世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 多様な世界に合わせられるようにアドバイザーの仕事もいろいろ

オーストラリア
クイーンズランドLOTEセンター
北井佐枝子

LOTE教育の図書館の写真
LOTE教育の図書館

 クイーンズランド州では小学校が7年生まで、中学高校を合わせたセカンダリーが8-12年生になります。州立学校ではLOTE(Language Other Than English)は6-8年生の必修課目ですが、どの言語をどれだけの期間学習するかは各学校が決定します。日本語はクイーンズランド州推奨7言語(日本語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、インドネシア語、中国語、韓国語)の中でも学習者数が一番多い最有力言語になっています。

 クイーンズランドLOTEセンターには上記7言語のうち6言語のアドバイザーが所属し(日本語とドイツ語は各2名、韓国語を除く他言語は各1名)、LOTE教育を支援しています。また、LOTEセンターには世界にも誇れると思える立派なLOTE教育の図書館が併設されており、一般書籍やテープ・ビデオはもちろんのこと、書道道具やゆかたやレストランの食品見本などの実物教材、それにこれまでにアドバイザーたちが開発した教材や資料セットなどを揃えて貸出を行なっています。

 日本語アドバイザーは二人いて、一人は現地採用の日本人で、アドバイザー歴7年のベテラン、もう一人は基金派遣専門家で二年ごとに交代しています。私自身は派遣専門家の8代目で、赴任して4ヶ月あまりが経ちました。他州と違って、現地採用のアドバイザーも日本人で、二人の役割の違いはそれほど著しくありません。しいていえば現地採用アドバイザーがシラバス等現地の諸問題に関する業務、基金派遣専門家が教師の一般的な日本語能力向上の業務が中心になります。もちろん中心になるというだけですから、基金派遣専門家も現地の諸問題を勉強しないわけにはいきません。

 アドバイザーの今年の大きな仕事は教師研修の実施とネットワークの促進です。まず、今年の初めに6言語のウエブサイトを立ち上げました。これはクイーンズランド州のLOTE教師の情報源となるように作られたものですが、アドバイザーたちがどんなことに関わっているかもよくわかると思いますので、ぜひ一度訪ねてみてください。アドレスは以下の通りです。日本語に関してはそこからさらにNihongo Netをクリックしてください。

http://www.learningplace.com.au/en/lote

 教師研修に関しては、広大な州を反映して作文通信講座と複数の電話回線による会話講座が現在もシリーズで行なわれています。9月には1週間にわたる集中講座も予定されています。そのほかに私がこれまでに単発的に関わった研修はシラバスの理念をふまえて簡単な日本語だけでいろいろなゲームやアクティビティを紹介して、実際に先生たちにやってもらうというものでした。イマージョン教育の理念を紹介するためにマレー語だけで授業をしたこともあります。これは日本語の先生たちが教室でどのように日本語使用を増やせるかを考えてもらうために行いました。クイーンズランド州の方針としてはローマ字の使用を実質的に禁止して、ひらがなやかたかなの習得の促進をしようとしています。英語を禁止しているということはありませんが(イマージョン教育は除く)、できるだけ日本語で教えるということを目指しています。

アドバイザーが開発したシラバスのモジュールに合わせた教材の写真
アドバイザーが開発したシラバスのモジュールに合わせた教材

 また、今年後半はクイーンズランド州各地で宿泊研修が予定されています。トピックは汎言語的に選ばれることが多く、今年後半は「リテラシー」が共通のトピックです。さて、今ここで問題になっているのは日本語が英語とはかけ離れた言語で、ヨーロッパ言語のリソースをそのまま単に訳しただけでは使用することができないということです。確かに汎言語的手法は応用して実りあるところも多く、クイーンズランド州はこれまでにも汎言語的手法でCD-ROMなど立派な教材を多く開発しています。しかし、汎言語的手法ははっきりと限界もあると思います。汎言語的手法の壁をいかに乗り越えるか、これはこのLOTEセンターにおける日本語アドバイザーの大きな課題です。

 それとは別に、今年は特別に日本語だけで開発しているプロジェクトもあります。こちらは日本語独特のひらがなのかきかたの本で、日本語の先生たちが教室で自信をもって、日本語の基礎であるひらがなを正確に教えられることを目標として開発中です。

 アドバイザーの仕事は本当に多岐にわたりますが、全てはオーストラリアの子どもたちが将来ますます多様になる世界で国内外を問わず自信をもってコミュニケーションができるようにという理念にたどりつきます。将来オーストラリアの人たちと日本の人たちが言語や文化の壁を乗り越えて、上手にコミュニケーションができる世界になっていることを願ってやみません。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
クイーンズランドLOTEセンターは州教育省の付属機関であり、州内の初等・中等レベル(基本的に州立学校)におけるLOTE(Languages Other Than English)教育の支援をする機関である。1990年に設立され、1995年に現在地に移転。LOTE教育の図書館を併設する。クイーンズランド推奨7言語のうち6言語(日本語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・インドネシア語・中国語)のアドバイザーが所属し、アドバイザーは教材の開発、教師研修会の実施、教師向け通信講座の運営、教師や関係各機関への助言等を行っている。国際交流基金からの専門家は1988年から現在まで継続して派遣されている。
ロ.派遣先機関名称
Queensland LOTE Centre, Education Queensland
ハ.所在地 Corner Montague and Ferry Roads, West End, Queensland 4101, Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

ページトップへ戻る