世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) シドニー日本語センターにおける日本語教師支援

国際交流基金シドニー日本語センター
和田晃子

派遣先ポストについて

シドニー日本語センターでの風景の写真
シドニー日本語センターでの風景

国際交流基金シドニー日本語センターでは、オーストラリアの初等、中等教育の日本語教育を支援しています。教師への支援が主要な仕事です。筆者の同僚には、現地採用の2人がいます。1人は主任講師で、中等教育現場での経験なども長いベテラン非日本人講師です。もう1人は日本人で、在豪12年のこちらの事情にかなり詳しい人です。

この国の学習者のほとんどが初等、中等教育機関の生徒であることから、このポジションは教員経験者でさらに、教師研修経験者だと理想的です。また、日本の新しい情報を持って、忙しい2人を助ける即戦力となることが要求されます。

担当業務を説明します。センターで開催する日本語教師研修には2種類あります。1週間の集中研修(1月と7月の年2回)と、5時から7時までの放課後研修(全6回、年3回)です。これとは別に、各州の教育省や教師会などの要請に基づく研修会、また、大学の日本語教師養成課程での講義をします。

教材開発では、『Dear Sensei』というニューズレターをオーストラリアの日本語教育機関に、年間4回配布しています。講師室では、この中の「Sensei's Page」に教授活動のアイデアを載せています。それから、これまで研修会などで培ってきた教材や希望の多い教材をもとに、『Activity Resource 』という題名で完全版を作成し、全豪の日本語教育機関に年間2回程度配布しています。

その他、日本語弁論大会やNSW州日本語学習発表会の審査員、各種研修の書類選考、日本語能力試験にも関わります。教授法、教材、カリキュラムなどに関して、教師からの問い合わせに応じたり、各州にいるアドバイザーや教師会とのネットワーキングも重要です。

オーストラリアの日本語教育

オーストラリアは、日本の20倍の国土で、人口は東京と同じ約2000万人です。国としては、6つの州と2つの地域に分かれて、それぞれが独立行政を行っています。1987年に、外国語学習を重要視するプログラムが中等教育に導入されました。そして、外国語教育の中でも9言語(日本語、中国語、インドネシア語、ギリシヤ語、仏語、独語、伊語、西語)が優先学習言語とされるようになりました。翌1988年に国レベルでの共通の指針が出されて、各地で日本語教育が広がっていきました。このあと「津波(TSUNAMI)」と呼ばれる日本語ブームが起こったのです。そして、1995年には、アジア言語に対する特別プログラムによって、4言語(日本語、中国語、韓国語、インドネシア語)が優先学習言語となり、さらに学習者が増えていくようになりました。その結果、1998年の『海外における日本語教育の現状』(国際交流基金)の調査では、学習者数第1位は韓国で約95万人、第2位はオーストラリアで30万人、第3位は中国で24万人となっています。

オーストラリアの学習者の特徴は、初等・中等教育での日本語学習者が全体の96%を占めていることです。初等教育での日本語教育では、生徒に日本語は楽しいのだ、という意識を持ってもらうために、歌や踊り、工作など多様な方法で日本語に親しんでいけるように工夫されています。中等教育では、ある生徒は初等教育から勉強してきていますが、ある生徒は初めて日本語を勉強するという現象が生じています。このために、初等教育で楽しく勉強してきた生徒達が、再度ひらがなから勉強することによって、動機付けが減退することになりかねません。そこで数年前から、いろいろなレベルの生徒がいる教室で、どのように等しく授業を受けさせられるかが重大な問題になっています。また、中等教育も後半になると、大学受験で日本語を選択しても高得点は取れないと考えて、日本語を学ぶ生徒が少なくなっていきます。生徒数が確保できないと、日本語クラスが閉鎖されてしまいます。

研修の意義と困難点

ニューサウスウエルズ州日本語教育施設、探検センターでの風景の写真
ニューサウスウエルズ州日本語教育施設、
探検センターでの風景

 先生方は大変忙しく、ご自身の日本語を高めていく時間や新しいことを考える時間は取れません。そこで、現職の日本語の先生に対する研修が重要になってくるのです。研修では、先生方の日本語能力や、対象別のクラスを用意して、教室で実際に使ってもらえるものを提供します。

 初等教育教師対象の研修では、先生の日本語レベルもあまり高くないことがあるので、楽しさに主眼を置きます。とは言え、単なる文化紹介だけでなく、そこに実際に使える日本語を入れていくことはとても大変です。日本で成人向け日本語教育に慣れていると、こちらでは驚きの連続です。また、やさしい日本語を使うことで、先生に教室内で日本語を使って教えてもらう見本になります。一方、中等教育教師対象の研修では、生徒の興味も広がっていくことから、日本の最新情報をうまく教材に取り込んで、クラスで使ってもらえるようにしています。

 研修は主要な業務の一つなので、全力投球で準備をします。参加者の先生方の役に立ち、喜んでもらえるようなコメントをもらえた時は、何よりも嬉しく思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
シドニー日本語センターは、オーストラリア全体を視野に入れた日本語教育支援を行っている。主な事業内容は、教師研修会の開催、他機関主催の研修会への協力及び援助、教材・教具の開発および寄贈、カリキュラム・教材・教授法に関するコンサルティング、情報提供、情報交流などである。教材の開発については、現場のニーズに応え、独自教材“Activity Resources”シリーズを開発し、教育機関に寄贈している。また、年4回ニューズレター“Dear Sensei”も発行している。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Sydney Language Centre
ハ.所在地 Level 12, 201 Miller Street, North Sydney, NSW, Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

ページトップへ戻る