世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) いろいろな日本語研修・日本語教授法研修を通して日本語教育振興を

国際交流基金ロンドン日本文化センター
宇田川洋子

非日本語母語話者教員向け日本語研修の写真
「リフレッシャーコース」
非日本語母語話者教員向け日本語研修

 国際交流基金ロンドン日本文化センター(以下JFLとする)では、英国各地の日本語教育の振興といろいろな年齢の日本語教育の幅広い支援を目的に、各種日本語研修・日本語教授法研修を実施しています。

 英国の日本語学習者は、半数以上を小、中、高校生が占めています。これら小中高校で日本語を教える先生方のうち、日本語を母語としない先生方の日本語能力維持ために、年一回、夏休みに「リフレッシャーコース」というイマージョン式日本語研修を実施しています。このコースは、先生方に、4日間ほど日本語漬けになり、日本語でいろいろな活動をしながら日本語能力を磨き、さらに教授法のアイディアも増やしていただこうというもので、今年はIntermediateAdvancedの2レベルのコースを実施します。また、先生のための日本語コースとしては、国際交流基金シドニー日本文化センターが実施している教員向けオンライン初級日本語講座を、英国でも提供することを、今年から始めることになりました。

日本語教授法研修の写真
Chikaraワークショップ」日本語教授法研修

 日本語教授法の研修にも、いろいろな形で行っています。定期的に開催しているのは、「Chikaraワークショップ」という研修で、これは、中等教育レベルの生徒を教えている先生方のための、文型練習や教室活動作成の技術向上を目的とした研修です。また、中等教育機関の日本語教師のために設立された日本語部会(Japanese Language Committee)やその他の機関と協力して、日本語の各種試験に関する研修もいろいろ提供しています。また、ロンドン以外の地域の先生方により多くの機会をということで、特定の地域の先生方のネットワーク会議への支援・出講なども始めました。

 大学の先生方を対象としたセミナーやワークショップも、英国日本語教育学会(以下BATJとする)と共催して、各学期数回ずつ行っています。特に、英国の大学では、近年、ヨーロッパの基準(Common European Framework for Reference for Languages:略称CEFR)を用いた授業計画を導入するところが増えているため、7月からは、国際交流基金がCEFRを基に開発した「JF日本語教育スタンダード」を用いたコースデザインや教授法のワークショップもシリーズ化して実施する予定ですし、これ以外にもいろいろなセミナーやワークショップの共催や協力も行っています。

 一般向け日本語講座は、JFLでは、1つだけ、ちょっと変わった講座を設けています。これは「日本語で学ぶ日本事情」という講座で、中上級者向けに、夜4回シリーズで、年3期実施されます。テーマはその都度変わり、短編小説を読む、ドラマを見るなどの活動を通して中上級レベルの日本語学習者の日本語能力維持と、最新の日本事情に関する情報提供と意見交換の場にしようと考えています。

 新たな日本語学習者拡大のための努力もしています。例えば、JFLは日本語ボランティアの学校派遣プログラム「StepOutNet」を主催していますが、その一部として、日本語ボランティアを対象とした教授法研修も実施しています。さらに今年の秋には、教材集も発行する予定です。

 英国(特にイングランド)では、政府の方針により、小学校の外国語教育が盛んになってきています。JFLでは、これを考慮し、小学校レベルの日本語授業計画案例を作成しており、教員研修も今後実施する計画です。

 このようなわけで、日本語教育アドバイザーには、入門から上級までという日本語能力レベルだけでなく、小学校から大人まで、いろいろな年齢に応じた教授法や教材の知識が必要とされます。また、忙しい授業の合間、あるいは休暇を返上して研修に参加する先生方や、仕事の後で晩御飯もそこそこに講座に来る学習者が、来た甲斐があったと満足し、「次回も参加しよう」と思ってくださるような、充実した内容を提供しようと心がけています。ありがたいことに、JFLの研修や講座はどれも盛況で、申し込みが定員を超えたため、同じ内容で2回実施するものも増えてきました。時間的には忙しくなりますが、参加希望者が多くなるというのはうれしいものです。また、上記の小学校日本語授業計画案例作成プロジェクトにも、英国の政府関係団体などが関心を持ち、協力を申し出てくれています。

 以上のように、JFLでは、いろいろなプログラムを通して英国の日本語教育を支援し、英国での日本語教育拡充を目指して努力しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, London
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金ロンドン日本文化センターは1997年に日本語センターを開設。その業務は、当地の教育情報の収集と支援事業の企画・実施である。
  • 教材開発と提供:初等教育用には「Ready Steady NihonGo!」、中等教育用にはリソース群「力CHIKARA」を開発、公開している。
  • 初中等各校における日本語導入促進を目的とした出張授業、教師のための研修会や日本語コース、教育情報を提供するコースなどを実施している。
  • このほか、スピーチコンテストの実施、英国日本語教育学会との共催事業、ウェブサイトを通しての情報提供などを行っている。
所在地 Russell Square House, 10-12 Russell Square,London WC1B 5EH,UK
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1997年

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