世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) タスマニア-南緯42度の日本語教育

オーストラリア
タスマニア州教育省
大久保(葛城)めぐみ

タスマニア州の道路を運転すると、行き交う車のナンバープレートに記された州のキャッチフレーズ、Tasmania - Holiday Isleがすぐ目にはいる。タスマニアの自然保護精神はホリデー・アイル -「休暇を満喫する島」にいかにもふさわしい。州の面積68,000平方キロメートル(北海道の約80%)のうち、40%は国立公園その他の環境保護地域に指定されている。

専門家の仕事

サイパン・植木講師(左端)と5人のJATの写真
サイパン・植木講師(左端)と5人のJAT

「休暇を満喫する島」とはいえ、日本語教育アドバイザーとしての専門家の業務は多忙である。教師の日本語レベルアップのためのセミナーや勉強会の企画・主催、州都ホバート内だけでなく、車で片道5時間かかる遠隔地への学校訪問、教材開発、日本語教育と直接関係ない地元の人たちへの日本紹介など、オフィス内だけでは片付かない仕事が次々に出てくる。

生徒、教師、学校数


タスマニア州では、日本人はもちろんヨーロッパ系以外の住民が皆無の地域も珍しくない。
そのなかで、8500人の児童・生徒が日本語を学習し、100人のオーストラリア人教師が80校で日本語の指導に携わっている事実は高く評価されるべきである。

貴重な教材は日本人


どんな語学を学習するにせよ、学習者はその学習言語を教室外で実際に使ってみたくなる。タスマニアの日本語教育の問題点はそうした機会が非常に限られていることである。47万人の州人口のうち、日本人定住者はわずか200人あまり。したがって「本物の日本人」は、日本語学習者にとって一番貴重な教材となる。教育プログラムや資材は入手できても、生きた人間ばかりはそう簡単にはいかない。

一本化される日本人アシスタントプログラム


2001年初頭に タスマニア大学アジア言語・研究学科のサバイン・植木孝女(うえきたかめ)日本語講師が提唱した「日本語教育アシスタント研修」(非営利プログラム)が根づきはじめた。日本で日本語教授法の基礎を終了して日本語教師を志す人にタスマニアの教育制度に基づいたオリエンテーションと実習の場を提供する。オーストラリア人日本語教師には日本語クラスのサポートと教師間の連携を促進する。2年目に入った2002年度は、JATと呼ばれる5人のアシスタントが3学期間、延べ18校で活動し教育省からも高く評価されている。

学習を続ける日本語教師

学習を続ける日本語教師たちの写真
学習を続ける日本語教師たち

熱心な日本語教師は、大学での日本語教育単位を認定されたのちも州教育省と連邦政府の援助でレベル維持のために学習を続けている。週一回、午後4時から7時までのコースでは、講師のいるホバートの会場と220キロ離れた学校をビデオ・コンファレンスで接続し、決していい回線状態とはいえないなかで両サイドともがんばっている。

タスマニアのオンライン教育


2001年4月にタスマニア州政府は州立学校間の新制度として"e-magine, Centre of Excellence in Online Learning"というオンライン学習機関を設立した。業務の一つとして、ある科目を自分の学校のクラスだけでなくオンラインを通じて遠隔地の学校の生徒にも同時に教育できるプログラムがある。日本語学習者数が少なかったり、過疎地のため日本語教師が定期的に勤務できない学校には今後大いに利用されることになる。e-magineがオンラインを使う各種の教材や教育プログラム開発に着手しているのは言うまでもない。

人的側面から、そしてテクノロジー側面から、タスマニア州の日本語教育はゆっくりと健康な歩みを進めている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
タスマニア州教育省は、公立初等・中等教育、図書館・教育関係情報サービス、専門学校・職業訓練校、教育査定・証明等の教育業務を運営する州政府機関である。国際交流基金からの専門家は1998年から現在まで継続して派遣されている。アドバイザーは、日本語教師の語学レベルの維持へのサポート、教材・資材に関する助言、勉強会・セミナー・ワークショップ開催による学習機会の提供、Tasmanian Certificate of Education新シラバス作成の助言等を行っている。
ロ.派遣先機関名称 オーストラリア・タスマニア州教育省
Department of Education, Tasmania
ハ.所在地 Letitia House, Olinda Grove, Nt. Nelson, Tasmania
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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