世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) タッシーと日本語

オーストラリア
タスマニア州教育省
友岡純子

Tassie(タッシー)

タスマニアの人々は自分たちのことを「タッシー」と呼ぶ。彼らはオージー(オーストラリア人)であると同時にタスマニア人であることを誇りにしているのだ。タスマニアはオーストラリア大陸からバス海峡で隔てられた島である。島独自の野生動物がおおくすみ、美しい原生林と大小の湖、ゆったり流れる川と緑の牧場の風景は乾燥して広大なオーストラリアの州というより、イギリスの田舎という風情である。タッシーが「本土(Mainland)」と呼ぶオーストラリア大陸からの隔絶性はタスマニア人の精神風土に大きな影響を与えている。

タスマニアの日本語教育

高校の日本語の授業風景の写真
高校の日本語の授業風景

アジア系移民が多く多民族化の進む本土と異なり、タスマニアは基本的に白人文化の州である。連邦政府のアジア言語優先学習政策(NALSAS)導入以来タスマニアでも日本語やインドネシア語などのアジア言語を教える学校が増えた。公立小学校では小学校3年生から週に一回30分から45分程度の外国語の授業が行われている。

タスマニア州教育省の統計によれば、2002年には6152人の公立小学生が32校で日本語を学んでいる。4354人の中高生を含めると、1万人強の公立学校の生徒が日本語を学んだことになる。タスマニア州の人口は50万人未満だから、私立学校の生徒の数も入れると、かなりの数の生徒が日本語を学んだと言うことができるだろう。こうした授業を支えているのは約90名の日本語教師である。

異文化理解教育としての日本語

日本料理を作って楽しんでいる写真
学期の終わりには日本料理を作って楽しむことも

世界共通言語となった英語を、コミュニケーションの手段として教えようという日本の英語教育と異なり、英語圏の国での外国語教育は、異文化理解教育としての性格が強いように思われる。高校や大学などでは言語教育としての日本語教育が行われていても、小学校や中学校では基本的に日本文化・日本語教育である。英語での読み書きも満足にできないのに、なぜ使いもしない日本語を勉強させるのだ、という親の疑問に教師たちは答えなければならない。――西欧文化の本流であるヨーロッパ・アメリカから地理的に隔絶され、しかも本土からも隔てられた小さな島で、英語だけを話しているのでは、本当に井の中の蛙になってしまう。文化の多様性を受け入れることのできる広い視野を持った人に育てるために、日本語教育は必要なのだと。

日本語アドバイザーとしての仕事

アドバイザーは何でも屋である。日本語教育専門家としての仕事は当然のことながら、着物の着付けから焼きそば作りの手伝いまで何でも引き受ける。日本人のほとんどいないこの州で、日本とタッシーをつなぐ貴重な何でも屋である。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
タスマニア州教育省は、公立初等・中等教育、図書館・教育関係情報サービス、専門学校・職業訓練校、教育査定・証明等の教育業務を運営する州政府機関である。国際交流基金からの専門家は1998年から現在まで継続して派遣されている。アドバイザーは、日本語教師の語学レベルの維持へのサポート、教材・資材に関する助言、勉強会・セミナー・ワークショップ開催による学習機会の提供、Tasmanian Certificate of Education新シラバス作成の助言等を行っている。
ロ.派遣先機関名称 オーストラリア・タスマニア州教育省
Department of Education, Tasmania
ハ.所在地 Letitia House, Olinda Grove, Nt. Nelson, Tasmania
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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