世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ロンドン日本文化センターで行なっているノンネイティブ教師向け日本語コース

国際交流基金ロンドン日本文化センター
田中真寿美(ジュニア専門家)

 現在、英国における日本語教育で、約60%(約9600人)の学習者を占めているのは、中等教育段階です。そして、中等教育において日本語を教えている教師の約60%が、日本語を母語としないノンネイティブ教師です。このような状況で、ノンネイティブ教師への支援は、ロンドン日本文化センターの大事な業務の1つになっています。支援の1つとして、ロンドン日本文化センターでは、ノンネイティブの先生向けに日本語コースを行なっています。現在、コースは2つあり、1つは、先生達自身に日本語を復習してもらうためのコース、もう1つは、校長や外国語科の主任教師など、その学校で教える外国語の決定に影響力を持つ先生に日本語を体験してもらうコースです。前者は、リフレッシャーコース、後者は、ヘッドスタートと呼ばれています。

 リフレッシャーコースは、7月の1週間を使って行なわれるコースです。先生達の日本語のブラッシュアップを目的としているので、リピーターも多いコースです。毎年、レベルにより複数のクラスを開講しています。今年は、従来とちょっと違った試みが計画されています。

 現在ロンドン日本文化センター日本語センターでは、来嶋洋美専門家を中心に、当地のGCSEGeneral Certificate of Secondary Education)という試験のシラバスを土台に、学習項目の組み合わせと配列を考えた資料と、それに合わせた教材を作っているので、それら教材をこのリフレッシャーコースで使ってみようと考えているのです。GCSEは中等教育を修了したという資格になる試験で、外国語科目の中に日本語もあり、05年度は1201人が日本語を受験しています。フランス語、ドイツ語などの受験者が減っていることが大きなニュースになりましたが、日本語の受験者数は増えています。日本語の人気を表していると言えますが、残念ながら、イギリスで出版された中等教育の学生用の日本語教科書はないのです。GCSE日本語には、出題基準のような文法リストと語い表、漢字一覧、大まかなトピックカテゴリーが示されてありますが、GCSE用に作られた教科書がないため、どの文法項目をどのトピックで、どのような配列で教えるかという指導計画は、学校・教師で独自に作られています。そのため、授業内容、成果もばらばらですし、教材のシェアも進みません。これらロンドン日本文化センターで作成した教材がどんどん利用され、さらに、それをもとに先生達が自分で作った教材をシェアできるようになれば、と願っています。まずは、この7月、リフレッシャーに参加した先生達にどう受け止められるか、反応が楽しみです。

「LondON NippON Tour」で習った日本語を早速使っている写真
LondON NippON Tour」で。習った日本語を早速使ってみる。

 ヘッドスタートは、1月の3日間を使って行なわれました。今年の参加者は8人、それぞれ、セカンダリースクール(中学・高校段階)の語学科で中心的役割を担っている教師達です。この3日間に、(1)日本語授業、(2)教材紹介、(3)ロンドン日本文化センターや関係機関によるサポート紹介、といった内容を詰め込みました。ヘッドスタートでは、例年、レストランで使う日本語を授業で扱い、その後、実際に日本食レストランへ行く、という内容が組み入れられています(GCSEのトピックカテゴリーの中にFoodというトピックもあります)。今年は、その他に、「ロンドンにある日本」を見て回るというセッション、「LondON NippON Tour」を行いました。和菓子屋、日系の食材店・書店・デパートを回り、日本語、あるいは英語でタスクをこなしながら、どういった店にどんなものが置いてあるのかを確認し、また、実際の授業でどう活用できるのかを考えてもらいました。

 最終日のレセプションには、以前、このヘッドスタートに参加し、現在、日本語を教えている学校から校長先生も来て、実際にこのヘッドスタートから日本語クラスが立ち上がる過程を具体的に話してくださいました。このコースへの参加が日本語導入のきっかけとなったことを知るのは、大変うれしいことですし、今回参加した先生達にも、大きな刺激になったと思います。

 これらのコースは、普段、授業を持たない私達にとって、先生達からイギリスの教室の様子をうかがういい機会となっています。また、ロンドン日本文化センターのウェブには、ダウンロードできる教材が既にいくつかありますが、それらを紹介し、使ってみてフィードバックを得るいい機会です。先生達だけでなく、私達にとっても学ぶことの多いコースとなっています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
●国際交流基金ロンドン日本文化センターは1997年に日本語センターを開設した。現在の業務は、当地の教育情報の収集と支援事業の企画・実施である。●初等教育は2010年までに外国語科目の導入計画があり、これに向けた教材開発を完了させた。●中等教育への支援では、各校における日本語科目設置促進を目的とした出張授業や学校長・外国語学科主任のための日本語コース、また教師支援のための教授法セミナーや日本語コースなどを実施している。●このほか、スピーチコンテストの実施、英国日本語教育学会との共催事業、ニュースレター「まど」やウェッブサイトを通しての情報提供、などを行っている。
ロ.派遣先機関名称 国際交流基金ロンドン日本文化センター
The Japan Foundation London
ハ.所在地 Russell Square House 10-12 Russell Square, London WC1B 5EH
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名 ジュニア専門家:1名

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