世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) クイーンズランド州日本語アドバイザー

オーストラリア
クイーンズランド・ロート・センター
北井佐枝子

琴を弾く筆者の写真
時にはコンピューターでなく、
生徒を相手にするのは楽しみです。

 クイーンズランド州では小学校が7年生まで、中学高校を合わせたセカンダリーが8-12年生になります。LOTE(Language Other Than English)は6-8年生の必修課目ですが、どの言語をどれだけの期間学習するかは各学校が決定します。日本語はクイーンズランド州推奨七言語(日本語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、インドネシア語、中国語、韓国語)の中でも学習者数が一番多い最有力言語になっています。
 教育芸術省の所属機関であるクイーンズランド・ロート・センター(以下LOTEセンター)には現在LOTE上級教育官が4名(うち1名は日本人)とドイツのゲーテ・インスティチュートから派遣のドイツ語アドバイザーと国際交流基金から派遣の日本語アドバイザーからなる6名のチームがあります。実はLOTE上級教育官たちはつい最近まで中国語、フランス語、イタリア語、日本語アドバイザーとして働いていました。当地でも行革の嵐が激しく、今までのように各言語のLOTE教育だけでなく、移民者の子弟の言語を育てるLOTE教育など、以前より小人数でさらに幅広いLOTE一般の教育も支援しなければならなくなりました。外国から派遣されているドイツ語と日本語アドバイザーはその言語教育の支援だけに携わっていればよいのですが、当地の日本語教育が深くLOTE教育に組みこまれていますから、私も当地の全体の方針をよく理解して業務を進めなければなりません。
 赴任して1年余り経ちましたが、現在までの大きな仕事は教師研修の実施とネットワークの促進で、この二つは私が帰国するまでおそらく変わらないでしょう。教師研修に関しては、昨年に続いて作文通信講座を行なっていますが、新たに硬筆通信講座を開講しました。また、今年の初めに初任者研修を州内の3ヶ所で行ないましたが、それでも教師は飛行機であるいは何時間も車を運転して集まらなければなりません。このように顔をあわせてのネットワークも大切ですが、オンラインのネットワークは現在ますます大切になってきています。ネットワークに関しては、昨年初めにNihongo Netというwwwのサイトを立ち上げています(http://www.learningplace.com.au/en/lote/nihongo)。これはクイーンズランド州の日本語教師の情報源となるように作られたものですが、アドバイザー業務のこともわかると思いますので、ぜひ一度訪ねてみてください。ほかにもこれまでに集めた日本語教師のEメールアドレスを使ってNihongo Netの更新時はもちろん、細かい情報も常時発信しています。また、州内の日本語教師だけが会員になれるサイトも用意しています。

LOTE図書館の写真
LOTE図書館は書籍、実物教材、
自己開発教材等を貸出します。

 今年後半にはLOTEセンター主催で州内の4ヶ所で宿泊研修が予定されています。LOTE教師が各地に集まり、今回は研修の約半分が各言語を使って行なわれる予定です。トピックは汎言語的に選ばれることが多く、今年は「Intercultural Language Teaching」が予定されています。これはその言語を使って異文化を理解するという理念で、今年始まった連邦政府のアジア言語に対するプロジェクトの基盤ともなっています。また、これはアジア言語だけでなくヨーロッパ言語にも当てはまり、LOTEセンターの研修は中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、インドネシア語、日本語の6言語対象に予定されています。この研修に先行して現在はLOTE図書館にある膨大な生教材のために補助教材を作成しています。生教材は外国人向けや日本語教育のために作られたものではなく、日本で実際に使われている広告やパンフレット等で、使われている日本語もかなり難しく、膨大なTeacher Notesが必要になるなど、苦労は絶えません。しかし、写真など視覚的に訴えるものも大きく、ステレオタイプでない異文化理解に役立てばと願っています。
 LOTE教育の全てはオーストラリアの子どもたちが将来多様な世界で活躍できるようにするという理念に基づいています。将来のオーストラリアの大人たちと将来の日本の大人たちが上手につきあっていける世界になることを願っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
クイーンズランド・ロート・センターは州政府教育芸術省の付属機関であり、州内の初等・中等レベル(基本的に州立学校)におけるLOTELanguages Other Than English)教育の支援をする機関である。1990年に設立され、1995年に現在地に移転。LOTE教育の図書館が同建物内にある。LOTE教育上級教育担当官4名と日本語及びドイツ語のアドバイザーからなるチームが所属し、教材の開発、教師研修会や通信講座の実施、教師や関係各機関への助言等を行っている。国際交流基金からの専門家は1988年から現在まで継続して派遣されている。
ロ.派遣先機関名称
Queensland LOTE Centre, Education Queensland, Department of Edu
ハ.所在地 Corner Montague and Ferry Roads, West End, Queensland 4101, Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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