続けている。どの授業でも、生徒達の表情が「学習の楽しさ」を物語っている。小学生たちは、数や挨拶などをゲームや歌で楽しく学習している。書道の授業も行なわれている。紙細工の雛人形や兜を作成する授業や校庭に出て道案内を日本語でする授業もあった。日本語と言う教科の枠を超え、音楽や体育などの活動と結びつけたアクティビティーも数多く試みられている。

 生徒達に尋ねてみると「ゲームや歌が楽しい。」「お父さんやお母さんは日本語ができないから自慢できる。」「中学校へ行っても勉強したい。」などの返事が返ってきた。

 教育技能省は英国人の外国語能力不足を憂い、小学校から外国語教育を導入することで、外国語に堪能な人材の育成を目指そうとしている。日本語教育がその一助となることを期待したい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 ロンドン日本語センターでは、CGSE(中等教育修了一般資格)及びAS/A-level(準上級/上級)に則した日本語教育教授法についての研修会や、非母語話者教師の日本語能力向上のための研修、邦人教師向研修などをはじめ多様な研修を実施している。特に英国における日本年であった平成13年度は、模範授業ビデオClass Acts制作、IT日本語教材開発、GCSE漢字カード作成、リソースボックス作成、Home-Stay UK(在英日本人家庭での週末ホームステイ)などを実施した。ニュースレター「MADO」を発行している。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation London Languge Centre
ハ.所在地 Russell Square House 10-12 Russell Square, London WC1B 5EH
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名 青年教師:1名

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