世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) シドニー日本語センターにおける日本語教育支援

国際交流基金シドニー日本語センター
磯村一弘

オーストラリアで日本語を学んでいる学習者の数は約31万人。オーストラリアは韓国に次いで、世界で二番目に日本語学習者の多い国である。歴史も長く、かつ新しい言語教育理論を積極的に取り入れたオーストラリアの日本語教育は、世界の日本語教育の中でも非常に重要な位置を占めており、その教材、教室活動、教授理論、外国語教育政策などは、世界中から注目を集めている。

国際交流基金シドニー日本語センターは、このオーストラリアの日本語教育を支援するために設立された機関である。派遣専門家はここで教育担当講師として、現地のスタッフ2名と協力しながら様々な活動を行っている。国際交流基金の派遣専門家はオーストラリアに現在6名が派遣されているが、みな特定の州の教育省に所属する日本語教育アドバイザーとして、それぞれの州の中で活動を行っている。それに対してシドニー日本語センターでは、日本の国際交流基金が直接運営する現地の枠に属さない機関として、オーストラリア全土を対象とした活動を行っているのが特徴である。

教師研修授業風景の写真
教師研修授業風景

派遣専門家の仕事として最も大きな位置を占めるのが、教師研修である。オーストラリアの学校で日本語を教える教師達を対象に、様々な内容のセミナーを開催する。その内容は、ノンネイティブ教師の日本語運用力をブラッシュアップするための研修、教室活動のアイデアを提供する研修、あるシラバスの教え方を検討する研修、コンピュータで日本語を使う方法を学ぶ研修など、バラエティに富んでいる。これらは半日だけのものから一週間にわたるセミナーまでと、その規模や期間も様々である。

教師研修は、シドニー日本語センターが主催するものだけではなく、他の州で開催される教師研修会に講師として呼ばれることも多い。オーストラリアでは、各州の教育省などの主催により、現職教員のためのセミナーが各地で開かれている。こうした研修に協力するために、シドニー日本語センターの講師は、今月はブリスベン、来月はパースと、ハンドアウトと教材を抱えてオーストラリア各地を飛び回っている。

教師研修と並んでここでの大きな仕事は、教材作成である。シドニー日本語センターでは、年に四回「Dear Sensei」というニューズレターを発行しているが、その中の中心的なコーナーとして「Sensei's Page」という記事を執筆し、オーストラリアの学校で使える教材や、教室活動のアイデアを提供している。またこれに加えて年に一度、これまでの研修会のハンドアウトや「Sensei's Page」のアイデアなどを使いながら、毎回テーマを決めて「Activity Resources」という教材を作成し、配布している。オーストラリアの教育現場の状況やニーズがよく考慮され、ユニークなアイデアに富んだこれらシドニー日本語センター作成教材は、現地の教師達から好評を博している。

さらに、日本語教育についての情報収集、情報交換も、重要な役割である。オーストラリアの日本語教育の状況や、各州の日本語教育の新しい動きについて、調査・研究・情報収集を行い、これを国内の学会で発表して情報を他の教師とシェアしたり、また日本からの照会に対して回答したりする役割である。また同時に、日本あるいは世界の日本語教育の情報を収集し、これをオーストラリアの日本語教育界に還元するというのも同様に大切である。特に日本から派遣されてくる派遣専門家は、日本、あるいは日本語教育についての最新事情を提供する役割が期待されている。

日本語発表会風景の写真
日本語発表会風景

このほかにも、日本語弁論大会、日本語発表会、日本語能力試験など、オーストラリアで開かれる日本語関連行事のたびに、スタッフとしてその運営をサポートする役割も持っている。その他、各州の基金派遣専門家とのネットワーキングや、また日本やオーストラリア各地からの質問や相談にメールで答えたりする仕事も行っている。

以上のように、シドニー日本語センターにおける派遣専門家の役割は、多岐にわたっている。オーストラリアでは、高度に発達した日本語教育が現地で行われており、この中に日本から派遣専門家が入り、そこでどのような役割を発揮できるのかということを、今後も常に考えていかなければならないだろう。今後は、シドニー日本語センターがオーストラリアでは数少ない日本と繋がりを持った国外の機関であるという特徴をより生かし、州や教育段階の枠にとらわれない地域全体を視野に入れた支援、またオーストラリアの日本語教育と日本・世界の日本語教育とを繋ぐ情報センターとしての役割を果たす支援に、いっそう力を入れていくことが課題であると考えている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
シドニー日本語センターは、1991年に開設された。現地の教育制度の枠に属さない数少ない日本の機関として、オーストラリア全体を視野に入れた日本語教育支援を行っている。その主な事業内容は、教師研修会の開催、他機関主催の研修会への協力及び援助、日本語関連行事への協力、教材・教具の開発および寄贈、カリキュラム・教材・教授法に関するコンサルティング、情報提供、情報交流などである。また、年4回ニューズレター“Dear Sensei”も発行している。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Sydney Language Centre
ハ.所在地 Level 12, 201 Miller Street, North Sydney, NSW, Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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