世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 西オーストラリア州の日本語教育(2003)

西オーストラリア州教育省
永井和子

日本語教育概観

 西オーストラリア州はオーストラリアの約3分の1を占め、日本の7倍という大きな州で人口は約185万人です。日本語学習は初等・中等・高等教育機関で行われています。5大学には日本語コース、外国語教員養成課程があります。

 初等・中等教育では日本語を含むLOTE(Languages Other Than English…英語以外の言語)は西オーストラリア州における8つの必修科目の一つになっています。日本語はLOTE12言語の一つでイタリア語、インドネシア語に次ぎ3番目に学習者が多いです。2002年の調査結果では公私立学校を合わせると日本語の学習者は約2万9000人、学校数は254校でした。

 西オーストラリア州では11、12年生用高校終了時の試験のためのシラバスはありますが3-10年生のシラバスはありません。参考資料としてNational Curriculum Guidelines for Teachers「よろしくシリーズ」という教科書と指導書があります。教師はカリキュラム・フレームワークに示された目標が達成できるよう指導計画を立てます。日本語による基本的なコミュニケーションの習得と日本文化の理解を目標に、生徒の興味を考慮しながらトピックを選び、アクテイビテイ中心の学習が行われています。

 LOTE教師のいない地方の生徒のためにTelematicsと呼ばれる衛星回線を使用した教育が行われています。2003年は小学生328人,中学、高校生35人がこのプログラムを利用しています。各言語の教師が学習番組を作り衛星放送や電話、コンピューターを使って教えています。

派遣専門家(日本語教育アドバイザー)の役割

 アドバイザーは教育省で唯一の日本語教育担当スタッフで日本語関係のすべての仕事に関わるため仕事は多岐にわたっています。主に次のような仕事しています。現在は三代目のアドバイザーで、その存在や役割も定着してきました。

1.日本語教師サポート

  • アクテイビテイや指導法、教材などについてのアドバイスや情報提供
    電話、ファックス、メール等で寄せられる問い合わせや質問に応じます。
  • 日本語教育セミナー、ワークショップの企画運営
    西オーストラリア州での日本語教育関連の写真1 西オーストラリア州での日本語教育関連の写真2
     教師のための研修会を企画運営します。自分で行ったり、日本語教師会と共催したり、兵庫文化交流センターや私立学校で講師を務めたりもします。2001年から2003年はコンピューター、イマーション、日本文化・若者文化、ビデオテープ、文字指導、「であいキット」等についての研修会を行いました。ネットワーク作りにも大切な役割を果たしています。各地でネットワークができ、その成果を研修会で発表する等新しい動きも出てきています。
  • ニュースレター発行、送付
     各学期の初め(年4回)に「こんにちは」というニュースレターを日本語教育を行うすべての学校に送付しています。内容は日本語教育に関する情報、セミナー・ワークショップの案内や報告、教師の実践報告やアイデア、教材紹介やその使い方、イベント、会話クラスの案内等です。広い西オーストラリアのすべての学校を訪問することは不可能ですがニュースレターは届けることができます。楽しみに待ってくださる先生達がいるのはとてもうれしいことです。
  • 会話クラス
     生徒のみならず教師も教室以外日本語を使う機会が少ないので放課後週一回リソースセンターで会話教室を行っています。会話だけでなくネットワーク作り、教材研究にも役立っています。リラックスして会話を楽しみます。
  • 学校訪問
     教師からの要請で学校訪問をします。訪問校の教師と一緒に日本文化を楽しむゲームをしたり会話をしたりします。

2.日本語・LOTE教育促進のイベントの企画運営

  • ひらがな/かたかなコンテスト
     教師会のメンバーと委員会を作り、生徒達にかなに興味を持ってもらうために1年に1回行っています。小学生から高校生までそれぞれ3部門(しりとりの本、カルタ、ゲーム)に挑戦します。
  • 外国語映画祭
     8月のNational Language Weekにあわせて10~12年生を対象に行っています。今年もフランス語、イタリア語、ドイツ語、日本語、中国語、インドネシア語の映画を上映する予定です。

3.教育省以外の関係団体との協力

  • 日本語教師会:共に研修会を企画運営したり、ひらがな/かたかなコンテストを行ったりします。
  • 兵庫文化交流センター:毎年4月か5月にセンターが開催する日本語教育セミナーの講師をつとめます。
  • 在パース総領事館:弁論大会や審査委員をつとめます。
  • 基金シドニー日本語・文化センターや他州のアドバイザーと情報交換を行いよりよい仕事ができるようにつとめています。

4.その他

  • リソースセンターの教材購入や整備、日本語教材キットの作成
     教師からの要望を聞き、教材を選定し購入します。日本語教材キットに入れるものを選定し購入します。ワークショップで教材の使い方を紹介します。
  • データベースの整備
     日本語教育を行っているすべての学校のデータベースを更新し教師に情報を提供できるようにしています。

問題点と今後の課題

 州共通のシラバスがないため新任教師や経験の浅い教師には指導計画を立ことが大変難しく、シラバスかガイドラインが必要と思われます。

 ROTEの必修化に伴い、興味のない外国語を学習しなければならない生徒、レベルの違う生徒をいかに指導するかが問題になっています。ヨーロッパ言語やインドネシア語に比べると文字の習得に大変時間と労力がかかることも多くの教師から指摘されています。教師の日本語能力向上のための研修を希望する声も多く聞かれます。

 基金の研修会に参加できるのは限られた人数で、教師会やアドバイザーが行う研修会は州都パースの近くですることが多く、地方に散在している教師が参加することは大変難しいです。参加するための旅費や、代替教員を雇う費用などの支援体制がまだできていないので関係者に働きかけていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
専門家の所属するカリキュラム指導課は 州内の公立初等中等教育機関のカリキュラムに関わる政策を実施する部署である。11の科目があり専門家の属するLOTE(英語以外の言語)もそのひとつである。現在西オーストラリア州ではインドネシア語、中国語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、日本語が選択できるようになっている。カリキュラム指導課はどの学校でどの言語が選択できるかを把握してホームページ上で公開している。10年生までは学習内容が各学校に任されているが11年生と12年生の学習内容はカリキュラム指導課がフレームワークを作成している。国際交流基金からの専門家は1998年から継続して派遣されている。
ロ.派遣先機関名称 オーストラリア西オーストラリア州教育省
Department of Education and Training of Western Australia
ハ.所在地 151 Royal Street East Peth WA 6004 Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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