世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語教育とテクノロジー:みんなで作ったPower Point教材

オーストラリア
クイーンズランド州教育省
石井由美

パワーポイント教材の録音をする日本語アドバイザーたちとテクノロジー担当者の写真
パワーポイント教材の録音をする
日本語アドバイザーたちとテクノロジー担当者

クイーンズランド州政府ではテクノロジーの推進に力を入れており、その一環として、日本語教師研修会にはテクノロジー教育の時間があてられる。コンピューターの導入は、コスト削減、時間の節約につながる上、テクノロジーをうまく取り入れた授業は学習者の興味を引くという利点もあるので、大いに活用してほしいものだ。

コンピューター室が整備されていても、日本語の授業には一回も使ったことがないというのでは残念だ。「テクノロジーが大切なのは分かっているが、自分には無理。習う時間もないし。」とあきらめかけている教師たちも多い。そんな教師たちに対して、どんなテクノロジー教育をしようかと考えた結果、使える教材が最終的に出来上がるようなものがいいということになった。それが、Power PointMicrosoft社のコンピューター・ソフト。プレゼンテーション資料を効率よく作成し、説明会などで参加者に発表するためのアプリケーション。)を使ったスライド・ショーの日本語教材だ。

州内の各地で、週末を利用した泊りがけの研修会が年に一度行われる。今年度はテクノロジー教育に3時間があてられている。最初の1時間は日本語アドバイザーが担当。Power Pointで何ができるのか、どうやって作業をすすめるのか、どんなものができあがるのかを簡単に説明する。あらかじめ準備された写真や絵を見せ、どんな日本語と合わせて使ったらよいかを全員で考える。参考までに、今回のPower Point教材は「世界たからさがし」という単元に合わせて作成したもので、次の5つの内容で構成される。

  • 世界旅行でどこに行きますか。
  • 世界旅行で何を見ますか。
  • 世界旅行にいつ行きますか。
  • 世界旅行に何をもっていきますか
  • 世界旅行で何を食べますか。

続く2時間はテクノロジーの担当者によるもので、教師たちは実際にコンピューターの前にすわる。担当者の説明を聞きながら、作業をすすめていくことになる。日本語入力をするためのソフトのダウンロードのしかたもここで説明される。中にはすでにPower Pointを使っている教師もおり、アドバイザーの助けをかりながら、次々とスライドを作っていくのだが、その一方でキーボードをさわるのが初めてではないかという教師もいる。マウスをうまく使えず困っている教師には手取り足取り(?)の指導だ。2時間はあっという間に過ぎてゆき、出来上がった作品はいったんアドバイザーがあずかる。

実はそのあとが大変で、教材として使えるものにするのには、ある程度(というか、かなり)手を入れなくてはならない。複数の人が使ったものを、直しながら一つにまとめるのは、一から自分で作るよりもずっと時間がかかる。それでも現場で教えている教師たちのアイディアは貴重だ。生徒が使う教材は、生徒を一番よく知っている現場の教師の協力なくして、いいものは作れない。時間をかけ、230枚のスライドからなる大作ができあがった。単元で学習する内容がバランスよく盛り込まれ、スライド一枚ごとに音声も聞けるようになっているなかなかのもの。完成品はCDに焼き付け、研修会に参加した教師たちに配布される。質問や聞き取り問題も含まれた自慢のこの一枚は、復習用の教材として役立つことだろう。

クイーンズランド州では新しいシラバスが施行されたこともあり、教師たちは新シラバスにそった「使える」教材を求めている。ただ、これまではアドバイザーが一方的に教材を与えすぎてきたことへの反省をふまえ、ちがった形でのサポートを模索していた。今回、テクノロジーというもう一つのニーズと融合させることで、教師主体の教材作りの一歩がふみだせたような気がする。現場の教師、アドバイザー、そしてテクノロジー担当者がそれぞれの専門を生かし、それぞれの立場から協力をして、いいものができたと満足しいる。


派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
LOTEセンターはクイーンズランド州教育省の付属機関であり、州内の初等・中等レベル(基本的に州立学校)におけるLOTELanguages Other Than English)教育の支援をさまざまな方面から担当する機関である。1990年に設立され、1995年に現在地に移転。国際交流基金からの専門家は1988年から現在まで継続して派遣されている。アドバイザーは、教師研修会の実施、新シラバスに関する教材の開発、日本語アクティビティ集の作成、日本語教師向け通信講座等を行っている。
ロ.派遣先機関名称 オーストラリア・クイーンズランド州教育省LOTEセンター
Queensland LOTE Centre, Education Queensland
ハ.所在地 Cnr Montague and Ferry Roads, West End PO Box 3663, South Brisbane QLD 4101
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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