世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語の力-CHIKARA-

国際交流基金ロンドン日本文化センター
来嶋洋美

 イギリスの中等教育の生徒たちは、最終学年Year11(15-16歳)でGCSE(General Certificate of Secondary Education)という国家試験をうけます。GCSEは進学や就職などに影響する大切な試験で、日本語も現代外国語科目の一つになっています(2006年受験者数1290名)。つまり、日本語を勉強している多くの生徒たちと彼らを教えている先生方にとって、この試験は大きな目標になっているというわけです。

 さて、GCSE日本語はどうやって教えるのでしょうか。実は、GCSE日本語の教科書はありません。先生方は、試験の内容を把握した上で、外国で出版された様々な教科書や資料にあたって自分のクラスやコースのための教材を整え、カリキュラムや授業案を考えるのです。これは、高度な専門性を伴う、想像しただけでもたいへんな作業です。それだけでなく、このような十人十色の状況は、国際交流基金ロンドン日本文化センター(以下「JFロンドン」と略す)のアドバイザーにとっては、典型的なカリキュラムや授業内容を把握しにくいという点が問題です。

 このような中、英国の日本語教師間で共有できるGCSE日本語向けリソース「力-CHIKARA-」の開発を始めました。試験直前対策の問題集ではなく、一時間一時間の授業で利用するものを目指して、GCSE試験シラバスを教材用シラバスに構成しなおしました。このシラバスをもとに作成したリソースは、文型・文法練習とコミュニケーション練習の両方が楽しく効果的にできるように、簡単なIT教材も含めて5種類のリソースで構成されています。 http://www.jpf.org.uk/language/teaching_chikara.php

 リソース開発の作業では、文型・文法の表記のしかたから、イラスト・写真の貼り付けまで、国際交流基金の「みんなの教材サイト」を頻繁に利用しました。このほか、作業で必要なソフトはすべてインターネットで無料で入手できるものばかりです。インターネットのありがたさをつくづく感じます。

 また作業には、主に日本語教育派遣専門家(来嶋洋美2005-2008派遣:以下「専門家」と略す)と日本語教育ジュニア派遣専門家(田中真寿美2005-2007派遣)があたりましたが、専門家だけでは不可能なものもありました。特にモデルテキストの録音は、10代男子の学習者がモデルとして聞くのに、あまり違和感のない声がほしくて、若い日本人男性(の声)を見つけ出すのに一苦労、録音にあたってはその方にかなりの負担をかけてしまい、もう一苦労でした。JFロンドンのイギリス人スタッフには、英語のチェックをお願いしましたが、皆、親切にそして辛抱強く、協力してくれました。

 「力-CHIKARA-」は2007年1月から5月にかけて順次、リソースをアップロードしてきましたが、2007年6月末には、その紹介と使用法の説明を目的にしたイベントを行います。

「力-CHIKARA-」セミナーの写真1
CHIKARA セミナーの写真 1

「力-CHIKARA-」セミナーの写真2
CHIKARA セミナーの写真 2

 今後「力-CHIKARA-」が、先生方にとって少しでも日本語を教えやすくなるように、学習者にとっては正しい日本語を楽しく学べるように、利用されていくことを願っています。そしてJFロンドンとしては、これを土台にした教師研修の企画も打ち出してしていきたいと思っています。リソース「力-CHIKARA-」が、先生方の教える力を支え、さらに学習者の日本語の力につながることが、JFロンドンの願いです。(2007年5月)

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
●国際交流基金ロンドン日本文化センターは1997年に日本語センターを開設。その業務は、当地の教育情報の収集と支援事業の企画・実施である。●教材開発と提供:初等教育用には「Ready Steady NihonGo!」、中等教育用にはリソース群「力CHIKARA」を開発、公開している。●初中等各校における日本語導入促進を目的とした出張授業、教師のための研修会や日本語コース、教育情報を提供するコースなどを実施している。●このほか、スピーチコンテストの実施、英国日本語教育学会との共催事業、ウェッブサイトを通しての情報提供などを行っている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation London
ハ.所在地 >Russell Square House, 10-12 Russell Square,London WC1B 5EH,UK
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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