世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) オーストラリア・ビクトリア州 日本語アドバイザー

オーストラリア
ビクトリア州教育省
室屋 春光

ネットワーク会議風景の写真
ネットワーク会議風景

ビクトリア州は広大なオーストラリア大陸の東南部に位置し、州都はメルボルン、州の大きさはほかの州、例えばクインズランドやニューサウスウェールズ、西オーストラリアなどに比べるとかなり小さいのですが、それでも日本の面積の約60%にあたる222,600km2もあります。オーストラリア全体の人口は約1,900万人で、ビクトリア州の人口はその25%にあたる465万人です。さらにその州人口の75%の337万人が州都メルボルンとその周辺地域に住んでいます。(2001 Census による)

オーストラリアの初等中等教育機関における外国語教育で日本語やインドネシア語などのアジア系の言語が積極的に教えられるようになったのは80年代に入ってからで、それまではフランス語やドイツ語などのヨーロッパ系の言語が主流でした。90年代に入ると外国語教育におけるアジア系言語の割合はさらに高くなり、日本語学習者数がほかの言語に比べて最も多いというような現象も見られるようになりました。このような変化には、いわゆる白豪主義の放棄と地政学的に重要なアジア諸国への接近というオーストラリアの趨勢が背景にあります。

ビクトリア州の最新の資料によると、日本語を教えている学校数と学習者数は小学校と中等学校(日本の中・高に相当)の両方で第3位に位置しています。以下に1位から6位までの言語を列挙します。(Languages Other Than English in Government Schools 2001,  注: 総学校数と各言語ごとの学校数の総計は、学校によっては複数の言語を教えているところや、以下の6言語以外の言語を教えている学校もあるので一致しません。また、この統計資料に含まれるのは州立学校のみですが、私立学校においてもあまり大きな違いはありせん。)

小学校で教えられている1位から6位までの言語の学校数と学習者数

小学校
Prep + 1年~6年)
学校数
(総学校数1,278)
学習者数
インドネシア語 398校(30.9%) 82,417名
イタリア語 305校(23.7%) 78,100名
日本語 245校(19.0%) 56,223名
ドイツ語 114校(8.9%) 23,452名
フランス語 98校(7.6%) 16,792名
中国語(北京語) 37校(2.9%) 7,694名

中等学校で教えられている1位から6位までの言語の学校数と学習者数

中学校
(7年~12年)
学校数
(総学校数306校)
学習者数
インドネシア語 137校(46.0%) 29,082名
フランス語 114校(38.3%) 23,776名
日本語 103校(34.6%) 21,384名
イタリア語 90校(30.2%) 22,485名
ドイツ語 75校(25.2%) 17,008名
中国語(北京語) 29校(9.7%) 3,657名

この順位はここ数年あまり大きく変わっておらず、最近の日本経済の低調にもかかわらず日本語学習熱がそれほど衰えていないことがわかります。また、高等教育機関においても日本語教育は盛んで、メルボルン大学、モナシュ大学、ラトローブ大学、メルボルン工科大学(RMIT)、スウィンバーン工科大学などのビクトリア州の主要な大学には日本語学科あるいは日本学科が設置されています。

このように多くの日本語学習者を擁するビクトリア州には、日本語教育を支援する機関として州政府教育訓練省の外国語課、日本語教師協会(JLTAV)、メルボルン日本語学習センター(MCJLE)、日本研究センター(JSC)、総領事館に付属する日本広報文化センター(JICC)などがあります。国際交流基金派遣の日本語アドバイザーである私の職務は、上にあげたような関係諸機関と協力して日本語教育への支援活動をすることです。

日本語アドバイザーの仕事は多岐にわたります。日本語教師としての経験を生かして研修会やワークショップなどの場でセッションを担当したり教材を開発したりするのはもちろんですが、そのほかにも、日本語教育に関する最新の情報を先生方に提供したり先生同士が情報を交換しやすいようにコミュニケーションの活性化を図ることもアドバイザーの重要な役割です。私自身もビクトリア州の日本語アドバイザーに着任して以来、この方面での活動に力を注いできました。その具体的な例としては、ウェブサイト「日本語メモ」の立ち上げとEメールリスト「日本語ビクトリア」の立ち上げがあげられます。

ウエブサイト「日本語メモ」は03年1月末にサイトを立ち上げました。「What's Up」「Coming Up Events」「Useful Contacts」「ネットで年中行事」「Resources」「Links」などのページがあり、研修会、教材寄贈、交換プログラム、日本関係諸行事、日本および日本語関係の諸機関の連絡先、諸教材、日本語関係のリンクなどの情報を週1回以上のペースで更新して、最新の情報を提供するようにしています。全ページ合計のヒット数は5月末の時点で8,000を数えました。

また、Eメールリスト「日本語ビクトリア」は02年9月の開始以来メンバー登録者数が順調に増えて、03年5月末の時点で会員数320名を数え、5月分1ヵ月間の投稿数は140本に及びました。これまでは内輪の知人同士に限られていた情報交換がリストのメンバー全員に共有されたり、一人の質問に多くの会員から回答が寄せられたりすることによってビクトリア州内の日本語教育コミュニティーで大きな役割を果たすようになってきています。

ウェブサイトやEメールなどのインターネットを利用した教師間のコミュニケーションも大切ですが、ミーティングなどの場で実際に顔をあわせて話をすることは格別の意義を持っています。各地域のネットワークミーティングの確立および充実は今年度の教育訓練省外国語課の重点政策でもあり、ネットワークリーダーの先生がたと協力して、すでにネットワークの確立している地域ではより一層の充実を、まだネットワークが存在していない地域ではその確立を目指して活動することはアドバイザーの仕事の重要な一部となっています。

このほかにも、アドバイザーの仕事としては学校訪問や日本語教育に関する個別的なコンサルタント業務などがあり、「日本語教育の現場へのよりよい支援」をモットーに毎日忙しく働いています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ビクトリア州教育訓練省は、ビクトリア州の公立学校(初等・中等)における教育政策、カリキュラム作成、州共通高校修了試験(この試験は大学入学試験も兼ねている)、各教科に対する支援、教育人事、などについて計画実施する機関である。国際交流基金からは1995年から現在まで継続して専門家が派遣され、日本語アドバイザーとして日本語教育関係諸機関と協力して、教師研修、日本語教育に関する情報の提供、各地域における日本語教師ネットワークの形成・促進、学校訪問、教材作成、日本語教育に関するコンサルティングなどの活動を行っている。
ロ.派遣先機関名称 オーストラリア・ビクトリア州教育訓練省
Department of Education & Training, Victoria
ハ.所在地 Floor 3, Transport House, 581Collins Street, Melbourne 3001
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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