世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ヨソからみたイギリス

国際交流基金ロンドン日本文化センター
福島青史

 イギリスに赴任して4ヶ月が過ぎた。去年の夏までハンガリーのブダペストにいて、いまだ「うち(=ハンガリー)では・・」と口走ってしまう状況で、英国の日本語教育状況について語るのもおこがましい気もするので、新任であればこそ書ける「初印象」について記しておこうと思う。英国の人にとっては当たり前のことかも知れないが、ヨソモノの目から見れば、珍しいものがたくさんある。

たくさんの日本人・多様な日本語教師

ロンドンでの日本語教育関連の写真

 最初の印象は「日本人が多い!!」ということである。ロンドンでは街や地下鉄でも日本人らしき人を頻繁に見かけるし、トヨタやソニーだけでなくユニクロや無印良品などのロゴもよく見かける。日本語を教える先生方も大学や初中等教育機関のみならず、プライベート、会社の福利厚生など形態も多様。また継承語として自分の子供に日本語を教えるという「教師」も相当数いる。学習者が2000名、日本語教師が50名程度の国であれば、目に映る日本語教育活動のすべてに関与したくなるが、学習者2万人弱、教師数742名の英国では、目に映る中からも選択して、関与する活動を制限する必要がある。いまだ、巨大な英国の日本語教育事情の総体が見える兆しもなく、ちょこちょこ部分に触っては、「こんなものかもしれない」と模索の日々である。

日本語教育のプロモーション活動豊か

Step Out Net Training Day (2011年4月)の写真
Step Out Net Training Day (2011年4月)

 次は日本語教育専門家の仕事の内容について。国際交流基金ロンドン日本文化センター(以後JFL)の仕事で特徴的なのは日本語のプロモーション活動である。過去の専門家がこのページで紹介している Step Out Net Head Start などがそれにあたる。Step Out Netとは日本語出前講座のようなもので、活動自体はそんなに目新しいことではない。ただ、JFLのすばらしい点は派遣するボランティア集団を組織し、トレーニングを定期的に行い、おまけに教材まで作成している点である。連絡一つで学校にトレーニングをうけたボランティアがきてくれるシステムを備えており、場所によっては地方も対応可というのだから、なかなか優れものである。また、Head Startとは校長先生や外国語教育の担当者など、教育機関の意思決定者に対する日本語教育宣伝プログラムである。これも、いろいろな国で出来ればいいと思いながらも、言語の違いやネットワークの欠如により出来ないことが多かった活動である。日本語教育の主要なアクターは学習者や教師であり、舞台は教室でのコース授業というのが主流であろうが、JFLでは、それ以外のアクター、舞台での日本語教育の支援も積極的に活動に取り込んでいて興味深い。

たくさんの試験と変わる政策

 また、これも過去の専門家がこのページで言及していることだが、テストがとても多い。GCSE(General Certificate of Secondary Education)GCE (General Certificate of Education, Advanced Level)International Baccalaureate (IB)など、それぞれにシラバスがあり、それぞれ、かなりのボリュームである。これらのテストは特に中等教育の日本語教育にとっては大きな意味を持っており、赴任後の質問の多くもこれらテストに関することであった。これらテストは数が多い上、シラバスも時折改定されるので、現場の教師はその流れについていくのに大変である。また、こういった評価と国のナショナル・コア・カリキュラムは連動していることが多いが、このナショナル・コア・カリキュラムも各時代・各政権が力をいれて「教育改革」を行うので、よく変わる。今現在も、英国連立政権は新しい改革に取り組んでいるようで、われわれも、いろいろな作業を中断し、その動向を見守っているところである。確かに、イギリスの天気はよく変わるが、こんなにいろいろな制度が変わると、ついていくのが大変であるB天気と同じで慣れてしまうのかもしれないけど・・

 以上、赴任4ヶ月目の英国レポートでした。「多様でダイナミックな英国日本語教育」に飲み込まれないよう、今後、腰をすえて活動していきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, London
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金ロンドン日本文化センターは1997年に日本語センターを開設。その業務は、当地の教育情報の収集と支援事業の企画・実施である。
  • 教材開発と提供:初等教育用には「Ready Steady NihonGo!」、中等教育用にはリソース群「力CHIKARA」を開発、公開している。
  • 初中等各校における日本語導入促進を目的とした出張授業、教師のための研修会や日本語コース、教育情報を提供するコースなどを実施している。
  • このほか、スピーチコンテストの実施、英国日本語教育学会との共催事業、ウェブサイトを通しての情報提供などを行っている。
所在地 Russell Square House, 10-12 Russell Square,London WC1B 5EH,UK
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1997年

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